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第3回

第4話・立花 智子(タチバナ トモコ)


**** 4-03 ****



「兵器開発部の顧問を任されたんですけど、どの様に進めたら良いでしょうか?」


 単刀直入に、智子はたずねた。


「あぁ、キミが引き継いだのか、兵器開発部。どう言う部活かは、聞いてる?」


「本社での研修でも、そう言う部活が有るとは、聞いてはいたんですが。今一つ、良く解らなくて。まさか、それを受け持つ事になるとは、思っていませんでした。」


「ははは、いや、あれは良く分からん部活だよ、うん。…正直、ここ五年は、ほとんど活動らしい活動はしとらんからなぁ。」


 前園氏は、コーヒーの入った紙コップを口元へと運ぶ。コーヒーを一口飲み込んで、紙コップをテーブルへ戻すと、前園氏は話し始めた。


「アレはそもそもが、防衛装備事業向きの人材かどうかを判別する為のフィルターみたいな物でね。だから、元元がこれと言った活動はしてはなかったんだけどね。 昨年まで顧問だった原田君の代になってから、幽霊部員ばっかりになってしまったんだが~あ、それもね、或る意味仕方が無かったんだよ。彼、原田君も忙しかったからね。あの重徳シゲノリ先生の助手は、うちの学校の中じゃ、一二を争う激務だから。 流石に、部活の顧問まで手が回らなかったんだろうなぁ。」


「それで、今年から、比較的暇なわたしにお鉢が回って来た、と言う事ですか。」


「ははは、誤解を恐れずに言えば、まぁ、そう言う事になるなぁ。 ともあれ、今居る幽霊部員達に今年から何か活動をさせるのは無理だろうから、今年入って来る一年生で、あの部活に興味を持つ者がいたら、その子達が食い付きそうな、何か、テーマを与えてみたらいいんじゃないかな。 まぁ、無理に何かしなくても、あの枠の中で自発的に活動する者がいれば、それをサポートしてあげるくらいの気持ちでいたらいいと思うよ。余り、難しく考えなさんな。」


 結局、何をどうすればいいのか、具体的な助言は貰えないまま、前園氏の話は世間話へと移行してしまい、智子はその後三十分ほど談笑して前園氏とは分かれたのだった。

 その後に知った事だが、智子と共に赴任して来た男性社員二人は、兵器開発部の前顧問だった原田氏の後任として重徳先生の助手に任命されていたのだった。その重徳先生とは、専門教科の一つである工作実習の担当教員で、校内の実習工場で機械加工や工作機械の扱いを教えている人物である。重徳先生の実習授業の目的は、加工のスペシャリスト養成ではなく、設計の為の基礎知識として加工方法や工作機械の特性を知る事なのであるが、その授業の為には実習機器類の整備や、実習に使用する資材の管理や発注、実習で製作した工作品の精度測定等、実習の準備や評価に膨大な手間が掛かるのだった。その上、重徳先生は、その授業の凝り様が徹底しているのだと、校内でも有名な人物なのである。重徳先生が、実習授業にかこつけて「旧日本海軍の零式艦上戦闘機を三年掛けて製作した」と言う事例は、校内では語種かたりぐさになっている武勇伝であるが、この一件は「理事長がノリノリでバックアップしたから実現したのだ」との内情は、広くは知られていない事実だった。ただ、余りにも予算が掛かり過ぎた為に、同様の授業は流石に二度と行われていないのだが、くだんの零式戦は耐空証明まで取得しており、現在も飛行可能状態で飛行機部が管理しているのである。


 さて、それから二日後、入学式はとどこおりなく終了した。新学期が本格的に始まると、校内の雰囲気は益益ますます活気に満ち溢れていったのだが、それに相反あいはんして退屈していたのが智子だった。

 入学式の翌日、2070年4月4日金曜日。まだ当面、授業の予定が無い智子は、事務棟内に与えられていた居室で午前中を過ごしたのだが、半日が過ぎただけで彼女は思っていた。「退屈で死にそう」だと。


 智子はふと、携帯端末を取り出し、上司である小峰課長の携帯端末へ通話をリクエストしてみた。時間的には昼休みが終わる頃である。小峰課長は三回目のコールで通話に出た。


「あ、小峰課長、立花です。」


 携帯端末からは、久し振りに聞く、小峰課長の声が聞こえて来た。


「おぉ、立花君、久し振りだね。そっちの様子はどうだい?」


「どうも何も、夏頃まで授業の予定も無いので、暇で死にそうです。何か、こっちに回せる仕事とか、有りませんか?」


「無茶言わないで呉れよ~。まぁ、今まで忙しかった分、しばらく骨休みの積もりで、のんびりしてたら良いんじゃないかい。」


「そんな気分になれたら、課長に連絡なんてしてません。」


 智子は、ちから無く笑った。


「所で、HDG の検討チームの方は、その後、どうなってます?」


「あ~…アレはね、検討を依頼して来た防衛軍の方が興味を失ってる、って感じかなぁ~。 最近は、彼方あちらからのアクセスもほとんど無いしね。宙に浮いてる感じでね、こっち側の検討もキミが居た頃から、ほとんど進展が無いよ。」


「そうですか…。」と、智子が返事を言い終わる前に、小峰課長は言葉を続ける。


「HDG の検討チームはしばらく、活動休止になるかもな。この間から、事業統括部からのね、別の案件が入るとか話が出ててね。そっちで、人員を可成り取られそうなんだよ。あ~、すまんが、これからその絡みで会議なんだ。」


「あぁ、はい。お忙しいのに、すみませんでした。」


「いや、いいよ。じゃ、キミもそっちで頑張ってね。また、何か有ったら連絡して。じゃ、会議有るから。」


 そして、小峰課長との通話は切れた。

 智子は座っていた椅子に身体を預け、居室の天井を見詰めて、大きく息をいたのだった。

「取り敢えず、こうしていても始まらないわ」と、そう思った智子は、次に取るべき行動に思い至った。

 それは、『兵器開発部』の部室へと、行ってみる事だったのである。




- to be continued …-




※この作品は現時点で未完成で、制作途上の状態で公開しています。

※誤字脱字等の修正の他に、作品の記述や表現を予告無く書き換える事がありますので、予めご了承下さい。



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