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前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


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第15話 鳥たちの初仕事

「……カケルさん。これ,本当に受けるんですか?」


冒険者ギルドの受付カウンターで、ミラは困惑を隠しきれない顔で一枚の依頼書を差し出した。

それは『王都東側の森に自生する「ハクレイの実」の採取』という、報酬も低く、冒険者の間では「手間ばかりかかる小銭稼ぎ」と敬遠されている依頼だった。


「はい。これ、今の時期が一番甘みが強くて美味しいんですよね?」


「ええ、まあ……小鳥や小動物にとっては、ですけど。人間が食べても少し苦味がありますし、何より群生している場所を見つけるのが大変なんです。もっと効率の良い薬草採取の依頼が他にありますよ?」


ミラの助言はもっともだった。今のカケルは、家具を少しずつ買い揃える以外、ギルドに預けているまとまった資金には一切手を付けていない。日々の生活費は低ランクの依頼を地道にこなして稼いでおり、ミラから見ればもっと「効率よく稼げる」はずの有望な新人だった。


しかし、今のカケルの目は、かつてギガ・フライを相手にした時と同じくらい真剣だった。


「いえ、これがいいんです。……ちょっと、あの子たちにうまいものを食べさせたくて」


カケルは、自分が日本からの転生者であることは依然として伏せている。ただ、新しく呼べるようになった「鳥類」の仲間たちについては、先日ミラを通じてギルドマスターのヴォルガンにだけは内密に報告を済ませていた。


カケルの「隠された実力」を知るミラは、表向きは呆れたふりをしつつも、彼の「目立たないように振る舞う」という方針に協力してくれている。


「……召喚獣のために、そこまで?」


ミラはわざとらしく溜息をついた。周囲の冒険者には、希少な召喚士が小鳥の餌探しに熱を上げている奇特な男に見えているだろう。彼女はカケルのその「家族サービス」を見守る味方の一人だった。


カケルは意気揚々と東の森へ向かった。

人影がないことを慎重に確認すると、カケルは新たな家族を呼び寄せるための意志を込めた。


「おいで、みんな!」


パッと光の粒が弾けると、カケルの肩には冠羽を立てたほっぺが舞い降り、その周囲をピー太郎、ピー次郎、プー子、ペー子たち四羽が賑やかに飛び回り始めた。


「よし、みんな。今日はご馳走を探すぞ。準備はいいか?」


カケルの呼びかけに応じ、四羽のキンカチョウがパッと散開した。


「【索敵】開始だ」


四羽は半径50メートルを分担し、小さな身体を活かして木々の隙間を縫うように飛び回る。すると、すぐに脳内へナビゲーターの声が響いた。


『前方30メートル、左斜め45度の位置にハクレイの実の群生を検知しました。周囲に脅威はありませんが、Fランクの魔獣「ミドリカジリ」が数体、実を狙って接近中です』


「さすがだな。……ほっぺ、出番だ。あいつらをあそこから引き剥がしてくれ」


「ホッペチャン!」


ほっぺが力強く冠羽を立てて飛び上がる。彼は群生場所の少し離れた位置にある枯れ木に止ると、大きく息を吸い込んだ。


「ピュイーッ! ピュイーッ!」


ほっぺの【呼び寄せ】スキルによる、鋭く大きな「呼び鳴き」が森に響き渡る。


その音に反応して、二十センチほどの魔物が茂みから這い出してきた。エメラルドグリーンの甲殻を持つ、巨大なカナブンのような姿。果実を砕くための大きな顎をカチカチと鳴らし、実に群がろうとしている。


ミドリカジリたちは、ほっぺが放つ独特の音色に誘われるように、次々と実のなる木から離れてほっぺの方へと向かっていった。


だが、彼らがほっぺの元へ辿り着くことはなかった。


「ワサビ君、茶渋、やってくれ!」


物陰に潜んでいたワサビ君の体がみるみるうちに1.5メートルほどに巨大化し、空中を飛んでいたミドリカジリを舌で絡め取り、そのまま丸呑みにした。それと同時に、ワサビ君の口から魔石がポロリと吐き出される。


茶渋も負けじと草むらから躍り出し、鋭い爪で残りの個体を仕留めていく。カケルは安全になった木へ駆け寄り、一番形の良いハクレイの実を丁寧に摘み取っていった。その傍らで、茶渋は手際よく死骸を裂き、濁った魔石を取り出していく。


「ワサビ君、これもお願い」


カケルが、茶渋が狩った分の魔石を差し出すと、元の大きさに戻ったワサビ君はそれをひょいと飲み込み、精製された魔石を吐き出した。


「よし、これで山分けできるな。……ピー太郎たちも、あまり離れるなよ。迷子になると自動で送還されちゃうからな」


カケルは、一定距離で自動送還される仕組みを意識し、夢中で飛び回るキンカチョウたちを適宜呼び寄せる。


本来なら熟練の採取家が数時間かけて行う作業を、カケルは召喚獣たちの完璧な連携によって、わずか十五分足らずで依頼を終わらせてしまった。


『召喚獣:キンカチョウのレベルが2に上昇しました』

『召喚獣:ほっぺのレベルが2に上昇しました』


「……そうか。直接敵を倒さなくても、スキルを有効に使えば経験値が入るのか」


カケルは納得したように頷いた。キンカチョウたちの【索敵】と、ほっぺの【呼び寄せ】。魔獣との直接戦闘を回避、あるいは有利に進めるための行動そのものが評価されているようだ。


「それにしても……さすがに茶渋やワサビ君は、この程度の相手じゃすぐにレベルアップしなくなったな」


初期からの相棒たちは、すでに格下の相手では簡単には成長しない域に達しつつある。カケルは肩の上で満足げな鳥たちと、足元で仕事を終えた茶渋たちを見比べ、改めてパーティー全体の成長バランスを実感していた。


夕暮れ時。ギルドに戻ったカケルが、カバンいっぱいのハクレイの実を納品すると、ミラは提出された実のあまりの質の良さに目を見開いた。


「これ……傷一つない上に、全部食べ頃のものばかりじゃないですか。どうやって見つけたんですか?」


「みんなに協力してもらったんです。おかげで良いのが手に入りました」


満足げに笑うカケル。


(……索敵に、呼び寄せ、転送と完璧な連携。普通ならもっと高ランクの依頼や、上を目指すために使うべき才能を、鳥のエサの選別のために使うなんて)


ミラは報酬を支払いながら、心の中で苦笑した。


「カケルさん。あなたの才能、もっと他の……もっと上を目指す方向に使えないんですか――あ、いえ。実力がつくまで目立つなと言ったのは、私の方でしたね。今の言葉は返してください」


「ええ。今はみんなの安全が第一なので、言われた通り地道に実力をつけていくつもりですよ。みんなが伸び伸び暮らせる安住の地を見つけることが目標ですから」


カケルの屈託のない答えに、ミラはついに微かな笑みを浮かべて降参した。ギルドマスターのヴォルガンも、この男の底知れぬ実力と、あまりに無欲な性格のギャップを聞いて驚いていた。


ギルドを出たカケルは、夕焼けに染まる王都の道を、家族たちとともにゆっくりと歩き出した。

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


本作の他にも、完結済みの作品を公開中です。


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