無力であろうと抗わなくては
話を一通り聞いて、さてどうしようかと悩む。
結局のところ、普通のおっさんは特別なことはできない。
それが遠い過去から生き続けていようと、多少若返ろうと、一人の人間にできることは限られているのだ。
深刻な顔を見て、若者が気遣うように話す。
「どんだけ苦しくても、生きていきゃなきゃですしね。頑張りましょう。」
そうだなと返す。
本当にそうなんだ、偶然生き延びてしまっただけだが、生き続けたいなら必死であがくしかない。
魚を捕りに行く話に戻そう。
普通に狩りに出るのなら、できるだけ多人数で現地に向かうそうだ。
もちろん、そんなことをすれば獲物にも気づかれやすいだろうが、敵対する者には有効である。
ただ、どうしても逼迫した状況であれば、独断専行するものもいないわけではない。
リョウと若者と3人で行くことに決めた。
釣りはリョウに任せて、二人で護衛を行う手筈だ。
「そういえば名前を聞いていなかったね。」
「カイといいます。」
名乗ると、では早速いきましょうと立ち上がる。
釣り場に向かう道中、周囲を警戒し進む。
「この蔓草の根は、食べれるんですよ」とカイが教えてくれた。
確か、これは葛の葉であったろうか。
魚が取れないようであれば、これを取って帰りましょうとのこと。
葛の根からは、でんぷんが取れたはずだ。
前回釣ったと同様の位置にたどり着く。
今回は外敵にであうことはなかった。
二人で背中を守る中、木の枝にロープをほぐした糸という簡素な釣り竿でリョウが釣りを行う。
釣り糸を垂らすたびに、魚が釣れる。
ブルーギルやブラックバスほど、餌釣りで釣りやすい魚はいないかもしれないな。
途中アカミミガメがのんびりと甲羅干しにあらわれた。
カイが素早く捕獲する。
「喰うの?」
正直、現代人の感覚が完全には抜けていない自分は、ちょっと心配になってしまう。
「おいしいですよ?」
カイとリョウがハモって答えた。
そろそろ持って帰れる量の限界にちかずく。
事前に話し合い、持ち帰れる限り取って戻ろうということになっていた。
次も安全にここまで来れる確証はない。
とはいえ時間は、2時間ほどしかたっていなかったのであるが。
「こんなに釣れるんですね」
とカイは上機嫌である。
昔はこういう魚は、ゲテモノ好きしか食べなかったと伝えたら驚くだろうな。
専用のごみ箱があったことなどは言わないでおこう。
リョウと保存食にするにはどうしようかなどと話す。
急にカイが手を広げ、周囲を確認する。
声を潜め、耳を澄ます。
かすかに『ザクッザクッ』と草を踏む音が、森のほうから聞こえる。
手斧を構え音の方向に耳をすます。
ゴブリンだろうか?
こちらが身構えていると、少年が姿をあらわした。
額には乾いた血の跡があり、体にもいくつか傷があるようだ。
「野盗がでたんだ 僕らをたすけ・・て」
そういうと、彼はばったりと倒れこんでしまった。




