八話 友達申請?
僕が誕生してからもう三年の年月が流れた。
僕は順調にすくすくと育ち、父さんや母さんと一緒なら外に出かけてもいいという許可がやっと出た。
自分で言うのもアレなんだけど、自宅の庭を駆け回る程のわんぱくぶりだ。
言葉も話せるようになったし、読み書きは『叡智閲覧項』により、父さん母さんに教えてもらうまでもなく習得出来る。
しかし、あまり不自然がないように両親に教わりながら『叡智閲覧項』の同時使用という二度手間で急速に文字を習得中だ。
習得ペースが早過ぎて自分でもやっぱり怪しい成長速度だと思うけど、どうやら両親は僕自身の魔導書の恩恵だと感じているらしい。魔導書には様々な恩恵があるらしいからな。
学ぶ為の機関も存在するらしいが、お金が沢山必要だし、入学出来る年齢が六歳以上ということで、僕はまだ自宅学習だ。
三年経った今でも両親の愛情は衰えていない。むしろ増加傾向にあるんだよなぁ。この前なんて父さん僕の頬に口付けようとしてたんだよ。イケメンでも男からの口付けなんていらん。
僕の家は木造二階建てで家族三人で住むには少し広いくらいで、僕は既に両親の寝室の隣に自室を与えられている。
だが、毎夜隣からの物音を聞いてると、もうすぐ弟か妹が出来そうな気がしてならない。
まぁ、そんなこんなで僕も日々努力してきたという事だ。
『よし、相棒。今日の鍛錬の成果を見せてみな』
最近の日課で、僕の相本ステインとともに自室で毎夜のステータス確認をするようになった。
僕は『従魔の書』であるステインの表紙を捲る、相変わらず一ページもない本とも呼べないような姿だ。
自身のステータス欄を見てみると……
ユキト=サンフォード
種族 人間(聖人) Lv1
職業 なし
魔書 『従魔の書』
属性 白 黒 聖
体力 190
魔力 2160
敏捷 200
知力 測定不能 『叡智閲覧項』による補正。
防御 90
「ど、どうだろうステイン?」
『そうだな……。まぁ、最初の時よりは全然上がってるからまぁ良しとするか』
「うーん、イマイチ実感わかないや。ステイン、また父さんのステータス呼び出して」
『見比べるのか?』
「うん。やっぱり自分がどの程度か知りたくて……」
『わかった。ちょっと待ってろ……。―――呼び出したぞ、ホレ』
僕は目の前の空中に現れた、半透明なパネルに表記された父さんのステータスをみる。
シュラ=サンフォード
種族 人間 Lv86
職業 勇者
魔書 『友好の書』
属性 赤 青 緑 黄 白
体力 1780
魔力 1480
敏捷 510
知力 510
防御 1680
従魔 スノーウルフ 個体名『シロ』
『もう魔力はシュラを越えているな。相棒は俺様が天界から引っ張り出してきた魔力上昇修行法と俺様の恩恵である【魔力成長】のおかげだな。もう既に魔力は魔法専門職並だ。誇っていいと思うぞ』
「そうかな? でももっと魔力を上げる必要があるんだよね?」
『当たり前だ。俺様の力を使いこなすためには魔王クラスの魔力でも足りねぇくらいだ』
「魔王って……。ちなみに魔王ってこの世界にいたりするの?」
『あぁ、魔王って言っても様々な要素でそう呼ばれる場合があるからな。まぁ、今世の勇者と同じでそれなりにはいるんじゃねぇかな』
「複数いるってことかな?」
『まぁ、言わば称号みてーなものだからな。いつの間にか職業欄に『魔王』って表記されたりしてな!? ハッハッハーッ!!』
「魔力がバケモノすぎて魔王って言うのももしかしたら、有り得るかもね……」
僕らはまだまだ修行中だけど、いつかはステインを使いこなすために魔王クラスを目指すって言うのも新たな目標だ。
僕はステータス確認を終えると、今度こそ就寝するために布団の中に潜り込んだのだった。
ある日、僕が家の近所にある川の辺で魔力制御の修行を行っていると、複数の足音が近付いてくる音が聞こえてきた。修行中は目を瞑っているので、聴覚をつかって気配を察知する修行にもなる。
その複数の足音は僕の方へ真っ直ぐ来ると、僕の目前で止まった。
何をするんだろうと思っていると、声を掛けられた。
「ねぇあなた、サンフォードさんの家の子供よね?」
幼い少女の声だった。声をした方へ目を開いて視線を向けると、そこには今の僕と同じ歳くらいの少年一人と少女が二人立っていた。
少女達二人は成長したら間違いなく母さんのような誰もが羨むほどの美人になることを予感させるような顔立ちをしている。
僕に声をかけてきた女の子は、穢を知らないどこまでも漆黒な黒い髪を腰まで伸ばしたストレートヘアで、日本人という顔立ちではないのにどこか親近感を覚える美少女だった。
もう一人の女の子は、ビクビクと怯えながら黒髪の女の子の後ろでこっちを覗き込んでいる。
この娘はライトブラウンの髪を肩口までのショートヘアにしていて、全体的な挙動や容姿を見ても小動物系美少女と言った感じだ。
男の子の方も、将来は周りの女性達がほっとかないだろうと思える調った顔立ちだ。この子は火焔のような赤髪とどこか冷めたクールな表情が相まって三歳児なのに不思議な感じがした。
黒髪の少女の御用向きは僕らしい。何故僕に声を掛けてきたかは知らないけど、とりあえず普通に応答しておく。
「うん、僕がユキト=サンフォードだよ? えっと……、君たちは?」
僕が問うと、黒髪の少女が答えた。
「あ、しつれいしたわね。わたしはカレン=カタトロフ。この辺あたりを治めるへんきょうはくの長女よ!」
バァァァン! という効果音が付きそうな程に堂々と言い放った黒い髪の美少女。
僕はイマイチ状況が飲み込めないんだが……。
「あなたを、わたしたちのお友達にしてあげるわ!」
そう言って、彼女はドヤ顔とともに上からの物言いで友達申請をしてきたのだった。
何か誤字等がありましたら、ご指摘のほどお願い致します。