死闘 7
何処にでもあるような、1輪の猫車押しながら、シェルターに向かう。
農作業用に使われているものだ。
身動きできないものを運搬するため、何かないかと話し合い持っていくことになった。
リクとユウタは肩を貸せば何とかなるかもしれないが、リツの状況がまずい。
恐らくは歩けないだろう。
老人たちでは、担ぐのも難しい。自分もようやく歩いているような状態だ。
また、何らかの襲撃を受けた際に、タケルの手が塞がることは避けたかった。
先の投石の件で、タケルも銃を使っており、弾は2発を残すのみ。
老人たちは、それぞれ使い慣れたナイフを携行している。
自分は、鉈を持ってきた。
標準のものより長く、手元を合わせると80センチ位ある。
先が潰れているものの、杖を兼ねてつかうのに丁度いいと考えていた。
先日の雨で、地面は濡れていたが、草が多いせいか泥濘はすくない。
シェルターまでは、難なくたどり着くことが出来た。
シェルターを開ける。
電動音がなり、周りに緊張が走る。
周囲を見渡すが、人影はなく、物音もしない。
入り口にタケルが残り、内部に入ることにする。
昨日の大柄なゴブリンがいるはずの位置を見る。獣にでも持っていかれたのだろうか。
記憶にある場所には、遺体はなかった。
扉を開くと、中には片手でナイフを構え、悲壮な顔のユカリの姿が見える。
こちらの顔が見えると、力が抜けたようにへたり込んだ。
抱き起こして、伝える。
「またせたね」
ユカリは、何も答えず、強く抱きしめ返した。
老人たちが、大げさな咳ばらいをし、苦笑しながら奥へ進む。
リツ達の様子は、あまり変化はない。
悪化していないだけ、良いのかもしれない。
リクとユウタは、老人たちに肩を借りて、なんとか歩ける状態。
リツは意識はあるが、自力では動けそうにない。
リクとユウタを先に外にだして、最後にリツを運ぶ。
シェルターを閉め、町へ戻る。
行きの何倍も時間をかけながらであるが、何とか町の近くまで戻れた。
運よく、何にも出会うことはなかった。
もうすぐ町が見えるだろう辺り、木の根や草が邪魔をして、リツを運ぶことに手間取っていると、町のほうから、怒声が聞こえる。
おそらく、会話をしているようで、野盗ではないのだろう。
老人の一人が先行し、様子を見ることになった。
戻ってきた老人は、いままでの飄々とした態度ではなく、緊張した面持ちである。
「まずいものが来てしまった。どうも、他所の町から人が流れてきたようだ。」
リツ達を木陰に残し、老人たちと状況の確認に向かう。
タケルとユカリが残り、リツ達を守る。
町の門近く、数名の男性が大きな声で話している。
いや、怒鳴っているといったほうがいいだろうか。
「どうして中に入れないんだっ」
「お前たちに人の心はないのかっ」
5名の男性が門の前におり、距離を置いて男性が1人、女性や子供が数人見える。
門の上には武装したカイ達がおり、詫びながら去るように促していた。
彼らの足元には、町から供出されたであろう、食物がある。
しかし、それらには目もくれていない。
今の町の状況では、かなり苦しいところから絞り出したものであろう。
しかし、彼らは納得していないようだ。
同じく木陰で様子を伺っていた、老人が話す。
「まずいな・・あいつ等、もう手を出しかねん。」
興奮した男性たちは、銃や鈍器を構え、口々に罵声を浴びせている。
状況は一触即発と思えた。
「とにかくコウはタケルに伝えてこい」
話をうけて、タケルのもとに向かった。




