死闘 4
呆然とし、酒場を去る人達を見送る。
カイと目が合うが、伏して去っていく。
両手を見つめ、出来ることを探す。
足は腫れ、立つことは出来ても、まともに動かない。
そのうち室内には、誰もいなくなった。
そういえば、リョウや子供達の姿は見えない。
どこかに避難しているのだろうか。
もう一度、手を見つめ、己に問い直す。
出来ることは、何かないのか。
武器は手斧だけ。体は動かない。
心は挫けかけている。今すぐユカリの元に行きたい。
ただ、もし無事にシェルターに着いたとして。
どう言えば良い。何をすれば良い。
手を見つめる、答えは出ない。無力さに、手が震える。
どのくらい、そうしていただろう。
いつの間にか、タケルが戻ってきて、こちらの顔をジッと見ている。
何でもないことのように、シェルターの場所を聞いてきた。
助けてもらえなくても、何か提案をもらえるかもしれない。
出来るだけ、詳細に伝える。
話すうち、普段は農作業をしている無口な老人達が4人、周りに座りだした。
彼らは、お互いの顔を見渡し、満足そうに頷きあっている。
タケルは、いつものように無精ひげをさすり、声を落として話す。
「それで、残っているのは、皆何歳くらいだ。」
研究所から来た、リク、ユウタ、リツ、それとユカリだ。
「20歳くらいが三人と、それとユカリです。」
そうか、そうかと皆頷き、顔を見あう。
「まぁ、十分だな。」とタケルがいい、皆の顔を見る。
「そうだ、十分だ。」と、老人たちは口々に返す。
何が十分なんだろう。
「さっきのは、あれだ。若い連中の手前、ああ言わなきゃいけない。」
どういうことだ。
「俺は女房を早くに無くして、子供もいない。」
・・・
「いい年まで生きた。」
・・・・
「まわりの小汚い爺どもも、みんな同じだ。」
・・・
「もう、十分生きた。」
・・・
「死んでも食い扶持が減るくらいで、喜ばれるかもしれないな。」
・・・
「俺達がいこう。明朝、向かうぞ。」
・・・
「リョウは連れていかん。年寄りだけだ。」
・・・
「わかるな。」
・・・
「今日は寝ておけ、少しでも体を休めろ。」
そう言って、頭をグシグシと撫でる。
周りの老人達は、それを見て笑っている。
老人たちは、一人ずつ軽口言いながら、肩を叩いていく。
「ユカリの母親は、そりゃ別嬪じゃった。」
「天国で口説くときに、いいネタになる。」
「あんたじゃ相手にされないよ。」
「まぁそういうな。すぐ怒る女だったから、ほっといたら怖いぞ。」
ありがとう、ありがとうと一人ずつ手を握り伝える。
タケルは、皆を見ると「まぁ 俺は一度口説いたことあるけどな」と自慢げに笑った。




