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前世のペットを召喚できる俺、どの子もこの世界では規格外でした ~レベル解放で家族が増える召喚士~  作者: いたちのこてつ


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第12話 懐かしき新居

「いやあ、改めてよろしくな。カケルさん」


そう言って笑うガレンに連れられ、カケルとワサビ君は王都の外縁、かつてギガ・フライを討伐したあの場所へと向かっていた。


契約は至極あっさりと済んだ。ガレンは市場で手広く建材を扱っている商人らしく、この物件も元々は倉庫か何かとして管理していたものだという。


「ここだ。魔物を追い払ってもらった後、すぐにうちの若い衆を突っ込んでな。あいつらが出す体液は放っておくと病気の元になるし、また穴から侵入されてもたまらねえからな。急ぎで壁の穴を塞いで、床も最低限張り替えさせたところだ。数日での突貫工事だからボロいのは変わりないが、雨風はしのげるはずだぞ」


討伐の時は蜘蛛の巣と埃にまみれた「廃屋」にしか見えなかったが、今こうして見ると、手入れの行き届いた「家」としての輪郭を取り戻している。


「……ありがとうございます、ガレンさん。これなら十分すぎます」


「がっはは! 礼を言うのはこっちだ。それじゃあ、鍵を渡しておくぞ。何か困ったことがあったら、広場の掲示板かギルドを通して連絡してくれ」


ガレンが去った後、カケルはワサビ君を連れて、新居の扉を開け、中へと足を踏み進めた。


一階に足を踏み出すごとに、ギィ、と床板が小さく鳴る。その音を聞いた瞬間、カケルの胸の中に奇妙な既視感が広がった。


(……ああ、なんだか覚えがあるな、この感じ)


新築の輝きはない。むしろ、長い年月を経て建物の芯にまで染み付いた、古い木材と埃が入り混じったような匂い。カケルは家の中をゆっくりと見て回った。


一階には広めの居間と、奥に簡素な台所。二階へ続く階段は急で、手すりは少しガタついている。窓枠は木製で、建付けが悪いのか少し隙間風が入ってくるが、それさえもどこか愛おしい。


(日本で暮らしていた時に借りていた、築四十年の賃貸戸建てをちょっと思い出すな……)


あの家も、冬は寒くて夏は暑かった。歩く場所によっては床が沈み、雨が降れば独特の湿った木の香りが漂った。不便なところも多かったけれど、たくさんの家族とともに暮らせたあの家を、カケルはすごく気に入っていたのだ。


この世界で家探しに奔走した今のカケルには、ワサビ君たちと気兼ねなく過ごせるこの場所が、何よりも贅沢に感じられた。


「ワサビ君、ここが今日からの俺たちの家だ。……広さは十分すぎるな」


ワサビ君は、左右の目を別々にキョロキョロと動かして周囲を観察している。スローモーションのような独特の足取りで慎重に床を進み、時折、新しい環境に落ち着かないのか体色を微妙に変化させていた。


「茶渋、おいで。ここが新しい家だよ」


カケルが呼びかけると、淡い光が収まるより早く、猫の姿をした茶渋が弾丸のような勢いで彼の胸元へと飛び込んできた。


「うおっ……!」


不意を突かれたカケルは、危うく後ろに倒れそうになる。茶渋はカケルの首筋に顔を強く擦りつけ、耳元で響くほど大きな音でゴロゴロと喉を鳴らした。さらに、前足でカケルの服を交互に「ふみふみ」と力強くこねながら、再会の喜びを全身でぶつけていた。


どうやら彼女にとって、新しい家の間取りや設備など二の次らしい。カケルの腕の中に収まっていられることこそが、彼女にとっての「家」なのだ。


カケルはしばらく彼女の熱烈な歓迎を受け止めていたが、これから始まる大掃除や買い出しの予定を思い出し、一度茶渋に戻ってもらうことにした。二匹を同時に維持し続けるのは今の魔力でも一日程度なら問題ないが、甘えん坊の彼女がいては、埃の舞う掃除や人混みでの買い物に支障が出るかもしれない。


「ごめんな、茶渋。お披露目はここまでだ。これから掃除と買い出しに行くから、一度戻っててくれ」


茶渋はカケルの言葉を理解したのか、不満げに「ミャァ……」と細い声を漏らし、さらに強く抱きついてきた。離れたくないという意思表示なのだろうが、カケルは苦笑しながら彼女の眉間を優しく撫でる。


「また夜に呼ぶから。約束だ」


何度も言い聞かせると、茶渋はようやく納得したように一度だけカケルの頬を舐め、光の粒となって消えていった。


「さて……まずは掃除の仕上げだな」


カケルは意気込んで腕を捲り上げたが、ふと動きを止めた。


「……待てよ。掃除道具が、何もないな」


家の中を見渡しても、箒一本、雑巾一枚すら落ちていない。


今のカケルの持ち物といえば、日本から着てきたパーカーとジーンズ、それに使い古した財布だけだ。財布の中には、先ほど受け取った薬草採取の報酬と、これまでに稼いだわずかな銀貨が入っている。


だが、掃除道具や調理器具、寝具まで揃えるとなると、今の持ち合わせだけではとても足りない。


「ワサビ君、悪い。買い出しの前に一度ギルドへ寄ろう。家が決まった報告もしなきゃいけないし、何より、預けておいた金を引き出してこないと市場へ行っても何も買えないからな」


カケルは心許ない中身の財布を軽く叩き、肩の上の相棒に苦笑いを見せると、まずは生活の拠点を正式に登録し、蓄えを回収するためにギルドへと向かうべく扉に手をかけた。

執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


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