突然の婚約破棄
ある不貞の濡れ衣を着せられて、身一つで追い出されたステラ・アンダーソン。
行くところのなかった彼女を助けたのはまさかの人だった
「なんて、ふしだらなの!
信じられない。エドガー許しては駄目よ」
広いフロアーの隅々にまで届きそうな程大きな金切り声が響く。
「そうよ、そうよ、婚約者のいる身でこんなところに来るなんて、
ひどい裏切りよエドガー」
新たな甲高い声が重なる。
「エドガーこんな婚約者はあなたにふさわしくないわ」
今度は大きい声だけど、ダミ声。
この三者三様にギャーギャーとうるさく言っているのは、私の婚約者エドガー・ダートン伯爵の母親のジータ様、姉のイゾッタ様、デボラ様です。
そして…
「ステラ・アンダーソン!
貴様の様なふしだらな女とはもうやっていけない婚約は破棄させて貰うからな!」
目の前でそう叫んだのが婚約者のエドガー様その人です。
あまりに突然の事でポカーンとしてしまった私。
何が起こったのか少しの間理解するのに時間がかかってしまいました。
ここは、街中の高級ホテルのロビーです。
格式の高い重厚な作りのロビーの一角がティーサロンになっています。
そこで待ち合わせをしたり、商談の話をしたりしている方々が興味津々にこちらをチラチラ見ています。
私は先ほどから騒いでいるデボラ様の代理でこのティーサロンである殿方にお会いしていたのに…
その当人と婚約者家族全員で私を糾弾している。
何が何やら分からないうちに、婚約破棄だなんて。
やっと少しだけ事態を飲み込んだ私は慌てて事の説明を始めます。
「待って下さいエドガー様。私の話を聞いて下さい」
「今さら言い訳しても遅いですわ。エドガー聞く事ないわよ」
またイゾッタ様が口を挟んで来ます。
「そうよ、エドガー。
あなたも見たでしょ?知らない男とイチャイチャとこんなホテルなんかで」
私の話を遮り2人の義姉が騒ぎます。
「こんなホテルって…ここはロビーのサロンですよ?
それにデボラ様に頼まれてこの方に会いに来たのに…」
「私はそんな事頼んでないわ。
言い掛かりはやめてちょうだい」
「そんな…じゃあこの方に聞けば…あら? いない。 どうして…」
さっきまで私の目の前にいた相手が見当たりません。
「都合が悪くなって逃げたんでしょ。
ざまぁないわね。婚約破棄したんだから、もう戻って来ないでね。
はい。あなたの荷物」
そう言ってデボラ様が小さな鞄を投げてきました。
何やら見覚えのある鞄…
「あの、これ私の荷物ですか?」
「そうよ。 ああ、他の物は慰謝料として頂いておくわね。
実家に請求しないだけ、有難いと思いなさいな」とイゾッタ様が仰います。
「そ、そんな私の私物は全てそちらの邸に運び込んだのに…それはあんまりです。
全てを奪うのですか?」
「黙りなさい! 身から出た錆でしょ? まったく人聞きが悪いったら。
あなたはもう伯爵家とは何の関係もありません。
間違っても文句を言ってきたり、帰ってきたりするんじゃありませんよ」
とジータ様に睨まれます。
「そうよ。自分の所為なんだから」
とデボラ様。
私じゃなく、デボラ様の所為じゃないですか。
「エドガー行きますよ。
まったく、こんなところへ来るんじゃなかったわね。
たまには家族で外食でもと思って来てみたら、とんでもないものを見せられたわ」
とジータ様は皆を促し4人で出ていきます。
エドガー様は1度も私を見る事なく出ていきました。
1人残った私。
これからどうしましょう。
お読み下さりありがとうございます。




