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それでもユウキは

すべてを話し終えた俺は

何杯目か分からない紅茶に手を付ける。


それが、俺の消し去りたい記憶で

彼女に知られたくない、どうでもいい不幸の話だった。

「つまらない話だったでしょ?」

最後に付くオチは今日のディナーの一幕だ


全部が無駄で、自分の独りよがりだった

わかりきった結末を先送りにし続けたツケを今日精算させられたって話なだけで。

むしろ、延滞料金だの、利子だの付いてこなかっただけ良心的だったとも言える。

俺が話している最中、分からない単語だけ聞き返すことはしたが、ユウキは静かに話を聞き続けていた。


すべての話が終わり、沈黙が訪れる。


俺はテーブルにあるケーキの山を見てどれから手を付けるべきか考える。

おすすめ何個かって言ったけどさ

さすがに多くない?

2ホール分くらいあるけど?

俺がフォークを弄んでいると


不意に

ずっと黙ったままだったユウキが口を開いた。

「チアキは頑張り屋さんで、強くて、優しいんだね?」


俺はフォークを取り落としそうになる。

…人の話聞いてた?

あんまりにも話がつまらなくて、脳内で脚色されたの?


ユウキは静かに言葉を続ける

「悲しかった?」


この前も同じ事を聞かれた

俺はその時、分からないと答えたのだ


分からないと嘘をついたのだ

彼女に知られたくなかったから


だが、そんな彼女の前でみっともなく泣いてしまったのだ

いまさら取り繕う事も出来ず、正直な言葉を返す。


「悲しかったよ、努力を認められなくて、全てが虚しくて」

「じゃあ、苦しかった?」

「苦しかったよ、自分は無価値だって気が付いて、どうする事も出来なくて」

「彼女を好きだった?」

「…好きだった、下らなくて、勘違いでもそれが世界のすべてだった」

声が震える

そんな俺を、紅い瞳が見続けている。


「誰も、チアキ自身も認めないなら、私が認めるよ?」

「チアキは強いんだって」

「一生懸命頑張ったって」

「私が言ってあげるよ?」

「チアキは誰よりも優しいんだって」


俺は言葉を返せない

何も言えなかった


灰色の世界が滲む

何も見えなくなる


そんな滲んで、何も見えない中でも、彼女の紅い瞳だけが

色を持って、熱を帯びて

灰色の世界を色づかせる

そんな俺を見続ける。


「俺は…強いのかな?」

消え入りそうな声でユウキに問う

「強いよ、だって一人でも戦ってたんだから」


「俺は、頑張ったのかな?」

「頑張ったよ、才能なんか無くても勝っちゃうんだから」


「俺は、優しいのかな?」

「優しいよ、だって誰のことも責めないで、自分のせいだって泣いてるんだから」


「だから、私が認めてあげる」


「そんな簡単な事も分からないチアキに教えてあげる」

ユウキは優しく、当たり前のように言った。


違う、そんな綺麗なものじゃない。


俺は、独りだから認められたくて

勝利なんて称号を求めただけで


俺は、才能がないなんて諦められるほど大人じゃなくて

何時までも、もがき苦しんで


自己責任だって思わないと、自分のせいだって言わないと

独りの俺は、もう全部を投げ出してしまいそうで


掴んだ物も、周りの世界も、自分ですら

そのどれもが無価値だと信じられない

それなのに、諦めきれず生き続けて


何も知らない彼女を騙し続ける


最低で、弱い人間だから


どうか、間違えないで欲しい

それ以上優しい言葉を掛けられたら

優しい嘘を付かれたら

幻想を見せられたら


また勘違いしてしまうから。


「ユウキが言ったこと、俺は全部間違ってると思う」

涙を流し、震える声で静かに語り始める

「俺はそんな人間じゃなくて、自分の事も信じられない」

「ユウキは、何も知らなくて、何も見ていない」


ユウキは、そんな俺の言葉を聞いて哀しそうに笑った

「そうだね、そうかも知れない」


ユウキはそれでも、先程の言葉を曲げようとはしない

俺が、求め続けてやまなかったその言葉を

無かったことにはしないのだ。


俺は彼女の瞳をしっかりと見据える。

もう逃げないように、嘘を付く。

「それでも、ユウキがそんな俺を強いと信じてくれるのなら」

()()()()()()()()()()()()()

人がたやすく嘘をつくのも

都合の悪いことを見ないのも

自分が一番よく知っている。


そんな俺の言葉に、ユウキはおかしそうに笑った。

「自分を信じられないのに、私を信じるの?」


「そう、ユウキが俺を信じるように」

「俺もユウキを信じたい」


人と人が決してわかり合わないと知っている。


だからこそ、信じるなんて言葉を使うのだ

勝手に期待して、勘違いして幻滅する

そんな都合のいい言葉でしか


あの時(中学時代)のまま立ち止まり続け、何も変わらない俺は

ユウキと居て良い理由を見つけられない。


だから俺は、また足掻こうと決めた


彼女が信じた嘘を、幻想を

本当にする為に


その先の結末が、救いのない空虚()だと知っていても


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