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今回の任務は四森共和国からの依頼が始まりだった。
内容は拉致された共和国の要人を奪還して欲しいというものだ。拉致した反政府の者たちはまだ共和国の一つである嶺国から出ておらず、要人もそこにいるという。理由はわからないが、要人を拉致した反政府の者たちは嶺国王族の所有している城を占拠し、そこで籠城しているということだった。だが長時間そこにいるわけではないだろう。それが共和国と無月の里の意見だ。何かが終われば、そこから隣国に逃げるつもりなのだろうと予想している。
四森共和国の依頼に対して、無月の里はすぐに仕事を受理し、部隊の派遣を行った。
四日前に通常の部隊を嶺国に入れており、本来であれば問題なく、すでに終了していてもおかしくない仕事のはずだった。
冬至が所属している部門など、窓口の者たちの頭に浮かぶことなどないほどの簡単な仕事のはずだった。
それが二日前に急遽変更となった。
部隊から救援を求める声が届いたのだ。すでに二名死亡していると告げた。それと同時に調べた際には出てこなかった敵の名前が挙がった。
「セイケの忍びがいる」
言葉を聞いた者たちは、理解できた者と出来なかった者に分かれた。顔には出さないが、一瞬だけ動いた目がどちらかを示していた。
理解した者はすぐに里長である無月に連絡をするように告げ、無月の指示を待つ体勢と、部下たちへの短い連絡を取った。
理解できなかった者は「セイケの忍び」を調べるために里の情報を管理している部門へと向かう者と、無月を待つ者とに分かれた。
冬至はたまたまその場に居たため、部屋を出ずにその場に残った。どうせ今、この内容を聞かなかったことにして外へ出たとしても、すぐに隣に立っている部隊長に呼び出されるのだ。出来るだけ非効率なことは避けたい。ちらりと隣の男を見ると、男は面白そうに冬至を見ていた。