Responsible Conduct of Research 責任ある研究活動
寝台から身を起こし、あたりを見渡す。
夢ではなかったのかと思い出す。
立ち上がろうとし、バランスを崩す。
体が軋み、鈍い痛みが走る。
研究は失敗だったかと、横になり天井を見上げる。
何が悪かったかを考えているうちに体がなじんでくる。
そうか、ひさしぶり動くのだものね。
自嘲し反省する。
自分の身体のことでなければ、すぐに気が付いただろう。
倉庫に向かい、食料と水を補給する。
シェルター唯一の同居者、もしかしたら地球唯一の同居者かもれしない、彼の様子を見る。
生命維持装置の数値は正常値を指しており、肉体に欠損も見られない。
しばらく眺めて、一人つぶやく。
何歳くらいかな・・
結構お年を召してるのかしら・・
寝ているというよりは、死んでいるようにみえるけれど・・
しばらく眺めていたが、起こすわけにもいかないわねと倉庫へ移動する。
戦争が起こる数日前に納品され、まだ木製のコンテナから取り出されてもいない荷物がある。
手斧を使いこじ開ける。
防護服にガスマスク、フィルター、工具、パソコンが数種類。
パソコンのうちの一つを起動させ、コードを打込む
まだ明けていない箱から起動音が聞こえ、箱を破り中身があるきだす。
遠隔操作可能な強化防護服。
2016年頃、ようやく予算がおりて形になったものの一つだ。
外部に公表されたオモチャではなく、兵器足りえるもの。
乗り込み、ハッチへ移動。
長いエレベーターで地表に向かう。
動作音がブゥンブゥンブゥンと反響している。
30年ぶりの地表ね・・・
雨が降っているようだ、カメラに水滴映る。
ひどい・・
想像していなかったわけではない。
モニターの放射能の値は人類の生存を拒否し警告を発している。
気温は15度を指している、今は真夏である。
収音機は風が吹く音だけを拾っている。
世界は滅んでいた。
廃墟と化した街、人の気配はない。
街路樹は枯れ、その姿をとどめていない。
地面は地表をあらわにし、草の一本も残っていない。
文明の終わりではなく、生命の終わりを迎えたのかもしれない。
通信信号を送信し、他の研究機関へ信号を送る。
モニターに地図が表示され、返信があった位置を表示。
人からの信号ではない、機器からの自動返信だ。
シェルター表層のハッチをしめ、研究所に向かう。
絶望とはこういうものかしら・・
たとえ絶望な未来しかないとしても、自分の研究の成果を見届けよう。
眠っている彼に少しでも良い未来を。
私は科学者であり、人類の生存を研究していたのだから。




