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分け合えば

「ユウキはケーキどれ食べる?」

机の上に並ぶざまざまなケーキをユウキは見る。

ちなみに俺はフルーツタルトとかショートケーキとか果物の乗ったケーキはあまり得意ではない。

食べるのはモンブラン位な物だ


そもそも栗って果物だっただろうか?

スイカが野菜だって言ってたから、木になるのが果物?


「全部食べるよ?」

その言葉に、どうでもいいことを考えていた俺は驚く

「さすがに多くない?」

いくらユウキがよく食べるとはいえ、さっきフルコースを食べたのだ

食べきれないだろう。

それでもユウキは

「でも私は、全部食べたいの」

「どれが美味しくて、どれが好きか分からないから」


俺は、当たり前のように口にしようとしていた


もう、ユウキには無いのだ

また今度も、次来ればいいも

そんな事はもう無い


だから、彼女は全部食べるなんて言うのだ


「欲張りすぎかな?」

彼女はフォークを握ったまま動かない

俺に聞いているのだろう


「そんなこと無いだろ」

だって、それは今まで何も知れなかったのだから


彼女のせいでは無いのだから


俺は一番近くにあった皿、そのケーキを半分に切り分ける

半分を口に放り込み、皿をユウキに渡す

口の中に甘さが広がる

うん、美味しい

俺はケーキを紅茶で流し込み


「ほれ、これなら全部食えるだろ?」

ユウキに笑顔を向ける


ユウキは驚いたような顔をしたが、嬉しそうに言った


「そうだね、それなら全部食べれそう」

「こんなに簡単だなんて思わなかった」


ユウキも小さくなったケーキを一口で食べる


そうだ、簡単なことなのだ

食べ切れないなら、分ければいい

抱えきれないなら、話せばいい

そんな、当たり前で簡単な事を

俺たち二人は上手くできない

彼女は独りで、知らなかったから

俺はそれが欺瞞だと、知ってしまったから


自分の苦しみを、幸せを

そんな思いを

分けてもいいと気が付かなかった。


ソレは決して無くなるわけじゃなくて

そこに有り続けるのだとしても

飲み込み、流し込んでしまえば良いのだ。


二人寄り合っても、決して普通には程遠かったとしても

そんな普通な当たり前を

俺は幸せと呼びたい、そう願うのだ。

机に並べられたケーキは、俺達の手で次々に切り分けられ

お互いの口の中に消えていく。


甘いし、もうお腹いっぱいだけれど



継ぎ足した紅茶はまだ熱く、湯気を立てている

喉元をすぎれば忘れてしまうそんな熱さを、忘れないように

ケーキを食べ、紅茶を飲み続ける。


別に全部食べ切ったからって

彼女の不幸が無くなるわけじゃない

そんな事は分かっている。


ただ

お互いの不幸を、幸福を余すこと無く分け合うように


俺達は食べ続けた。




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