表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/36

真逆なふたりのお付き合い(優子編)(4)

優子ちゃんの話、第4話です。

「この度は、誠に申し訳ありませんでした。」


そう言って頭を下げるのは福谷さんと柳木さん…と、藍丹中の顧問の先生。


合宿が終わって2日後、3人は欧天中に訪問し、私に謝罪をした。


そして、藍丹中の顧問の先生は何故このようなことになったのかを話し始めた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



そもそも、何故福谷さんと柳木さんがどうしようもない怒りややるせなさを感じていたのか…


話を聞いてみると、理由は単純だった。


合宿の直前、たまたま職員室の近くを歩いていた2人は、顧問の話し声を部分的に聞き、そこから曲解してしまったとの事だ。


というのも、藍丹中サッカー部の2年生にかなりの問題児がいるらしく、顧問は2人の対応に苦労していた。


しかし、遂に問題児2人は大問題を引き起こしかけた。詳しくは知らないが、法に関わることらしい。


幸い、起こす前に止められたものの、学校は事態を重く受け止め、問題児2人は停学&退部となった。


その話を職員室でしていたようだったのだが、その話題と同時に福谷さんと柳木さんの話題が出たらしい。


顧問は、福谷さんと柳木さんの事をとても褒めていたのだが、2人にはそれぞれの話題の一部分しか聞き取れなかった。それがまずかった。


2人が聞こえたのは、1つ目の話題で出た「問題児2人」、「退部」の単語と2つ目の話題で出た「福谷」、「柳木」の単語。


2人とも負けん気がかなり強いため、たまに選手同士の衝突があったことも災いし、顧問が自分達を退部させようとしていると曲解してしまった。


…と言うことで、先日の合宿の出来事が起こったというわけだった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「顔を上げてください。」


私がそう言うと、3人はゆっくりと頭を上げる。福谷さんと柳木さんは少し不思議そうな表情をしている。


「確かに、2人のしたことは簡単に許されることではありませんが、情状酌量の余地は充分にあると思います。幸い、私は特に傷つけられてもいませんし。」


「じ…情状酌量って…本当に良い…ん、です、か?」


私の言葉に、驚いた表情で返すのは柳木さん。


「ええ。…とは言え、完全に無かったことにする、というのは流石に出来ませんが。」


「充分です…ありがとう…ございます…!」


そう言って3人は再び頭を下げた。


これで、今回の騒動は(とりあえず)一件落着となった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「つ…疲れました…!」


「お疲れ。大変だったね。」


そう言ってお茶を渡してきたのは、マネージャーの先輩である安城(あんじょう) 由美(ゆみ)さん。


「ありがとうございます。由美さん。」


「それにしても…優子ちゃんモテモテね。」


「…モテモテとは少し違う気がするんですけど…」


「ナンパされたら、愛しの彼が助けてくれたんでしょ?」


「いとっ…!ち、違います!」


私は全力で否定する。


しかし、由美さんはニヤニヤと笑いながら私に尋ねた。


「それで…彼とはどこまで進んだの?」


「…連絡先を…交換しました。」


「えっ?それだけ?」


「そ、それだけって…!今度一緒に勉強会もしますし!」


「えっ、初心(うぶ)っ!かわいっ!」


そう言って私を抱き締めて頭を撫でる由美さん。


「ちょ…!力…!強…!」


私はなす術無く頭を撫でられるのであった…



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



県の新人戦が終わった。我が欧天中は決勝で惜しくも藍丹中に敗れてしまった。


なんとかPK戦に持ち込んだものの、最後は地力の差を見せつけられた。


(…福谷さんと柳木さんがいたらもっとあっさり負けてたかもしれませんね…)


私は部活謹慎になっていた(らしい)2人を思い出す。


現時点では宍戸さん、大宅さんほどの脅威ではないものの、このまま成長すれば、間違いなく我が欧天中にとってとんでもない脅威になる。


謹慎明けに会った時、2人は憑き物が落ちたかのようにスッキリしていた。


その様子を見て私は思う。


…来年の藍丹中はとんでもない強さになるんじゃないか…と。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



…と、色々あったが、今日は勉強会の日だ。


そう、宍戸さんと大宅さんが私の家にやって来るのだ。


私がどこでしようかと悩んでいたところ、兄の志郎が「家で良いんじゃない?」と提案したのだ。


と言うわけで、私は自分の部屋にいるのだが…


(き、緊張する…!わ、私の部屋に宍戸さんが来るんだよね…!どうしよう…散らかってたりしてないかな?で、でも、もう時間がない!)


と、色々気になった結果…


「何で俺の部屋に来るんだよ。」


「だ、だって…色々気になってしまいましたし…」


「まあ、良いけど。俺も大学の課題があるから、あんまりうるさくはしないでよ。」


「わ、分かってますよ。」


その時、扉をノックする音が聞こえた。


「お嬢様、瀬田です。」


来たっ。私は慌てて髪を整える。


「瀬田?入ってちょうだい。」


私がそう答えて扉が開かれると、宍戸さんと大宅さんが緊張した面持ちで入ってきた。


「宍戸さん、大宅さん、お待ちしておりました。」


良し、とりあえず冷静さは保てている。後ろで兄がニヤついている気がするが気にしない。


「では、始めましょうか。」


「よ、よろしくお願いします!」


「よろしくお願いします。」


私がテキストを並べていると、宍戸さんと大宅さんは「どの教科からしようか?」と悩み始めた。


「英語にしましょうか。お2人とも苦手と聞きましたので。」


私が提案すると、2人は頷いた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「…ねえねえ、奥島さん、ここって…」


「ここの文の意味がこうなるので…」


「…!なるほど!ありがとう!」


「いえ。」


宍戸さんの問題が一段落し、ふと時計を見る。


「…もうこんな時間なんですね。」


「えっ。…本当だ!」


時計はもう19時を回っていた。昼過ぎに始めたのに、もうこんなに時間が経っていたのか…


「みんな真面目だなー…時間を忘れるまで勉強何て…まあ、お陰で俺も課題が捗ったけど。」


兄が伸びをしながら呟く。


「いやー…俺もここまで集中が持つとは思わなかったですよ。おく…優子さんの教え方が良かったんですよ。なあ?公徳!」


「ああ、そうだな。」


「そ、そんなことはありませんよ…でも、嬉しいです。」


そんなことはないと思いながらも、それはそれとして褒められるのは嬉しい。宍戸さんに褒められて、少し顔がにやけてしまう。


私がにやけるのを必死に我慢していると、兄が宍戸さんと大宅さんに話し掛けた。


「なあ、宍戸くん、大宅くん。もし良ければなんだけど、うちに泊まらないかい?もう遅い時間だし…」


「えっそんな!悪いですよ!」


「良いから良いから…俺の部屋広いし、3人だったら余裕で寝られるぞ!」


「いや、あの、そう言う問題じゃなくて…」


宍戸さんが慌てて話す…が、こうなったら兄は止まらないだろう。


それに、私自身も泊まってもらった方が都合が良い。ので、兄に助け船を出す。


「お兄様がこうなってしまっては誰も止められません。諦めましょう。」


この一言で、2人のお泊まりが決まった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



お風呂上がり、私は兄の部屋の前にいる。


ノックをするだけなのに、何故か緊張する。


(お兄様の部屋に入るだけ、そう、お兄様の部屋に入るだけ…!)


そう、お兄様の部屋に入るだけなのだ。決して宍戸さんのお風呂上がり姿を想像しているわけではない。決して。


私は深呼吸をして、兄の部屋の扉をノックした。


「お兄様、入りますね。」


「おー、優子。良いぞ。」


私が部屋に入ると、3人はテーブルを囲んで座っていた。3人ともお風呂上がりで、寝間着姿だ。


…寝間着姿も良いな。


…って、何を考えているのだ、私は。


断じて宍戸さんの寝間着姿に見惚れていたわけではない、断じて。


私は宍戸さんと兄の間に座る。そしてタブレットを取り出した。


「では、どの試合から語ります?」


メインイベントの始まりだ。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



夜中、ふと目が覚める。


(…トイレ。)


私は部屋を出ると、たまたま居合わせたメイドの夏織(かおり)と一緒にトイレに向かった。


暗いのが怖いわけではない。暗いと廊下が見えにくいからだ。本当だ。


「キャッ!」


2人で歩いていると、何か大きな物にぶつかった。


よく見ると、大きな物体は宍戸さんだった。恐らく宍戸さんもトイレだろう。


私が少し安心していると、宍戸さんが話し掛けてきた。


「どうしたの奥島さん?」


「…恐らく、宍戸さんと同じ目的です。」


私が宍戸さんにそう言うと、急にメイドの夏織が喋り出した。


「あ!申し訳ありません、お嬢様。私部屋に忘れ物をしてしまいましたので、お2人で向かってください!では!」


そう言って夏織は部屋へ走っていった。


…やったな。


沈黙が走る。宍戸さんは少し…いやかなり困惑している。


私は宍戸さんのシャツの裾を少し引っ張る。


「宍戸さん、まずは目的地へ行きましょう。」


割と限界だった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



スッキリした気持ちで廊下に出ると、宍戸さんが外の景色を見ていた。


「どうかしましたか?」


「ああ、あの山を見てたんだ。知ってる?あの山。」


「ええ、一応。幼稚園か小学校で登りますよね。」


「あ、奥島さんの所も?俺も小学校の遠足で登ったんだよ。そしたら、幼なじみの慶太ってやつがさ…」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~



宍戸さんの思い出話を聞いていると、宍戸さんがあくびをした。


今は深夜だ。早く寝なければ。


「では、おやすみなさい。」


私がそう言うと、宍戸さんは何かを思い出したかのように話し始めた。


「ねえ、映画見に行かない?」


「映画…ですか?」


「うん、あの実話のやつ。」


「あ!あれですか!」


「うん、試写会のチケットをもらったんだ。2枚。」


あのサッカーチームの話!いつか観たいなとは思っていたけど、まさか試写会のチケットを持っているなんて!


「行きましょう!」


「よし!じゃあ、また連絡するね。」


「ええ、よろしくお願いします。では、おやすみなさい。」


「う、うん。おやすみ。」


兄の部屋に向かった宍戸さんと別れ、私は自分の部屋に入り、ベッドに飛び込む。




瞬間、思った。




…これってデートってやつでは?




いや、デートではないかもしれない。


私は少し考える。


…デートだな。


…デート…!ついに…!


…ふふふ…


この後、デートで頭が一杯になった私は一睡もできず、寝不足で朝を向かえるのであった…




次へ続く!

優子ちゃんもう大分デレデレじゃない…?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ