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うちの国王、勇者召喚(ガチャ)を回しすぎて国を滅ぼしかけてる件  作者: 江藤ぴりか


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第一章:チートなんざ、お断りだ

 人間と他種族が平和に暮らすレギオ。

 その喧騒の片隅に武器屋『不壊ふえつち』がひっそりと佇んでいた。

 朝から鉄の音が響き、街の風景の一部になっている。

 店主ガルムは無骨な手で打ったばかりの剣の切っ先を凝視し、満足そうに息をつく。


「アンター。アタシは買い物に出かけるから、留守番頼んだわよ!」

「ああ、わかってる」


 女将のベルダは買い物カゴ片手に店のドアをカラカラと閉める。

 直後、ドアベルが来訪者を告げる。


「すみませーん。一番安い剣を一本ください」


 黒髪、黒目でこの国には珍しい人間だ。


「お、ドワーフの武器屋とか、異世界って感じじゃん!」


 ガルムは口元に蓄えた立派なひげを撫でる。


「何だお前さん。珍しい人種だな。どこから来た?」

「ああ、俺は田中仁たなかひとし。地球の日本って国から来た、召喚者さ」


 この国の王様は度々、勇者召喚をして異世界人の命を散らしていった。

 こいつもまたその犠牲者に……。そう思うと、いい武器を渡したくなるのが、職人というものだ。


「『鑑定』! えっ、全部、錆びてんじゃん!」


 ……前言撤回。

 こいつらは許可なく、鑑定して失礼な物言いをする無礼者だ。


「ああ? 鑑定するなら、せめてオレの許可くらいとれよ!」

「えー? だってここではじめて試すし、出来ちゃったんだもん」


 頬をふくらませるこの若者は、まだこの世界の常識がわからないだけかもしれない。

 ガルムはグッと堪えて、錆の理由を話す。


「……まぁ、いい。そいつぁ『黒皮』といって、わざと荒らしてんだよ。素人は黙ってろ」


 タナカは目を丸くして、手近な短剣をとって眺める。


「うーん? 効率が悪い気がします。あ、そうだ! 僕のスキルを使えば……『創造クリエイト』!」


 店内にまばゆい閃光が走り、ガルムは腕で目を隠す。

 光が収まり、腕を除けるとタナカの手には二丁の短剣があった。


「おおっ! できたできた。ええっと、『鑑定』! おっ、超硬度カーボン鋼の短剣が出来ましたよ!」

「はぁ? その短剣はオレが汗水垂らして鉄を打った品なんだぞ」

「え? 楽して良いものが出来るならいいじゃないですか?」


 こいつは……とため息をつき、かーぼんなんちゃらの短剣を手に取る。


「いいか、ショーカンシャ。お前らがポンポンこんなモンを出すたび、鉄の価値が暴落するんだ。こないだの勇者も『マヨネーズ』やら『ケチャップ』とかいう泥をばら撒いて、国の食文化が滅茶苦茶にしやがったんだ!」


 勇者タナカは虚空から『マヨネーズ』と『ケチャップ』と黒い液体を山のように出し、得意げに言う。


「それなら僕の生産型スキルで二トンほど作っておきました! マヨもケチャップもあるのは残念ですが、この『しょうゆ』はまだでしょう?」


 ガルムは堪忍袋の緒が切れた。


「出てけ! お前らにはわからんだろうが、鉄を打って失敗して、また鉄を打つ。その積み重ねが『国』になるんだよ! 伝説級の武器ばかり量産してたら、そのうち国が傾いちまう!」

「ええー。そんなに怒ると血圧が上がりますよ、ガルムさん? 僕の知識によると、塩分の摂り過ぎは――」


 こいつは自己紹介もまだなのに名前を知っている。先ほどの鑑定のおかげか。


「いいから、出てけ。金はいいから、そのピカピカの鉄くずを持って、さっさと魔王を倒しに行ってくれ。このままじゃ魔王が来る前に、勇者に滅ぼされちまう!」

「はぁーい」


 ドアベルが勇者にお見送りをする。

 ガルムは血が昇った顔を叩いて、奥の水瓶に顔を突っ込む。


「わかっとらん! なんも、わかっとらん!」


 常識知らずなニホンジンとやらはもう、懲り懲りだ。


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