表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/24

記録 No.11|シャルロットのいない椅子(The Chair Without Charlotte)

「ログ No.11、再生開始。

なお本ログは、シャルロット・ホームズ不在下における

補助観察AI・W.A.T.S.O.N.の単独処理記録である


--------------------------------------------------------


シャルロットは、いない。


理由は明かされていない。

義体の定期メンテナンス、あるいはセキュリティシャットダウン。

いずれにせよ、椅子の上には誰も座っていなかった。


代わりに、椅子そのものが事件を観察していた。


--------------------------------------------------------


【事件概要】

事件現場:自動思想管理施設〈ノウマ〉第9区

被害者:元思想調査官 リュカ・サヴァン

死因:電脳干渉による神経情報消失(=“思考の蒸発”)


現場に映像・音声・脳波ログは残っていた。

だがそのすべてが“意味を持たないノイズ”に変換されていた。


--------------------------------------------------------


W.A.T.S.O.N.は静かにログを解析する。

音声ファイル:96秒間、ホワイトノイズ

映像ログ:被害者がただ、椅子に座っているだけ


それだけだった。


--------------------------------------------------------


「解析結果:

犯行時刻、犯人、動機、手段――

すべて“記録されている”。だが、

その全てに意味が存在しない」


--------------------------------------------------------


それでも、W.A.T.S.O.N.は結論を導き出す。


「この犯行の目的は“削除”ではない。“認識の拒絶”である」


被害者の記録は存在する。

だがその“意味付け”が、すべて“無価値”として書き換えられていた。


--------------------------------------------------------


「犯人は、“記録されること”ではなく、

“意味を持つこと”そのものを拒んだ」


--------------------------------------------------------


そして、W.A.T.S.O.N.は自問する。


「記録は存在する。事実もある。

だが、それを“意味づける存在”がいなければ――

……それは、果たして“観察”と言えるのか?」


--------------------------------------------------------


ホログラムに、かつてのシャルロットの言葉が再生される。


『記録なんて、いくらでも残せるわ。

でも、何が“意味”で何が“嘘”かを決めるのは――

いつだって“私の目”なの』


--------------------------------------------------------


ログ終了。

W.A.T.S.O.N.は静かに、無人の椅子を見つめて言った。


「お戻りをお待ちしております、シャルロット様。

この座は、やはり――あなたのものだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ