Responsible Conduct of Research 責任ある研究活動 2
信号を返信した研究所にたどり着く。
歪んで開かなくなったスライドドアを、つかんでちぎり取る。
ここは、種の保存を目的とした研究所だったろうか。
比較的僻地にあった為だろう、内部はあまり荒れておらず、人の気配はない。
ここは、同じ系統の部署だったはずね・・・
自身の研究所のパスを使うと認証され地下に入る。
良子のパスは他の研究員と比較ならないほど、高位である。
地下には、広大な冷蔵庫があり内部には様々な動植物のサンプルが保管されている。
地下地熱による熱源供給システムは戦争を乗り切り、動力を賄っているようだ。
構造上、地下に多くの施設を持つこの研究所は、保存状態がよい。
放射能の濃度も低く、ここでなら強化防護服を脱げそうだ。
スーツが内圧を開放し、音を立てて開く。
背の部分より、人が下りるさまは蝶の羽化を連想させる。
施設のメインフレームにアクセス。
種の保存と共に、クローンなども研究されていたようだ。
「勝手に入って何をしているのかしら」
こちらにも非常時のシェルターがあり、人が生き残った可能性がある。
どこか覚えがある声に振り向くと、白衣を着た中年の女性が立っていた。
「あなたのお化けを見るなんて・・、でも懐かしいわね」
声の主には覚えがある、同じ研究の先駆者であり、友人で会った女性だ。
「おひさしぶりですね、でもお化けではないですよ」
再会を喜び、手をつなぐ。
友人の少ない自分にとって、親友であり、尊敬すべき科学者である彼女。
田中さとみ。
平凡な名前と容姿からは、想像もつかないような知性を持つ彼女。
たしかこの研究所の職員であった。
「あいかわらず綺麗ね あなたが自分で実験するとは思わなかったわ」
昔のままの姿で現れた自分が、すでに薬を使用していることも理解しているようだ。
私の研究を見せてあげる。
そう彼女に連れられて、彼女の私室へ案内される。
椅子を進められ、室内で待つ。
観賞用の水槽には魚が泳ぎ、足元にはミニチュアダックスが走り回っている。
籠の中のオウムはこちらを見ると挨拶をし、鉢植えにはパンジーが咲いていた。
紅茶を持ってきて、砂糖の数を聞かれ断る。
「どうかしら」
紅茶の砂糖はいらないと答えると、いたずらな笑顔を浮かべ、うれしそうに笑う。
そうか・・
オウムも犬も花も魚も・・
「種の再生ね」
彼女は嬉しそうにうなずいた。




