実はこの日記…
「ねぇジュリアンさん。
どこか安くてそれなりに安心のホテルを知らない?」
「え?」
「ここのホテルは高級すぎて、お金が足りないでしょう?
だからもっと庶民が泊まるようなホテル知らない?」
「知らない事はないけど、いくら安くても何日も泊まれる金はないだろ?」
「そうね… もともと持っていた手提げ鞄に2000メルクが入っている。後ね…」
私は先程投げ渡された鞄の中の日記を出しました。
カギの付いた日記帳。これを入れてくれたのは不幸中の幸いだった。
私は首から下げていたカギで日記を開けると、分厚い本の真ん中をくりぬいてあり、そこに幾つかのアクセサリーとお金が入っていました。
「さっきこの日記が入っていて、少し安堵したわ。
もしもの時の為に入れておいたの」
お父様に婚約解消をお願いする手紙を出したら、そのあとからお父様が事あるごとに私宛にお金を送って来て何とか我慢しろと言われていました。
そしてそのお金を部屋に置いておくといつの間にか減っているのです。
どうやらデボラ様達が勝手に部屋を漁りお金や宝石を盗んでいく様子。
部屋にカギを掛けても使用人に行って開けさせてしまいますし、入らないで欲しいと言ったところで無視されます。
だから、送られて来たお金を半分に分けて一方はドレッサーの引き出しに、一方は日記を手作りの隠し金庫にして中にお金をに入れていました。
「本当に2000メルクしか持たずに追い出されたのかと思った時は途方にくれたけど、神さまは私を見放さなかったようですわ」
私はニッコリほほえんでジュリアンに言った。
庶民なら1日100メルクあれば生活していける。
住むところさえ確保出来れば、暫くは生きて行けるだろう
「うーん確かに暫くは問題ないだろうけど、貴族令嬢だった君に出来る仕事ってなんだい?
このくらいのお金は気を抜けば、あっという間になくなるぞ」
ジュリアンさんってちょっと軽薄そうな美形さんですが、優しいし常識があるんですね。
「分かっていますわ、でも今日はもう日も暮れますし、明日住む所は探すとして今日はどこかに泊まらないとなりませんでしょ?」
私だってずっとホテルに滞在する気などない。
そう言うと、うーんと顎に手を当てて何だか考え込んでいます。
そんな姿も無駄に絵になる。
ほんとこの人って美形だわ。
ジュリアンの顔を見ながらそんな事を考えていると、彼は急に立ち上がり
「よし! 決めた。僕に付いて来て」
といいます。
やっといいホテルが決まったのかな?
安くていいホテルだったらいいな。




