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第5回

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)


**** 4-05 ****



「じゃ、ず、この部活に就いてだけど…。」


 智子は緒美が席に着くのを待って、話し始めた。


「…正直、今の所、開店休業中。二年、三年の先輩達は、みんな幽霊部員だしね。」


「どうして、そんな部活が存続してるんですか?」


「う~ん。わたしも今年、講師として赴任して来たばっかりだから、詳しい事情は良く知らないのよ。ごめんね。…それで、ここ数日、過去の活動とか、記録を調べてたんだけど。矢っ張り、大した活動はしてない様子なのよね。 そもそもは、本社が兵器とかに興味の有る人材に声を掛け易い様に、防衛装備事業向けのフィルター的な意味合いで、この部活が始まったらしいんだけど。」


「はぁ…。」


 緒美は、半ば呆れた様な相槌あいづちを返す。それを聞いた智子は、苦笑いをして見せるのみだった。


「過去の在籍者の中には、個人的に兵器に就いて研究していた人も居たみたいね。部活の予算で購入した、雑誌とか専門書とか、資料が沢山残ってるわ。 まぁ、兵器オタクが集まって、趣味の話で盛り上がってたサークルみたいな、そんな部活だったみたい。」


「それで、今現在は誰も活動してない、と。」


「そう。がっかりした?」


「いえ、それ程でも。良く分からない物に、過度な期待はしませんから。」


 発言の要旨に就いては予想外だったが、気持ちの良い緒美の回答を聞いて、智子は思わず微笑んだ。


「一つ、聞いていいかしら?鬼塚さん。」


なんでしょうか?」


「どうして『兵器開発部』に興味を? …普通、女の子が興味を持つ様な部活じゃないわよね。」


 緒美の表情は変わらなかったが、智子の問い掛けに、しばらくの間が有って、緒美は微笑み、少し視線を落とした。


「普通…ではないから、でしょうか。わたしが。」


「あなたも趣味の人、って事?」


「趣味…ではなかったですね。興味が有って研究しているのは事実ですけど。」


「趣味ではない興味…と言う事は、実用の為、と言う事になるけど。その研究って、どんな内容かしら?」


「あまり、他人ひとに話す様な事じゃないと思うんですけど…笑わずに、聞いて貰えますか?」


「あら、何だか深刻なお話みたいね。 うん、笑わないから聞かせてちょうだい。」


「実は…エイリアンに対抗出来る兵器に就いて、考えているんです。」


 この時、智子が普通の大人だったら、緒美の発言を聞いても「あなた、何、言ってるの?」と、一笑に付した事だろう。だが、智子は目の前の少女が再び発した予想外の言葉に、背筋がぞくぞくする様な、不思議な感覚を覚えていた。

 一方の緒美にしても、目の前の女性が自分の言葉を受け止めて呉れる様な、そんな不思議な予感が有ったからこそ、普段なら話さない、その事を口にしたのだった。そして、その言葉を聞いた智子の表情は、緒美の予感通り、嘲笑ではない、好意に満ちた微笑みに変わった。


「興味深いテーマだわ。もっと、詳しく聞きたいわね。」


 智子はテーブルに右肘を突き、右のてのひらの上に顎を乗せる様にして、身を乗り出し、そう言った。


「主に、米軍がネットで公表している戦闘レポートを中心に研究していたんですけど。現有の兵器体系では、有効に迎撃が出来ていない様なので…主に地上戦で、ですけど。エイリアン・ドローンの様な機動兵器に対抗するには、戦車や戦闘機の様な兵器では効率が悪いので、矢張り、同じ様な機動兵器の開発が必要なんじゃないかと…。」


「エイリアンのと同じ様な、戦闘用ドローン?」


「それが出来れば、理想的なんですけど。でも、今の技術では、あのサイズでエイリアンのと同等の戦闘用ドローンの開発は難しいし、コスト的にも合わないと思うんです。」


「そうね、出来るのなら、っくにどこかのメーカーが作ってるわよね。」


「はい。相手に合わせて、格闘戦での殴り合いに付き合う必要は無いとは思うんですけど、それでも、取り付かれても振り払える様な腕は必要だと思うんです。」


「と、言う事は、鬼塚さんはロボット兵器を考えているのかしら?」


「それも、選択肢の一つだと思いますけど、それよりもパワード・スーツ的な物の方が、より現実的だと考えています。」


 緒美の発言を聞いた智子は、心の中で膝を打つ心境だった。昨年まで、本社・企画部で智子達「HDG 検討チーム」が考えていた事とほぼ同じ事を、目の前の少女は一人で考えていたのである。そう思うと智子は、この不思議な巡り合わせに、目眩めまいがする様な感動すら覚えたのだ。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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