来訪者 5
二人が振り向いてこちらを見ている。
何か言おうとして、伝えたい気持ちがあるのに言葉がでない。
黙って二人は待ってくれている。
なんて言おう。
必ず帰ってくるから、心配いらないから、大丈夫だから。
それだけじゃ足りない。
大変な時期に留守にしてごめんでもない。
うぬぼれでなければ、二人は自分に親愛の情を持ってくれている。
いや、うぬぼれではないだろう。
だから、しっかりと目を見て伝えよう。
「心配してくれてありがとう。必ず帰ってくるから。」
「心配かけてごめん。ここが帰ってくるところだから。」
二人は顔を緊張させて、さらに続きを待っている。
言葉が続かないで終わる。
胸を切り開いて、心を見せることが出来ればいいのにと思う。
感謝も愛情も信頼も心配もいろいろ全部。
しばらく時がたって、それ以上何も言えずいた。
ユカリさんが、小さな声で答えた。
「ん・・わかった」
そう返事を聞いて、部屋に戻る。
あれで良かったのかわからないけれど。
寝台に転がり、天井を眺めて明日のことを考える。
道中の危険を思い浮かべ、そして留守の間のことを思う。
二宮良子に会い、礼を言おう。
どうして自分が研究所に行かなくてならないのか、それを確かめよう。
そう思い、目を閉じる。
明日は早いほうが良いだろう。
眠りにつこうかというころ、人の気配を感じて目を開ける。
声をかけると、ユカリさんが訪ねてきたようだ。
起き上がろうとする自分を優しく手で押さえ、ユカリさんが、上からこちらを覗き込んでいる。
「さっきの話はあれで終わりなんですか?」
どう答えたものか、返事に詰まる。
「帰ったらお嫁さんになってねくらい、言うかと思いましたよ。」
そうなったらいいなとは、思ったことはあるけれど。
夢を見ているんだろうな。ひどい死亡フラグだなと、苦笑する。
たしか、わざと死亡フラグをたてると、生き残るんだっけか。
「そうだね、そういうつもりでいたよ。ずっと前からね。」
答えると、唇に暖かいものが触れる。
いつか見たような、優しい笑顔が見える。
そして気がつくと、いつの間にか眠りに落ちていた。




