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異世界冒険録~神器のアルケミスト~  作者: 成瀬りん
第4章 宗教都市メルタテオス
92/911

92.ちょっとした試練?

 宿屋を出て、三人でメルタテオスの観光と探索。

 午前中にちょっとした教会を見たあとに昼食をとり、その後しばらく歩いているとそれっぽいお店を発見した。


「アイナさん! ありましたね、ミラエルツと同じ感じのお店!」


「結構探しちゃいましたね。とりあえず魔法陣は買うんですけど、他にはどんな素材があるかなー?

 何が出てくるか分からないから楽しみです!」


「それでは入りましょう。足元が暗くなっていますのでご注意ください」


「うん、ありがと。

 こんにちは、お邪魔しまーす」


「ひぇっひぇっひぇっ……。いらっしゃいませ……」


「「「ひぇっ!?」」」


「ひぇっ……?」


 お店の人の言葉に三人一斉に驚くと、向こうも驚いていた。


「あ、あれ……? ここ、メルタテオスですよね……? 急にミラエルツに戻ってませんよね……?」


「も、もちろんですよ。でも……あれ? 私、混乱してきました」


 お店の人の風貌はいわゆる『魔女のお婆さん』といった感じ。

 この人はミラエルツで見たことがあるんだけど……。


「ああ……お前さんたち、ミラエルツのお店にも行ったのかい……? ひぇっひぇっひぇっ……」


「はい? もしかして、ここでもお店をやっていたんですか?」


「ああ、あっちはねぇ……私の姉さんだよ……」


「えっ」


 一瞬驚いたものの、そのすぐあとには納得した。

 なるほど、同じ見た目と雰囲気だから驚いたけど、一卵性の姉妹なのかな。


「なるほど、よく似てますね。双子ですか?」


「ひぇっひぇっひぇっ……。私の上に、もう一人いるよ……。三つ子なのさ……」


「ひぇっ」


 それはさすがに予想外。


「姉さんは元気だったかい? さすがにこの歳になると、気軽に遊びに行けなくてねぇ……」


「確かに馬車でも一週間掛かりますしね。お元気でしたよ、二回ほどしかお世話になっていませんけど」


「そうかい、そうかい。それじゃうちでも、気軽に買っていっておくれねぇ……」


「ありがとうございます、ちょっと見させて頂きますね」


「はい、ごゆっくり……」


 お店の広さはミラエルツと同じくらい。

 置いている品物も基本的には同じような感じだが、薬草の種類とかが少し違うみたいだ。

 今回お目当ての魔法陣は――あ、良かった。結構置いてあるぞ。


 それじゃ買っちゃおうかなっと。


「すいません。

 ここからここまでと、あそこからあそこまでと、そこからそこまでくださいな」


「ひぇっ……?」


 お婆さんは思わず、といった感じでエミリアさんとルークの方をちらっと見た。


「あ、ミラエルツでもこうでしたので……お会計、よろしくお願いします……」


「お手数をお掛けします……」




◇ ◇ ◇ ◇ ◇




「――はい、確かに……。

 それにしてもお前さん、こんな量をぽんっと買うなんて……すごいんだねぇ……」


「え? そうですか?」


「私たちはミラエルツでもう二回見てきましたし、何だかもう慣れましたね」


「そうですね……」


 エミリアさんとルークが何やらぼそぼそ喋ってるけど、よく聞こえないなぁ?


「ひぇっひぇっひぇっ……。ところで、姉さんは少し変わったものを見せてくれなかったかい……?」


「変わったもの、ですか?

 ――もしかして、『竜の血』とかですか?」


「おぉ……。ついに手放したのか……」


「あと、『精霊の魂』と『不死鳥の羽』と『闇の石』も買わせて頂きました」


「ひぇっ……? まさかそこら辺をすべて出すなんて……。買うお前さんもお前さんだけどねぇ……」


「あはは、お高い買い物でしたよ」


 この四つで金貨140枚だったしね。


「ふぅむ……。姉さんは金に困っても、認めない人には良いものは売らない性格だからねぇ……。

 よし、アタシもとっておきを出しちまうかねぇ?」


「え? とっておきですか?」


「今のところでもずいぶん買ってもらったからねぇ。ま、お金がまだあるならの話だけど……ちょっと待ってておくれ」


 そう言いながらお婆さんはお店の奥に引っ込み、しばらくすると瓶を抱えて戻ってきた。


「お待たせしたねぇ……。

 生憎と姉さんほどは持ってはいないんだけど、これが私の秘蔵のお宝さ……」


 お婆さんの持ってきた瓶の中には、キラキラと輝く石がいくつも入っていた。


「これ、何ですか?」


「ああ、これは『光の魔導石』といって――」


「全部ください」


「ひぇっ!?」

「「ひぃ……」」


「そ、そんなに即決して良いのかい……?

 使い道とか、分かるのかねぇ……?」


 いやいや! これって『神剣デルトフィング』の素材のひとつだよ?

 神器に近い素材のひとつだよ!? ここで買わなきゃいつ買うの!


「ひとまず、とある武器に使われていたことは知ってます!

 これを探してました、全部買います。おいくらですか?」


「う、うーん……。まさか全部とはねぇ……。

 さすがにそう来られると、アタシもちょっとお前さんを試したくなってきちまうねぇ……」


「えー?」


 しまった、もう少し焦らせば良かったかな!?

 でももう遅いか。


「分かりました。何でもどうぞ」


「ひぇっひぇっひぇっ……。そうかい、そうかい。

 それじゃ何をお願いしようかねぇ……」


 お婆さんはしばらく考えたあとに、怪しいドクロのネックレスを出してきた。


「お前さん、例の魔法陣を買っていくってことはアーティファクト錬金をやるんだろう?

 それならちょっと、このネックレスに効果付与をお願いできるかねぇ……」


「え? そんなことで良いんですか?」


「ひぇっ……? だ、大丈夫かね……?」


「えぇっと、大丈夫ですけど……。あ、付ける効果は何でも良いですか?」


「何でも……?」


「いえ。ステータスが良いとか、別の効果が良いとか……」


「別の効果……。いやいや、お前さん、アーティファクト錬金を本当にやってるのかい……?」


「やってますよ、昨晩が初めてでしたけど」


「ああ、そうだったのかい? それじゃまだまだひよっこだねぇ……。

 まぁ、できるところまでやってごらんな……」


「……? 分かりました、それじゃとりあえず明日にでもまた来ますね?」


「あ、明日……? 無理はしないようにねぇ……?」


「はい、それじゃ今日はありがとうございました。

 ドクロのネックレスはお借りしていきますね」



 ――うぅん? 何だか最後の方、話が噛みあわなかった気がするけど……何だろう?

 まぁいいや、ルークのネックレスのついでに、依頼されたネックレスにも何か付けて来よう。


 付くのは何でも良いんだけど、良すぎるのはここには付かないで欲しいかな。付くならルークの方に! ということで、ね。

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