不器用男子の長い初恋(1)
今回はバレー部の主砲、輝星くんの話です!
もう一度、彼女に会いたかった。
長い間探したが、見つけられなかった彼女を。
数年後、ようやく再会できた彼女は…
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俺…綾瀬 輝星は小学校のバレーボールクラブの帰り、寄り道をして隣町にまで来ていた。
理由は…言いたくない。
周りに誰もいない場所を探す。とにかく今は1人になりたい。
狭い道の塀にもたれて座る。体育座りをして、膝の間に顔を埋める。
(…疲れた。)
「うわっ!どうしたの?」
斜め上から聞こえる声。俺は顔を上げる。
自分と同じ、小学生位の少女が驚いた表情で俺を見ていた。
「…何でもない。」
そう言う俺に、少女は「いやいやいやいや…」と言いながら近付き、隣に座る。
「道端で体育座りしているやつが何でも無いって事は無いでしょ!良かったら話し聞くよ?」
「…何で知らない奴に言わないといけないんだよ。」
「知らない奴の方が話しやすいこともあるじゃん!ほら!カモンカモン!」
(…何だこいつ…)
そう思いつつも、俺はポツポツ話し出した。
なんだかんだで、誰かに聞いてもらいたかったのかもしれない。
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「成る程、自分がデカいだけでメンバーに選ばれたって陰口を言われたと。」
「…俺だって練習頑張ってるのに。」
俺は益々顔を埋める。すると、少女はうんうんと頷き出した。
「出る杭は打たれるってやつだよね。分かるよ。」
「…何が分かるってんだよ。」
つい、悪態をつく。
少女は鞄から1枚の紙を出した。
「…ねえねえ、これ見てくれる?」
絵の具で描かれた絵だ。いやこれ…
「…上手っ」
「でしょーっ!上手いよね!私凄くない?」
「…あんたが描いたんだ。」
「そうそう!ここまで描けるようになるのにいっぱい頑張ったんだ!で!この前賞取ったんだ!」
「…すげーな。」
「うん!そしたら同じ美術教室に通ってる子にめちゃくちゃ陰口言われたんだ!」
「…は?」
突然の話に、俺の思考が止まる。
少女は話を続ける。
「先生に媚びを売ってるとか、高価な道具を使っててずるいとか、親が偉い人と仲良しとか…色々!」
「…」
「まあ、私と仲が良い子は相手にしてなかったけどね。…言った子も仲良かったんだけどね。」
そう言う少女は、笑顔を見せながらも、寂しい表情をしていた。
…同じだ。
俺の陰口を言ったやつも、俺にとっては仲の良い友達だった。
言葉に詰まる。
「…俺は、こういう時、何て言えば良いか分からない。」
俺が呟いたように話すと、少女は驚いた表情で両手を振りだした。
「良いの良いの!私が話したかっただけだから!…って!君の話を聞く状況だったのに!ごめん!」
そう言って謝る彼女に、俺はつい笑ってしまった。
「別に良いよ。ちょっとスッキリしたし。」
「え?本当?なら良かった!」
そう言って安堵する彼女。実際に俺の気持ちは少し晴れた。
自分と似たような経験を経てもなお、俺の話を聞いてくれる強い彼女を見て、前を向けるようになった。
(いつまでもくよくよしていられない。)
そう思っていると、彼女は急に「そうだ!」と言って立ち上がった。
「またしんどくなったらここに来なよ。運良く会えたらまた話を聞いたげる!」
そう言ってニカッと笑う彼女。
「…分かった。」
俺がそう答えると、彼女の笑顔はより眩しくなった。
「決まりね!じゃ!また会えたら良いね!」
「…おう。」
そう言って俺達は別れた。
(…頑張るか。)
その後、俺は小学校、中学校で頼れる仲間と共にバレーに励んだ。たまに陰口を言われる時もあったが、あの時のことを糧に努力し続けていった。
たまに約束の場所に行くこともあったが、結局彼女には会えなかった。
中学で活躍し、公立ながら県内の強豪である藍丹高校へと進学した。
そして入学して少しした後…
運命の出会いを経験する。
遂に、彼女に会うことが出来た。
出来たのだが…
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「…まさか、応援団の1部になっているとは…!」
そう言って頭を抱える俺。
「いや面白!」
そうやって笑うのは幼少期からの友人、志田 悠希。
今日はホワイトデーが過ぎてすぐの休日、家の近くの公園でトレーニングをしているところに、たまたま悠希と悠希の彼女である淡倉 光咲に出くわし、話をすることになった。
ホワイトデーの前に軽く話していたが、個人名とエピソードを他人に話すのはこれで2人目、3人目だ。因みに1人目は以前何も言ってない俺の気になる人を当てた海斗だ。
「…て言うか麻里佳、そんなことしていたんだね。…言いたい!」
そう言ってケラケラ笑う淡倉。
そうだ。俺の気になる人とは佐々木 麻里佳さん。淡倉とは美術部の友人だ。
「言うな絶対!」
ケラケラ笑う淡倉に俺は言う。
「俺から言うから…でしょ?で、いつ言うの?」
…痛いところを突かれた。
話そうとは思っていた。あの日のお礼を言うために。
ただ…2人で会話できる機会が無い。そもそも、2人きりの状態にすることも出来ない。
彼女は俺の1ファンみたいな感じになってるから、常に周りに誰かがいる状態だ。
そんな場面で彼女だけに話し掛けるのはかなり勇気がいる。
「ホワイトデーでちゃんとお返しするって言ってたじゃん。その時には言わなかったのか?」
「いや…だから直接渡したんだ。他の人とは違うやつ…」
悠希の質問に俺は答える。
「へえ?どんなの?」
「他の人にはチョコだけだったんだが、彼女にはクッキーを追加したんだ。それと、直接手渡しした。」
「…」
「…」
2人が急に黙る。
「?どうしたんだ?2人とも。」
「おまえはバカなのか?」
「な、なんだいきなり!」
悠希のあんまりな言いように俺は憤慨する。
すると、淡倉が会話に入ってきた。
「ねえ綾瀬。麻里佳は他の人がもらったお返しを見たの?」
「いや、そんなことはしないだろう。」
何を言っているんだ?仲の良い友人ならともかく、他人のものなんて見たりしないだろう。
「じゃあ違うかどうかなんてわからないじゃん!」
「…!」
淡倉の言葉を聞いて俺は目から鱗が落ちた気分になった。比べる相手がいなければ気付きようが無いじゃないか!
「え、今気付いたの?マジ?」
悠希が驚愕の表情で俺を見る。
「ああ。言われてみればそうだな。」
2人は絶句している。
「…悠希、俺そんなにヤバいのか?」
「今自覚したのが余計にヤバい。」
「そうか…」
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悠希達と別れ、俺は再びトレーニングを始める。
(あの日の俺のことを認知してもらうにはどうすれば良いんだ…)
一番手っ取り早いのは自分から言うこと。ただ、その状況を作れないのが現状だ。
(いざという時は淡倉を頼るか。)
そうだ。佐々木さんと仲が良い淡倉に協力を仰げば、上手いこと2人きりにしてもらえるかも知れない。
…何でそれをさっき思い付かなかったんだ。
ひと通りトレーニングを終えて、クールダウンのために公園の外周を軽く走る。
ふと思った。
2人きりになって、俺は何を話したいんだ?
いや、俺があの時のデカいやつだと伝えるんだけど…
その後は?
そうだ。伝えたからなんだってんだ。
(…俺は何をしたいんだ…?)
走りながら考える。
(…わかんねえ!)
そう思いながら、俺はクールダウンにもかかわらず勢い良く走り出すのであった…
次へ続く!
自分の気持ちは意外とわかんないものですね。




