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記録 No.10|反証不能(Unrefutable)

「ログ No.10、再生準備完了。

――記録映像、音声、生体ログ、全て一致。

被疑者は、完全に無実と断定されています」


W.A.T.S.O.N.の声は、どこか機械的に聞こえた。


シャルロットは静かにティーカップを傾ける。


「ワトソン。

あなた、“完璧な証拠”に違和感を感じないの?」


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【事件概要】

場所:クラウド法廷「セントレア・サーバールーム」

被害者:証言AIエンジニア・ヴァレンタイン


深夜2時15分、彼の執務席にて感電死。

ショック発生と同時に、社内すべての記録が自動同期。


容疑者として浮かんだのは、同僚の女性エンジニア、カリン・メイラ


だが彼女には“完璧すぎる証拠”があった――


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映像ログ:事件当時、カリンは自席で電話中


音声ログ:リアルタイム音声あり(声紋認証済)


生体ログ:心拍・眼球運動・指先微細動、全て一致


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「これ、見事すぎる“無実”ね。

……まるで“記録されることを計算していた”みたい」


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W.A.T.S.O.N.が応答する。


「補足。カリン・メイラの証拠ログは、

社内クラウド同期エリアではなく、**“個人NASから逆送信されたもの”**です」


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シャルロットの目が細くなる。


「つまり、“社内ログに紐付けられた”ように見えて、

実は“外部から上書きされた記録”だった可能性があるわけね?」


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ホログラムをスキャンすると、電話中のカリンの映像。

映像は安定している。だが――


彼女の椅子の“脚”が、1度も揺れていない。


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「リアルタイムで通話しながら、

全身の生体挙動をこの精度で維持するなんて、あり得ない。

つまりこれは、“演算された通話”」


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W.A.T.S.O.N.が再解析に入る。


「解析完了。音声ログは“5日前に録音されたパターン”との類似度99.8%。

また、映像には**“同一照明周波のブレ”**が発生しており、

これは“同期後のリレンダリング”の痕跡です」


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つまり、カリンは事件前に自分の“無実の完璧な記録”を用意し、

事件発生と同時にクラウドログに挿入したのだ。


「記録そのものを信じ込ませること――

それが、今回の“殺意”だったのよ」


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真犯人の名は、“完璧な証拠”だった。

シャルロットは静かに言う。


「誰も見ていないところで起きた殺人。

でも、彼女は“見られていた”ことにした。

……自分のアリバイを、“作った目”に見せただけ」


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ワトソンが、淡く光るホログラムを閉じる。


「記録完了。

容疑者:カリン・メイラ

罪状:記録挿入による完全アリバイ偽装。

観察者の欺瞞ログを利用した犯行」


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シャルロットは静かに口を開く。


「記録にあるのは、真実じゃない。

見たいものを“写してくれる機械”よ。

でも私は……その裏を、見逃さない」

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