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俺が強すぎて人生ハードモード  作者: 雨宮悠理
Phase3 動乱の学園
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激闘の果てに

 ──静寂が訪れた。


 瓦礫が転がる学園の中庭。その中心に、二人の男が倒れている。


 一人は、全身ズタズタになったアレク。


 そしてもう一人は、彼を打倒した淡海マヒロ。


 マヒロは息を荒くしながら、力なく地面に倒れ込んだ。全身が鉛のように重い。さっきまで動かせていた拳が、まるで自分のものではないかのように感じる。


 だが──勝ったのだ。


 イザヤが命を懸けて縛ったアレクを、最後の力を振り絞って打ち倒した。


「マヒロ!!」


 仲間たちが駆け寄る。


 キョウゴが倒れ込んだマヒロを支え、カイが肩を貸す。ルナも必死に手を伸ばし、マヒロの顔を覗き込んだ。


「おい、立てるか!? しっかりしろ!」


「……ああ、なんとか……」


 声を出すだけで喉が焼けつくようだった。それでも、マヒロは弱々しく笑った。


 しかし──


 ザリ……


 小さな音が、場の空気を一瞬にして凍らせた。


 仲間たちが振り向く。


 そこには──まだ立ち上がろうとするアレクの姿があった。


「なっ……!?」


 キョウゴが驚愕する。


 アレクの顔は血にまみれ、膝は震えていた。

 それでも、彼は諦めていなかった。


「……まだだ……終わらせねぇ……」


 ゆっくりと、一歩ずつ歩み寄るアレク。


 そして、マヒロを見下ろし、最後の力を振り絞るように拳を握り込む。


「──これで終わりだ、淡海マヒロ」


 誰もが息を呑んだ。


 マヒロは今、動けない。

 キョウゴもカイもルナも、もう限界を超えていた。


 誰も、止められない──そう思われたその瞬間。


◇◆◇◆◇


「もう十分だろう」


 ──その声は、至極落ち着いていた。


 スーツに身を包み、整った黒髪を撫でつけた男。

 知的な眼鏡をかけた彼は、あくまで穏やかな笑みを浮かべていた。


「七神……さん!?」


 マヒロが驚愕する。


 アレクの足が止まる。


 そのまま、膝から崩れ落ちた。


 まるで糸が切れた操り人形のように、力なく倒れるアレク。


 静寂。


 学園に満ちていた圧倒的な殺気が、まるで嘘のように消え去った。


「よくやったね、君たち」


 七神アキトは、にこやかに微笑んだ。


 その言葉は、場の空気を決定的に変えた。


「まさか、こんな事態になっているとは思わなかったよ。最後まで戦ってくれて本当に助かった。ありがとう」


 まるで親しい部下を労う上司のように、彼はマヒロたちを見渡した。


 ──そして。


 黒いスーツに身を包んだ人間たちが、次々と学園へと入ってくる。


「っ……!?」


 カイが驚きの声を上げた。


 それは、国家機関の特殊部隊。


 武装した兵士たちが、アレクの部下たちを次々と取り押さえていく。


 七神は微笑を崩さず、淡々と答えた。


「遅くなって本当に申し訳なかった。だけど、君たちの能力の素晴らしさを再確認できた。結果は申し分ないよ」


 その言葉に、マヒロの拳が震えた。


「……七神さん、すみません」


 彼は口を開いた。


「俺たちは誰も犠牲にはなりませんでした。でも……無関係な生徒が山ほど犠牲になってしまったんです」


 マヒロの顔に、痛ましい後悔が浮かぶ。


 七神は、優しく微笑んだ。


「気にすることはない。君たちは最善を尽くした。それでいいんだよ」


 七神は、崩れ落ちたアレクへと歩み寄る。


「残念だったね。どうやら、君達の目的は果たせないようだ」


 七神の言葉に、アレクは苦しげに顔を上げた。


「……お前みたいな人間がいるから、俺たちは奮起したんだ……」


 その瞳には、怒りと、悔しさと、そして──ほんの僅かな哀しみが滲んでいた。


「……あいつらをどうする気だ? 利用できなくなったら、また捨てるのか?」


 七神は、アレクの顔にそっと顔を近づけた。


 そして、マヒロたちには聞こえない声で、静かに囁いた。


「お前たちと彼らは違うんだ」


 七神は冷酷に微笑んだ。


「彼らが僕についた時点で、僕の勝ちは決まったようなものだよ」


「……貴様ッ!!」


 アレクが叫んだ、その瞬間だった。


◇◆◇◆◇


 ──時間が、巻き戻る。


 学園の崩壊した校舎が元に戻り、破壊された瓦礫が空中で組み上がる。


 傷ついた生徒たちが、次々と元の状態へと戻っていく。


 ──まるで、この戦いが最初から“なかった”かのように。


 七神アキトのタイタニア能力──「クロノス」が発動した。


◇◆◇◆◇


「──ハッ!!」


 マヒロは、息を切らしながら目を覚ました。


 ……そこは、いつもの学園だった。


 教室には、何も知らない生徒たちが談笑している。隣の席は空席で、ルナはいなかった。


「おい、カイ!」


 マヒロは食い気味に尋ねた。


「アレクは!? 戦いはどうなったんだ!?」


「……アレク? 誰だそりゃ?」


 カイは訝しげに首を傾げる。


 マヒロの心臓が、一気に冷えた。


「……サクラは!? どこにいる!?」


 マヒロは教室を飛び出し、サクラのクラスへ向かう。


 ──だが、誰も彼女のことを覚えていなかった。


 サクラの席すら、最初から存在しなかったかのように、誰の記憶にもなかった。


◇◆◇◆◇


 マヒロは絶望し、校門へ向かう。


 ──そこで、彼女が立っていた。


 月瀬ルナ。


「ルナ……?」


 彼女は、マヒロをまっすぐに見つめた。


 そして、静かに言った。


「淡海さん、サクラさんを私達で取り戻しに行きましょう」


 マヒロは目を見開く。


 そして、僅かに口元を歪め、静かに答えた。


「……ああ」


 ──そして二人は、サクラを救うために歩き出した。

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ここまでお読み頂きありがとうございました!

常に応援して頂けて、毎回のモチベーションとなり連載を続けてこれました。

とてもとても感謝しております。

この話は一旦ここで区切りを付けますが、これまでの話をもっと手直しを加えた上で、いつか続きを執筆再開したいと考えてます!

これからも色々なお話を書いていきたいと思っていますので、これからも宜しくお願いします!

ありがとうございました。 雨宮悠理

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