覚悟を決めて 7
夜を徹し、駆けずり回わる。
獲物がいた場所の記憶をたどり、わずかな期待を込め罠を確かめる。
今夜も十分な量の食料を、集めることが出来なかった。
子を持つ者の目が、怪しくなってきている。
このままでは、子殺しが起こりかねない。
猶予はあと数日だろう。
以前より見知った巣がある。
狩りは数度失敗し、手を付けずにいた場所。
新たな巣を探す余裕はない。
暗黙のうちに、この危険な巣を囲みだす。
出来るだけ多くの数で、出来るだけ早く。
巣を突かねばならない。
ほんの数体の獲物でもあれば、事態は好転するかもしれない。
体の小さなものは石を集め、体の大きなものが獲物を狙う。
いつの間にかできた役割分担が、声を上げずとも進んでいく。
二晩夜を徹している。
石を運ぶ作業が、疲労した体に深い溝を刻む。
狩りの興奮が、体を支えている。
手段は、投石しかないだろう。
槍やナイフは、リスクが大きすぎる。
夜のうちに巣を囲み、中の音を聞く。
獲物は昼しか出てこない。
初戦の石はもう十分だが、さらに石は集め続ける。
夜半から息をひそめ、日が昇るのを待つ。
はやる皆を抑え、巣へ石を投げ込み、反応を待つ。
獲物の幼体が異変に気づき、声を上げる。
しばらくすれば成体が、様子を見に来るだろう。
息を殺す、じっと巣を見つめる。
やがて巣がわずかに動き、成体が頭を出した。
鳴き声を真似て、おびき寄せる。
まだ、体のほんの一部、逃げられるわけにはいかない。
何名か先走り、石を投げた。
縊り殺したいが、その時間はない。
やむを得えず、一斉に石を投げる。
巣に逃げ帰る成体を、憎々しげに見送る。
まだ、これからだ。
以前の時は二晩続けた。
3日目の朝に、痺れを切らした成体が出てくる。
その時を待つ。
以前よりも、いまは人数が多い。
より確実に仕留めれるであろう。
皆が切羽詰まっている。
狩りの間は、肉を得られる希望がある。
成功するまで、何があろうと諦めることは出来ない。
その興奮が、熱気となり体に力を与える。
はやる息を抑え、耳をすます。
いくつかの鳴き声が、獲物の数を示す。
十分な数がいるようだ。
口からこぼれる涎を、腕で拭い投石を始める。
ここからは根競べだ。
巣にいつまでも籠っているわけにもいくまい。
獲物にも飢えはあるだろう。
奴らは夜目が効かない。
昼のうち、投石を繰り返せば必ず根をあげるはずだ。
祈るように石を投げる。
まだ戦いは始まったばかりだ。




