私の罪 5
いくつかの容器を指定され、保管容器へ収納するように説明を受ける。
「ユカリちゃんだっけ、あの子と話してくるわ」
頼むわね、と告げ彼女が部屋をでる。
自分が今からすることを思うと、少しばかり悲しくなる。
が、やるといったことだ。
人が近くにいる緊張と、いくつかの罪悪感が心をかすめる。
ようやく苦心して絞り出したそれを、ちいさなガラスの容器につめて、保管容器に収納する。
廊下に出ると、3人は長椅子で楽しそうに話をしていた。
背の高い良子、小さく細いユカリ、中間の背丈で筋肉質なリツ。
まるで、久しぶりに集まった仲の良い姉妹か親戚のように見える。
良子が社会人、リツが大学生、ユカリが高校生くらいであろうか。
こちらに気が付き「随分早かったのね」と、悪戯な笑顔を浮かべ楽しそうに笑う。
返す言葉に困り、「他にできることは?」と問うと、少し考えてから、こう答えた。
「好きなように生きていいわ、お幸せにね。」
予想外の返事に、理由を考える。・・・がわからない。
伝えるべきことは終わったとでいうかのように、良子は二人と話を再開した。
何の話かはわからないが、リツとユカリが顔を赤らめて恥じらっている。
あまり、関わらないほうがいいだろう。
彼女の話は、随分遠い年月を感じさせた。
しかし、こうしてみると、まるで昔を切り取ったかのような光景に感じる。
彼女は何歳なんだろう。
自分より、随分と前に目覚めていたのだろうけれど。
話のわずかな切れ間に、問うと3人の非難するような目を見て退散する。
「すこし周りをみてくるよ。しばらくしたら食堂で待っているから。」
ついてこようとするユカリは、二人に引き留められたようだ。
保存状態のいい研究所を歩く。
照明器具が切れているところが点在しているが、随分まともに形を残していた。
何処が切れていたかとか、球の種類をメモしようとして、フッと笑う。
今はもう設備員でも何でもないのに。
食堂に腰をかけて、これからのことを考える。
好きにしていいということは、町に帰るんだろう。
帰るつもりでいたのに、帰れるとなると不足に思う。
出るときの、駅の町の様子を思い出して、それでいいかと、一人納得をする。
リツとユカリが戻ってきて、こちらを見つけ手を振る。
片手をあげて答えると、二人が駆け寄ってくる。
随分打ち解けた姿をみると、まるで世界が終わりを告げたようには思えない。
「しばらく、泊って行っても、いいんだけれど」
リツが、そう期待するように告げる。
「じゃあ、ユカリだけおいて帰ろうかな」
ユカリは驚いて、顔を引きつらせるが、冗談だと気が付き、頬を膨らませた。
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リツとユカリの二人を見送ると、医務室の中で保存庫を確かめる。
薄く黄色味がかった液体と、紅い試験管十数本を眺めて考える。
放射能の汚染度が低い遺伝子を、自分と同じテロメアの保護された者の遺伝子を、ようやく手に入れることが出来た。
これでも十分ではないが、おおよそ一人の血統で増えてきた現状は、すでに限界を超えていた。
ユカリの銀髪も、その悪影響の一つだろう。
年齢を聞かれたことを思い出し、そして彼に告げるべきか考える。
あなたはきっと、随分と長い時を生きることになるわ・・・




