自分の目的は何か考える
過去の街並みを知っているということは、そこに何があったかを知っているということ。
もちろん、全てそのままなはずもないが、闇雲に探すより、余程よいだろう。
薬を眺め放心しているリョウを眺める。
こんなもので驚いている彼女を、シェルターに連れていくことは、大丈夫なのだろうか。
万一、リョウからシェルターのことが漏れて、何者かに奪われることがあったとしたら。
それは、どういう結果になるか考える。
生き延びる為であれば、大きな損失だ。
捜索を続けるにしても拠点を失うことは、かなり痛い。
ただ、このまま旅立つのであれば、どうだろう。
どのみち、このままシェルターに居続ける気はなかった。
目的らしい目的はない。
ただ、自分と過去を共有できるであろう、二宮女史を探し、助けてくれた礼を述べる。
その後のことは、特に何もないのだ。
今の世界を見て回り、何かすべきことを見つけるかもしれない。
今は、おそらく楽しい世界ではないだろう。
元の世界でも、漠然と幸せを探していた気がする。
生きるということは、最後まで何かを探し続けることなのかもしれない。
食料と水、食塩をある程度持ち出して、何か有意義な取引ができればよい。
失ってしまったとしても、過去の遺物を探す作業で何とか身を立てることは出来そうに思う。
やはり、当初の予定の通り、リョウをシェルターに連れていき、情報を十分に得よう。
気が付くとリョウがこちらを見つめていた。
薬を返そうとしてくるが、看病の礼だと告げ、手を押し返す。
「ありがとう」
戸惑いながらも、笑顔で伝えてくるリョウは、可愛いらしく見えた。
シェルターへの道を思い返す。
周囲を警戒しながら、自分だけにしか見えない道をたどる。