Responsible Conduct of Research 責任ある研究活動 3
私の趣味が出てしまっているのだけど・・・
科学者には見えない、柔和な笑顔浮かべ紅茶を飲む。
目の前の女性、田中さとみは稀代の天才である。
彼女は生命の神秘に最も近い一人であり、その見識には学生時代に触れていた。
学生の頃、彼女の話す一つ一つの言葉に感銘を受け、そのたびに研究に没頭した。
自分が今の研究を選んだのは彼女の影響が大きい。
しかし、非凡な才能は大学をでて、研究所に勤めてから鳴りをひそめていた。
自分が研究の重鎮であり、彼女がただの研究員であることは実力などではない。
そのおとなしい容姿とまわりの妬みが、彼女の道を妨げていた。
あと何年か平和な時代が続いたとしたら、自分の職を失ってでも彼女の研究を手伝いたかった。
そう告げると、彼女は寂しそうに微笑んだ。
「世界がこんな風になってしまったことは悲しいわ。でもね、今この研究所には私しかいないの。世界が歩みを止めたこの30年が、わたしの研究が一番すすんだ30年だったわ。」
残念なことに、それは本当のことだったのだろう。
しばらくの沈黙のち、彼女は今後のことを語りだした。
世界を再生したい。
30年という月日を経て核の冬は終わり、その時が来たのだと。
私は彼女を手伝うことを約束した。
最初に再生の実験を行ったのは、研究所敷地内である。
放射能を強く放つものを選んで取り除く。
壁を設け、表層の土を取り去り、耕す。
適切な水温、気温を得るためにビニールを張り、彼女の選別した植物を植えた。
適時、幾つかの生物や細菌を供給する。
彼女の指示に従い、植物を見守る。
地味な作業であるが、すべて彼女が再生したものである。
うまくいくときもいかないときも、原因と結果を受け止め追求していく。
複雑な出来事を小さく切り分け、少しづつ積み上げていく。
数年の時を経て、いくつかの場所で植物は根付き、季節に合わせたサイクルで動き出す。
ちいさなビオトープが形成され、それは確かに生命を繰り返していた。




