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生きよう  Laboratory side

突然変異


生物やウイルスがもつ遺伝物質の変化。

遺伝子の塩基配列に物理的変化が生じることを遺伝子突然変異という。


人為的にそれを行い、新たな特性をもつ生物を作る。

ほんの僅かなバランスの崩れも許さぬ、人類未踏の業。


新しい生物の作成は、まさに神の御業ともいえる。


唯一それを成し遂げた科学者の名は『田中さとみ』

すでに彼女はこの世を去っている。


ただ、全てが失われたわけではない。


研究所に残る、過去の人類の英知の亡骸。

今は再現できぬ多くの技術や歴史を残した資料。


そして、30年という月日を全て注ぎ込んだ、『田中さとみ』の研究資料。

それは丁寧で優しい彼女の人柄により、几帳面に残されていた。


それを、いつも読んでいた少女がいた。


彼女の名はサクラ。今は亡き田中さとみのクローンの一人である。

彼女もまた、平凡な容姿と穏やかな性格をしている。


しかし、最も田中さとみの特徴を残していたのは、その知性である。


彼女は気が付いていた。


母の行いが、すでに取り返しのつかない状況に、世界を追い込んでいることを。

そして、それを止めることが出来るのは、自分だけであることを。



研究所では、食糧の増産を目的とし、牛舎や鶏舎が設けられている。

未だ規模は小さく、試験的な状況であるが、進捗は良好だ。


彼女は積極的に、その運営に取り組んでいた。

常に動物と触れ合う姿を、周りの者は微笑ましく受け止めていた。


牛舎で働き続けて出来た、水泡のできた両手を見つめて呟く。


「私が終わりにするの」


彼女の呟きの意味を知る者は誰もいない。


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