来訪者 6
目覚めてから、なんとなく唇をさわる。
やっぱり夢だったのだろうか。
外に出ると、何人かの町の人が集まっていた。
それぞれが声をかけてくれて、なんだか緊張してしまう。
リョウがいたので、声をかけると、一度胸をどんと叩いてから、親指を立てた。
頭を軽く抱きしめると、ジタバタしている。
装備をもう一度確かめて、シェルターに向おう。
手斧、鉄槍、バックパックには水と流動食。
それに、二宮良子の白衣に入っていたペン。
ユカリさんはいなかったな。子供たちの面倒を見ているのだろう。
外から口論する声が聞こえる。
カイとタケルさんの声だ。
何かあったのだろうか。
バリケードをすり抜けると、近くで、タケルさんとカイが話している。
その横には、迷彩のズボンにブーツを履き、ジャケットと帽子という姿の、誰かがいる。
腰には和包丁のようなものが下がっている。
近寄ると、二人は辛そうな顔をして・・・
「すまん」といった。
もう一人の人が、帽子のつばを持ち上げてこちらを伺う。
口論の末だろうか、頬は赤く腫れており、唇の端には血がにじんでいる。
「妻ですので」
ユカリさんは、どうしてもついてくる気なんだろう。
これ以上、何を言っても無駄なのかもしれないが、もう一度、目を見てお願いをする。
「待っていてほしい、お願いだから」
「いやよ」
そうして、それ以上は何を話しても聞いてくれなかった。
シェルターで待っているはずの3人がこちらにやってくる。
「様子を見に来たんです。準備はよろしいですか」
返事をしようとして、戸惑っているとユカリさんが前にでる。
「一人同行しても、かまわないかしら」
リクは少し考える。
「そうですね・・一人だけなら大丈夫ですよ」
そうすると、ユカリさんは彼らが来た方向へ歩きだしてしまった。
追いかける形で、僕ら4人はシェルターに向かった。
リツが問う。
「あの人は、誰なんです」
答えようとすると、ユカリさんが先にこたえる。
「妻です」
リツが疑うようにこちらを見るが、頷くしかなかった。
男性陣二人は「目が覚めてから、それほど立っていないはずなのに・・」と驚いていた。
シェルターの扉近くに、三台の70CCバイクが止められている。
行商の人が乗っていたような、郵便局のバイクに似ていた。
「早めにたどり着きたいのです。急ぎましょう。」
リクの指示に従い、バイクに分散して乗り込む。
リクを先頭に、リツとユカリ、ユウタと自分で、舗装されてない道を進む。
舗装されていない道は凹凸が激しく、大きく揺られ体が振られる。
そうして3時間ほど走ったであろうか。
少し開けた、焚火跡がある廃墟にたどり着いた。
リツのバイクが前に出て、左手をあげる。
合わせるように、全体が停止する。
「少し休みましょう」
皆がバイクを降りる、ユカリがよろけて、リツに掴まる。
駆け寄ると、随分青い顔をしていた。




