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ワンちゃんのお洋服屋さん  作者: 貴志ひろこ
9/11

幸せな夜

舞っていた雪が地面を隠し始めた。

お店を閉めて、外に出る。


いつもは、お店の2階で生活してるけど、クリスマス、大晦日から元旦、お盆は、実家に一泊して、家族と食事をする。


実家には、両親と弟夫婦。

子供はまだいない。


スーパーに寄って、ビールを一箱買う。


『ただいま~』

玄関のドアを開けると、母が出てきた。

『おかえり』そう言ってから、キッチンにいるらしい義妹に声をかけた。

『ミサコちゃん、モトコが来たわよ』


義妹がキッチンから顔を出した。

『おかえりなさい。お姉さん』


母とリビングに行くと、父と弟は既に呑んでいた。

『やっちゃってるね~。じゃあ、これ、要らないか』

と、ビールを見せると、母が

『何も買ってこなくてよかったのに。ねえ、ミサコちゃん』

『そうですよ~。敦さん(弟の名前)たら、昼から義父さんにお酒をすすめるんですよ。お姉さんからも何とか言って下さい』


いや…お酒をすすめたのは父だ。

そうして、きっと昼から盛り上がっていたに違いない。


『じゃ、これは年越し用にしましょう』

母がビールをキッチン奥の納戸に入れた。


男2人は、何かブーイングしていたが、また呑み始めた。


『ミサコちゃん、何か手伝う?』

キッチンに入ると、もう食べるばかりになっている。

『もう出来ましたから大丈夫です。あ、お鍋を持っていくのをお願いします』


大人だけの実家。

オシャレなクリスマスメニューより、両親に合わせたメニューになる。


クリスマスにお鍋か~

パエリアとか食べたいな~。なんて思いながら、お鍋をダイニングテーブルにセットした。


母と義妹が、テーブルセッティングし終わった頃に、飲んべえの男2人が椅子に座った。


『食べて酔いざましするか』

2人は訳のわからない事を言っている。


母と私も座る。

すると義妹が『初めて作ってみたんですけど…』と、パエリアを出してきた。


『パエリア‼』

思わず声が出た。

『お料理下手なので、義母さんに教わったり、ネットで勉強してるんです』


敦にはもったいない嫁だ。

私がもらいたい(笑)


男2人は呑み、女3人は、芸能界や世間の噂、ファッションからニュースまで、幅広くお喋り。


母と義妹が仲良しで良かった。


お喋りして、後片付けも終わる頃、父と弟は寝室に消えた。いや…寝室に強制送還された。


『お姉さん、お風呂に入って下さい』

義妹が声をかけてきた。

『じゃ、先に入らせてもらうね』

『バスタオル、ここにおいておきますね』


実家の浴室は暖かい。

両親の為に、弟が、暖かい浴室にリフォームしたのだ。


アロマオイルも良い香り。

本当に義妹はセンスも良い。


本気で弟から奪うか?なんて、バカな事を考えていたら、のぼせてしまった。


お風呂から出ると、母がビールをすすめてきた。

『今日は呑まなかったけど、止めたの?』


缶をプシューっと開けて、グラスに注ぐ。

『止めてないよ。呑む回数が減っただけ』


お風呂上がりのビールは美味しい。


義妹は、お風呂から、すぐに寝室に行った。

私と母を気遣ってるのかな?


クリスマスらしくない実家。

でも、家族の暖かさがある。


『あら、積もってきたわ』

母が窓を少し開けて言った。


『ホワイトクリスマス~』

ふざけながら、私も外を見る。


5センチくらい積もっている。


『明日の朝は気を付けて行くんだよ』

母が言う。

『うん』


舞っていた雪が、しんしんと降る雪に変わって積もっている。

ホワイトクリスマス。

世界中の誰もが幸せな日を過ごせますように。

世界中のワンちゃんも暖かく過ごせますように。




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