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前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


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第11話 妥協なき家探し

「……これで、今日のノルマは達成ですね」


午前中の早い時間、カケルは街の近郊で手早く「薬草の採取」の依頼を終えていた。昨日のような不測の事態もなく、予定通りに仕事を片付けた彼は、報酬の銀貨三枚を懐に商業区へと足を向けた。


商業区の中心街に建つ、不動産ギルド。紹介状を手にここへ通い始めて今日で三日目になる。


しかし、内見の結果は惨憺たるものだった。


「……申し訳ありませんが、ここもパスです」


高台に建つ物件の玄関を出るなり、カケルは静かにそう告げた。担当者の若い男は、今にも泣き出しそうな顔で帳面を抱きしめている。


「ど、どうしてですかカケル様! ここは最新の魔導冷暖房が完備された、一番人気の物件なんですよ。確かに家賃は月金貨二十枚と少々張りますが……」


「ええ、素晴らしい設備だとは思うのですが。少し、今の俺には豪華すぎます」


カケルは申し訳なさそうに、だがはっきりとした口調で断った。


「今は将来のために、できるだけ貯蓄を優先したい時期なんです。月金貨二十枚という賃料は今の俺には重すぎますし、この便利な魔法道具も、まだ俺には早すぎる気がします。自分たちの工夫で何とかなる部分に、これだけの費用を払うつもりはありません」


担当者は言葉に詰まり、困り果てたように視線を彷徨わせた。


初日に案内された森の中の家は、月金貨八枚と手頃だったが、あまりに手狭だった。


(今は良くても、これから家族と再会することを考えると、確実に手狭になるよなぁ)


次に見た石造りの家は月金貨十二枚。条件に近かったが、隣の農家が目と鼻の先にあった。


「……周囲に家がありすぎますね。これでは静かに暮らすのは難しそうです」


カケルはそう言って、家から出た煙突の煙を眺めていた。


そして今日、三件目の物件もまた、彼の将来設計という基準から外れた。


「どうしよう……。家が見つからないよ、ワサビ君……」


カケルが情けない声を漏らしても、隣のワサビ君は我関せずといった様子できょろきょろと辺りを眺めている。


結局、収穫がないまま不動産ギルドを後にしたカケルは、中央広場まで戻ってきた。噴水の周りには昼食を取る市民や休憩中の冒険者が溢れ、街は昼下がりの賑わいを見せている。


カケルは広場の縁にある石造りのベンチに腰を下ろし、小さくため息をついた。


(家が見つからなきゃ、宿暮らしのままになっちゃうよな……。それは避けたいけど…どうしよう)


その時、背後から聞き覚えのある声が響いた。


「おや、あんたはあの時の……カケルさん……だったか?」


振り返ると、そこには見覚えのある顔があった。以前、大量発生したギガ・フライの討伐を依頼してきた、あのおじさんだった。


「……あ、お久しぶりです。その節はお世話になりました」


カケルが立ち上がって丁寧に頭を下げると、おじさんは上機嫌にガハハと笑いながら歩み寄ってきた。


「いやいや、礼を言うのはこっちの方だよ。魔物がいなくなったおかげで、あの廃屋をようやく手入れできるようになってな。これで病気をまき散らされる心配もなくなったし、あんたに退治してもらった後、すぐきれいに補修もしたんだ。……ところで、こんなところで浮かない顔をしてどうしたんだ?」


カケルは苦笑いしながら、拠点となる家がなかなか見つからない事情を話した。すると、おじさんはポンと手を打った。


「なんだ、それならちょうどいい! あの廃屋、もし良ければあんたに貸してやろうか?」


「ええっ……あの場所を、ですか?」


「ああ。ボロいうえに市場と離れていて周囲に家もないから借り手がいなくてな。あんたには恩があるし、格安で貸すよ。家賃はそうだな……月に金貨二枚でどうだ?」


月金貨二枚。不動産ギルドで見てきたどの物件よりも、破格の安値だ。


「金貨、二枚……。本当に、いいんですか!?」


「ああ、あんたなら綺麗に遣ってくれそうだしな。周囲に家もないし、召喚獣たちを出すのも気にならないだろう?」


カケルは静かに息を吐いた。あそこなら周囲の目も気にならず、貯金のペースを落とすこともない。広さもそれなりにあった。何より、一度は自分たちが守り抜いた場所だ。


(ボロいとは言っても、掃除や補修もされているんだから、工夫次第で住めるはずだ。維持費を考えても、この家賃なら十分すぎる)


「……分かりました。ぜひ、借りさせてください」


カケルは迷うことなく、おじさんの差し出した手を取り、力強く握り返した。


まともな家探しは意外な形での再会によって終わりを告げた。思い出の詰まったあの廃屋へと、カケルは新たな一歩を踏み出した。

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