覚悟を決めて 8
石を運んでいた者達から、獲物を見つけたと声が聞こえる。
この巣の獲物かもしれない。
逃げる獲物より、巣の獲物だ。
そう理性が呼びかけるが、興奮が抑えきれない。
今にも食らいつきたいほどに、血がたぎっている。
何名かが木に登り、獲物を確かめる。
幼体がいるようだが、見ない獲物だ。
足が速く、追うことは難しい。
この先の巣に向かうのだろう。
獲物の出現に皆、興奮を抑えきれず、声をあげそうだ。
やむえず何名かを振り分けて、獲物を待ち構える。
勝手に加わるものもいる、抑えようがない。
木の上から飛び降りて捕らえよう。
危険があるが、誰かがやらねばならない。
そして倒してしまえば、皆で石を投げて仕留められる。
血気盛んなものが、言わずとも飛び込むだろう。
まずは幼体を狙う。
うまくいったようだ。かたい殻を落とす。
幼体は体をひねり、腕を折ったようだ。
舌なめずりをし、幼体に迫る。
殻が剥ければ、長くはあるまい。
獲物の鳴き声が、耳に心地よく響く。
傷ついた幼体を残し逃げるかと思っていたが、成体がこちらを向いている。
拙いかもしれない。
成体が大きな吠え声あげ、破裂するような音と共に、仲間を突いたようだ。
倒れた仲間は動きを止めた。
予想以上の反撃だが、興奮が恐怖を抑え込む。
取り逃がせば、死が待っている。
喰らわなければならない。
幼体を引きずり成体が逃げる。
じりじりと追いつめ、少しずつ傷を与える。
吠え声の数も減ってきた。
もうじきだ。
やっと肉が食える。
そう、口元が緩みかけたその時・・・。
地面の巣穴に潜り込みだした。
あぁと絶望の声が上がる。
自分達の知らない巣穴に逃げ込まれてしまった。
地に巣があり、潜ったようだ。
飛び込んで確かめるが、穴は既に閉じらようとしていた。
絶望の中、仲間の姿を眺める。
仲間の遺体が、いたるところに転がっている。
獲物のが落としたものを齧るが、喰えないようだ。
幾人か試していたが、そのうちやめてしまった。
子殺しを防ぐため、やむを得ない。
皆、遺体を引きずり持ち帰り始めた。
地面を叩き、怨嗟を送る。
白く固い奇妙な巣を、何度も何度も叩きつける。
他にできることなど、何もなかった。




