ふつうのおっさんはふつうに無力である 3
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翌朝を迎え町に戻り、酒場へ向かう。
昨日のうちに、シェルターで食料を補充してきた。
いくつかを残し、ゆかりさんに頼んで預かってもらう。
席を借りて、青年と話あう。
魚の取り方は、すべて教えるし手伝いもする。
そのかわり、できるだけ現状を教えてほしいと頼む。
自分は遠くから来ており、こちらの事情を把握していない。
遠くとは、遠く昔からであるが、その辺は伏せておこう。
ジャガイモの収穫期までの食料が乏しく、狩りにでた町の人たちの成果も芳しくないそうだ。
ジャガイモは年に2回収穫ができる。春から秋と秋から春の作付けだ。
だいたい1kgの種イモから7から8kgほどの収穫が見込める。
もう2月ほどを乗り切らないといけない。
小さく食用に適さないものを、種イモとして備蓄している。
種イモを残して先の収穫は使い切っており、30人のカロリーを満たせるものを外部から得なければならない。
町の警備や畑仕事、町自体の維持や水のろ過作業。
そういった欠かすことが出来ない作業のほかは、すべて周辺での食料探しに使われる。
鹿やイノシシのを刈るために罠なども仕掛けているが滅多にとれることはない。
ほとんどが、木の実や木の根、野草などをとっている。
水場の近くは食料が豊富だ。
魚もいるし、亀や蛙、蛇なども食料となる。
水自体も手に入れやすい。
そして、そのぶん他の生き物も集まりやすく危険が大きい。
あのちいさなゴブリンだけでなく、他の人間を襲う野盗などもいる可能性があるとのこと。
また、収穫期には町が襲われる可能性が高く、警備に専念する備蓄も必要だそうだ。
思っていたより、ずっと厳しい現実。
ため息をつき、森を思い返す。
自然にあふれた森。
ごく普通の木々が立ち並び、木漏れ日を浴びると心地よくもある。
さわやかな空気が通り抜け、緑は青々と美しい。
こんなにも美しい自然の中なのに、文明を失った現代人が生き抜くことは難しい。
自販機もない、食堂もない、傷を癒す病院もない。
それなりの武器があれば、大した脅威でもないはずの外敵。
今は、排除するためには命を懸けなけらばならない。
「緑の小さい奴がでるでしょう。あれは出会うと必ず威嚇で吠えます。こちらが慎重に引けば、争いになることは少ないです。もちろん必ずとは言えませんが。」
青年の言葉に、思い当たる節がある。
不意を突ける状況でも、確かに吠えていたな。
できれば相手も戦いたくはないのだろう、命はお互い一つしかない。
勝利しても怪我を負えば、その後がないであろう。
ただ、勝てると見込めば踏み込んでくる。
楽観視はできない。
リョウに頼み弓を借りる。青年に見てもらおう。
青年が弓を眺め、考えてから話し出す。
「あいつらが、これを作れるとは思えません。おそらく人が作ったものでしょう。急所にでもあたらない限り、これで死ぬことはないでしょうね」
殺傷力は、ウサギなら狩れるがイノシシなどには傷を負わせればいいほうだと。
人なら、怪我は免れないが、首でも射抜かれない限り、致命傷はないとのこと。
そもそもあてることが難しいそうだ。
そうであったしても、怪我を負うだけでも致命的となりかねないこちらとしては、脅威ではある。
ほかの町はどう暮らしているのだろう。
行商がいるのであれば、ほかにも集落があり生活があるはずだ。
「行商人は他の町の話を、よほど信頼を得ないと話しません。話した相手が、何時野盗になるかわかりません。山のほうの町は鳥や畑を持ち、栄えていましたが、野盗に襲われ滅んだと聞いています。食料があれば襲われる、自衛の力を強く持たずにいることは危険でしかありません。」
ここの人達が、バリケードの中で暮らしているのは、そういった理由が大きいそうだ。
「あわせて、他所の人間を迎え入れることは、どの町もまずあり得ません。あなたは、来た時の状況が特別でしたから。」




