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Constellation Knight 〜私達の星春〜  作者: Remi
6節 偽りか、裏切りか
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第088話 星鎖祭り

 「出かけたくない」という気持ちを抑えながら、扉に鍵を閉める。

 そしてそろそろ慣れてきたビルの階段を5階分降りて、蒸し暑い街に足を踏み出す。


 真夏の夜は蒸し暑い。だけどこうして外に出たのには理由があった。


 それは、由衣ゆいとの約束で星鎖神社で行われる星鎖祭りに行くからだ。


 本当は行きたくない。めんどくさい。

 だが約束した以上、行かなければならない。



 あれから、何度か俺の家に集まって課題をやった。

 志郎しろう鈴保すずほは毎回は来れなかったが。


 志郎がほとんど課題に手を付けていなかったり、俺の家に集まって課題をやり始めたときに澱みが現れたり……など色々あったが、由衣は約束通り課題を終わらせた。


 つまり、今ここで行くのをやめると約束をやぶるのは俺になる。

 それはよくない。


 そう思いながら、俺は慣れた道を歩き白上家へ向かう。

 近くなってきたので「もうすぐ着く」というメッセージを送り、道を曲がる。


 少し歩き、また道を曲がる。



 すると、見慣れた白上家が見えてきた。

 そして玄関には見慣れたはずなのに見慣れない感じがある、2人の幼馴染がいた。


 由衣が俺を見つけたようだ。

 「来た来た!ま~く~ん!」と軽く飛び跳ねながら手を振っている。

 一方日和(ひより)はいつも通り、静かに待っている。


 ……やっぱり由衣はいつも通りだ。

 残念感と言うか安心感と言うか、謎の感覚を覚える。


 そんなことを思っている間に、白上家の前に着いた。

 その瞬間、由衣は「いつもと変わらない服じゃん!!」と言って来た。


 俺はため息を堪えながら「浴衣を持ってると思うか?」と言葉を返す。


「それなら言ってくれたら……」


 そんな由衣の言葉に、「ないでしょ」という日和の突っ込みが飛んだ。


「……流石にない」

「由衣1人っ子なんだから。あったほうが驚く」


 そんな会話をしている2人の幼馴染が見慣れない感じの理由。


 それは彼女達の服装が俺と違い浴衣だからだろう。

 由衣も日和も普段より髪型などが気合入っているのが、流石の俺でもわかる。


 由衣は普段からお洒落に気を遣ってるらしいが。


 ……というか今更な話だが、由衣も日和も可愛らしい顔に見える。

 今日は普段よりも力が入ってるからだろうか。


 ……再会してからもう4ヶ月ほど一緒にいるのに、何故今更そう思ったのかは自分でも不思議だが。


 そんな事を考えていると「まー君?どうかした?」と由衣に言われて、我に返る。

 俺は「何でもない。行くぞ」と返し、星鎖神社に向けて歩き出す。


 何故星鎖祭りに行くメンバーが堕ち星と戦う5人ではなく、俺と由衣と日和の幼馴染3人なのか。

 それは色々と訳があった。


 まず智陽ちはるには断られた。

 まぁ、そうだろう。あいつはこういうの好きじゃないから、わかっていたことだ。

 実際にあの勉強会の日にも断られていたし。


 鈴保は部活仲間でもある友人の2人と行くそうだ。

 だから向こうで会えると言っていた。


 志郎は……「まぁ向こうで会えるからな!」と言っていた。

 由衣は「だったら一緒に行こうよ!」と言っていたが、何故かそれは断られていた。


 そんな訳で「じゃあせっかくだし、ひーちゃん呼んで3人で行こうよ!」といy由衣の言葉で、日和が誘われた。

 日和には「由衣と俺だけで行く。だが神社では他の友達にも合うことになる」と伝えておいた。

 そうしてこの3人になったという訳だ。


 そして、星鎖神社に登るため階段が見えてくる。

 そのとき、いきなり後ろから背中を押された。


 左側に気配を感じるので見てみると、少し後ろを歩いていたはず由衣が隣にいた。


「というわけで決まりね!」

「何がだ」

「由衣がこれ飲みに行きたいんだって」


 右側に来た日和がそう言って、反対側の由衣のスマホを指差している。

 俺は由衣のスマホを覗き込む。


 表示されていたのは有名コーヒーチェーン店の限定商品の画像だった。


「課題も終わったしいいでしょ?」


 そう聞いてきた由衣の目はキラキラと輝いている。


 ……面倒だが、断った方が面倒なことは目に見えている。

 そのため、俺は「わかった」としか言えなかった。


 それとほぼ同時に、星鎖神社への階段の下に辿り着いた。

 階段の下は星鎖祭りに行く人であろうが、多くいる。


 そして俺達は人が多い階段を登りながら、お互いの予定を確認する。


 行く日が決まり、階段も登りきった。

 そんな俺達の目に飛び込んできたのは、煌びやかな出店の明かりと楽しそうな人々の姿。


 星鎖神社は1つ目の階段の先は広場になっており、こういう行事の日には出店が出る。

 本殿は広場の奥のもう1つの階段を上った先にある。


 そしてお祭りの会場を見た由衣は「懐かしい〜!!」と嬉しそうな声を上げた。


「去年も一緒に来たでしょ」

「でもそのときはまー君いなかったじゃん!」

「それは……そうだけど」


 そう呟いた日和の声は、少し暗かった。


 そして次に口を開いた由衣の声も、暗い声だった。


「……ゆー君とさっちゃん。どうしてるのかなぁ」

「……連絡取ってないのか」

「年賀状は毎年来てたんだけど……今年は来なかったんだ……」

「私も。あの頃はスマホ持ってなかったから、メッセージでも繋がってないし」


 ゆー君とさっちゃんこと、児島こじま 佑希ゆうき児島こじま 佐希さき

 俺達の幼馴染の双子の兄妹で小学校低学年の頃は毎日のように5人で一緒に居た。


 しかし2人は小学校中学年の頃、親の仕事の都合で転校していった。

 俺もこの街から出るまでは、2人と同じように年賀状を送り合っていた。


 ……だが、毎年来ていた年賀状が今年だけ来てないのは少し妙だな。


 俺は街を出てしまったから、そもそも年賀状すら中等部の頃から受け取れていないが。

 2人の話に何か引っかかるものを感じる。


 だけど、確認するすべがない。


 少し考えていると、日和が「暗い話は終わり」と口を開いた。


「お祭りを楽しむために来たんでしょ」


 そう言った後、日和がお祭りの熱気の中に向けて歩き出した。

 由衣がその背中を「待ってよ~!」と言いながら追いかけていく。


 ……置いて行かれるわけにはいかない。


 そのため。俺も2人の後を追って、お祭りの熱気の中に飛び込んだ。

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