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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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095 岩場を抜けて

 砂漠を抜けた先にある岩場。そこにネーデとアズラットが訪れる。


「ここの先……?」

『(先、というかまあ多分この場所にあるんだろうが……)』


 岩場。岩砂漠、とはまた違うような岩の散乱する大地。

 しかし、次の階層への入り口と思えるような場所は見当たらない。

 とはいえ、その岩場も砂漠ほどではないがそれなりの広さがある。

 少なくとも途中で通ったオアシスより広いのは間違いない。

 岩場の端は一応見えるが、しかし結構な距離がある。


『(壁に穴が開いているわけではないし、地下への階段のようになっているか、もしくはどこかの岩場がそれっぽく入り口になっているとか。来たときだって砂漠の砂山にできていた洞窟のような場所だったわけだし)』

「そっか。でも、それだと探すのは大変かなあ……」


 中々に広いがこれまで砂漠を通って来た事と比べるとそれほどの苦労ではない。

 しかし、これまでの苦労がなくなったわけではない。疲労が残っている。

 流石に砂漠で休むのは難しく、この岩場も安全とは言えない。

 それに砂漠ほどではないが日が照り熱されている。流石に岩場でも熱く暑い。

 そんな場所で休むほどの余裕はない。次の階層へと入ったところ、その途中で休むべきだ。

 もちろん他の冒険者と鉢合わせる可能性もあるので場所は選ぶべきだが。

 まあそういう心配は先へと進む道を見つけてからでいいだろう。


「…………なんだろう」


 ネーデはどうにも奇妙に感じている。何かがいるような気がするのに、何もいない。

 気配か何かか。もしくは、空気の動き、物の動き。そう、<振動感知>。

 それが気配などではなく振動であれば……アズラットも感知できる。


『(ネーデ、動いてるぞ)』

「えっ」


 がらり、と岩の揺れる音がする。岩から何かが現れる……というわけではない。

 岩が、立ち上がった。それは十階層で見たゴーレムを思い起こす。

 しかし、それはゴーレムよりもはるかに小さく、またゴーレム程人の形をしていない。

 岩の塊が複数集まりできたような人型の魔物。


『(途中で見た砂の奴みたいなものか……)』

「多分、そうなのかな?」

『(あれよりも倒すのは大変か。岩だし)』

「そうだね。でも、ゴーレムよりは楽じゃないかな……?」


 岩の塊の化け物。人の形に近い魔物。それ自体は途中で別の似たようなものを見かけている。

 砂の塊の魔物。砂漠の砂から突如ぬっと湧き出てくる砂の塊で人の形を取る魔物。

 その体を無駄に斬ろうとも、その魔物は殺すことはできない。倒すことはできない。

 砂の体は斬りおとされてもすぐに周りの砂から取り込み回収し、回復する。

 無敵……のように見えるが、しかし無敵ではない。スライムのように核である弱点を持つ。

 そして相手は砂だ。殴られれば痛いかもしれないが、それくらいでしかない。

 取り込まれ呼吸を封じらればつらいかもしれないが、接合力が弱いのかそれほど脅威ではない。

 その上取り込まれ核に近づくことも多く、核を破壊すればあっさりと倒せてしまう。

 面倒な相手であるが、強い相手ではなく脅威ではなかった。

 だが、それが岩となると中々に厄介……かもしれない。

 実際の所、ネーデにとっては十階層で相手をしたゴーレムの方がはるかに脅威に感じる。

 そもそも十階層で出てきたゴーレムとは違い、この岩の魔物はただの迷宮に生まれる無数の一体。

 それがそれほど脅威となることもない。


「じゃ、倒そっか。それほど強くはなさそうだし」

『(そうだな。だが、油断大敵だ。<振動感知>)』

「……? うん……って!?」


 <振動感知>を使い周辺の様子を調べるネーデ。

 アズラットほど把握できないが感知に引っかかる存在がいる。

 それも一体や二体ではない。十体近く。それなりに近い場所でそれだけの数である。

 わずかな振動であったが、すぐにそれが大きくなる。

 岩の塊の魔物、岩の塊の魔物、岩の塊の魔物。

 つまりは現れた一体だけしか存在しなかったと言うわけではない。


「た、たくさんいる!?」

『(むしろ一体しかいない方が変だろう。十階層のゴーレムは現れ方からしても特殊な魔物っぽいが、こいつはこの岩場で生まれる魔物か何かだろうな。砂漠だと砂、ここだと岩。まあ、それほど脅威ではないだろうが……)』

「でも、数が多いよ……」


 流石に一体だけならばまだ余裕があるところだが、沢山現れ襲われるとなると大変である。

 ゴーレム程強くはないだろう。破壊するのはそこまで難しくもなさそうだ。

 しかし、やはり数が多いのが難点。破壊するのも一撃で完全に粉砕できるわけではない。


『(まあ、やるだけやるしかない。っていうか、核を狙え核を。あと、岩も雑に繋がっているんだから斬りおとしやすいだろ。砂の奴よりも回収は容易じゃないはずだ。周りからの補充だって、砂ほど岩は動かしやすいわけじゃない。はっきりとがたがた動いてくるわけだしな)』

「あ、確かに」


 砂の魔物はぬるりと体を動かす流動性の高い魔物だった。しかし岩の魔物は違う。

 岩はそれなりの大きさをしており、それが集まっている都合上それぞれの岩が干渉しあう。

 接合具合も綺麗にぴたりとはまっているわけではない。

 そのため、揺らすだけで外せそうに見える。

 もちろん魔物の体の繋がりは核から伸びる力の流れによって成されているので簡単ではないが。

 それでもゴーレムよりは体をバラバラにしやすく、砂の魔物よりも核がある場所が予測しやすい。


『(最悪、離れてから誘導するのもあり……場合によっては撒いて次の階層への道だけ探すのもありかな)』

「追ってこない?」

『(わからん。まあ、やるだけやってみるしかないだろ)』

「……そうだね。うん、やってみる!」


 ここまで到達したネーデの実力はかなり高い。

 もはやただの岩、それも甘い接合の魔物では脅威ではない。

 数が多いのは厄介である。

 しかし<跳躍>に<防御>もあり、囲まれていても回避するのは難しくはない。

 そもそも囲まれるまでに脱出できる。

 <振動感知>を用いれば後ろに回り込もうとする魔物も察知できる。

 ゆえにネーデにとっては大した問題もなく、一体ずつしっかりと斬りおとし、破壊し、核を穿つ。

 そして相手が全滅するまで倒し続けた。


「……はあ」

『(お疲れ。で、当初の目的は魔物を倒す事じゃないんだが……)』

「あ……うん、そうだった…………はあー……」


 苦労して魔物を全滅させたはいいが、別に魔物を倒す必然性はなかった。

 もちろん倒さなければネーデを追いかけ、ついて回り面倒であったかもしれない。

 だが、逆に言えばその程度の問題だ。

 回避すること自体は容易であり、逃げながら次の階層への道を探すこともできた。

 一応倒さなければいけないが、ここまで極端に倒すことに努める必要はなかっただろう。

 とはいえ、それも後の祭り。終わってから言っても仕方の無いことである。






「あー、やっと見つけたー」

『(……ネーデも大分疲れている様子だが、ともかく進むぞ。流石に砂漠で休むのはきついしな)』

「うん……でも、空気、水気が増えてる?」

『(<保温>を解除して気温を確認してみるか? 多分暑くないと思うが……)』

「それは……ちゃんと次の階層に行ってからがいいかな」

『(そうか)』


 凍土、砂漠と続いた次の階層はどのようなものか。

 ここまでの二カ所のような酷環境でなければいいが。

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