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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
三章 竜討の戦い
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090 大きな脅威

「あれ、なにっ!?」

『(見たままだろっ!? でかい、速い、長い! よく砂漠に出る魔物でデザートワームとかそんな感じのでっかいやつがいるのは知識にあるけど、本当にそんなのが出てくるとは思わなかった!)』

「デザートワーム!? あれのこと!?」

『(名称は知らん! だけど蚯蚓とかそういう感じっぽいしワームでいいと思うぞ! 砂漠の蚯蚓でデザートワーム! ついでにビッグとかそういうのも名前につきそうな感じだな! 滅茶苦茶でかいし!)』


 現在ネーデとアズラットは魔物に追われている。それもとてもでかい魔物に。

 アズラットの言う通り、ワーム系の魔物の一種と言える魔物だろう。そしてとてもでかい。

 具体的に言えば、ネーデとアズラットが容易に丸呑みできるほどの大きさ。

 二桁メートル以上の体長を持つ……もしかしたら三桁を超えるかもしれないほどの長さ。

 それが身を持ち上げた時の高さもかなりの物。三階建ての建物に相当するのではないか?

 もっとも明確な大きさや長さに関してアズラットは正確に測れるものではないが。

 自分たちと比較してとんでもなく大きく長いことは流石にわかるところであるが。


「あれ、勝てないよね!?」

『(流石に無理だろ! いや、俺は体内に入って内側から頭部の方に侵食、食らいつくすとかできなくもないとは思うけど……)』

「凄い! できるのにやらないの!?」

『(できるかどうかは確実なところはわからん。だいたい、その場合ネーデから離れないといけないし、その場合俺がちゃんとワームに取り付けるかも、口の中に入れるかもわからん。ネーデごと喰われれば何とかなりそうだが……喰われたいか?)』

「い、嫌! 絶対に嫌!」

『(だろうな。そのうえ、喰われればいいが轢かれたらどうなるか……砂地だから埋まる程度で済むかもしれないが、こう体が磨り潰されて核がぐちゃりといってしまえば俺も死ぬしな。あまり無茶なことはしたくない)』


 かつてグリフォンという強大な敵と戦い勝ったことのあるアズラット。

 しかし、それとは別の形で目の前の敵は強大で巨大な敵。

 強さというものはいくつかある。単体での強さ、環境での強さ、数での強さ、大きさでの強さ。

 例えばグリフォンの場合はそれ自体の強さと空を飛ぶという能力、空中の環境の強さがある。

 例えば十一階層の狼などは凍土の環境と低温化の能力が合わさり強さとなっている。

 例えば四階層に出てくる大鼠や大蝙蝠は大量に襲い掛かることで強大な魔物を喰い殺す。

 そして十二階層に出てきた今二人を追うワームはその巨大さが強さである。

 巨大であると言うことは質量が大きいということ、重量が大きいと言うこと。

 ただ体を振り回すだけで周囲に大被害を齎し、ただ体がぶつかるだけで大きな力となる。

 質量に速さをかけると力になる、とはいうが実際生み出されるエネルギーは相当の物。

 アズラットも圧縮してるため見た目上ではわからないがかなりの質量がある。

 しかしその質量による耐久力でも果たして防ぎきれるものか。そう不安になる程の大きさだ。


「でも、逃げ切れる!?」

『(わからん……最悪魔物か何かを見つけてそこに突っ込ませて魔物を囮にするしかないが……)』

「この状態で寄ってくるかな?」

『(寄っては来ないから見つけたら即近づく方針で。俺も振動感知を全開で探ってみる)』


 この状況はアズラットにとっても望むべくものではなく、また危険も高い。

 回避できる手段があるのであればアズラットも全力でその力を発揮することだろう。

 ネーデもいつまでも走れるわけでもなく、砂に足を取られる危険もある。

 <跳躍>のおかげで普通に走るよりも早いが、それでも完全に振りきるには少し余裕がない。

 その逃走劇は少しの時間行われていたが、ついにアズラットの振動感知に魔物がひっかかる。


『(あっち! 狼かなんかの群れだ!)』

「本当に狼多いね、迷宮!」

『(スライムの次くらいに多いかな! 今のところ!)』


 迷宮に存在する魔物でどの魔物の種類が多いのかという疑問さておき。

 運の悪いことにネーデ達の逃走とワームの追跡の様子を把握できなかった魔物達。

 厳密に言えば、何かあるとはわかってもそれが危険であるとはわからなかった魔物達。

 狼……風砂と乾燥と日差しに適応した砂漠狼たちの群れ。それがいる方向に二人が向かう。

 そうしてネーデが近づき、流石にそうなれば狼たちもその危険に気付く。

 すぐに彼等は逃走しようとするが……ネーデの方が駆け抜けるのは速かった。

 別にその魔物たちと戦う必要はない。ネーデは素通りすればいい。それだけで押し付けられる。

 もしこれが冒険者だったならばモンスタープレイヤーキラーと呼ばれるような行為だろう。

 もしくはトレインともいわれるようなものか? 一体の魔物ならば言わないかもしれない。

 細かい話は置いておくとして、ネーデは砂漠狼たちにワームを押し付けることに成功した。

 彼らがどうなったかはわからないが、恐らくワームに食われていることだろう。






「……はあ、はあ、本当に……疲れたぁ……」

『(お疲れ。頭の上に乗ってるだけで何もできなくて悪いな)』

「そんなことないよ……? 魔物を見つけてくれたし」

『(あれくらいならいずれネーデもできるようになるだろ……多分)』

「今は出来ないし……やっぱりアズラットがいてくれると嬉しいよ」


 どちらかといえばありがたい、という方が正しいだろう。

 もっともネーデの心境としては間違ってない。


『(……お。仙人掌)』

「さぼてん?」

『(ほら、あのぽつんとたっている植物だ)』

「どれ…………あれ……?」


 ぽつんと立っている仙人掌。

 ネーデは見たことがないのでそれが植物であるとはっきりとわからない。


「あれ植物なの?」

『(植物として扱われるもの、なはずだが……絶対にそうであるとは断言できないか)』


 興味を持ったネーデがぽつんと立っている仙人掌に近づいていく。

 迷宮において植物は比較的危険性が低い。植物は基本的に環境的な物であることが多い。

 分かりやすい例でいえば、九階層の森や八階層の迷路。

 しかしだからと言って絶対に脅威にならないとは言わない。八階層に合った大きな樹のように。


「っ!?」

『(っと……危ないな)』

「あ、危ないって言うか、<危機感知>が反応しなかったら当たってたよ!?」


 アズラットは当たっても害がないので問題なかったが、ネーデはそうではない。

 仙人掌は棘を飛ばして攻撃してきた。この十二階層におけるそれはどうやら魔物であるらしい。


「仙人掌ってあんなに危険なの?」

『(流石にそれはない。ここにいるのは魔物の仙人掌だってことなんだろうな。それにしても、<危機感知>から<防御>につなげられるようになってるな)』

「うん……急な攻撃だと回避できないこともあるから」


 スキルには一種のコンボ、繋がりや他のスキルに関わる影響力を持つことがある。

 <身体強化>は<跳躍>や<剣術>と合わせられるというもの。

 まあこれは身体能力が高くなるからだが。

 <危機感知>からは<回避>や<防御>に繋げられる。

 こちらは合わせて使うのではなく、スキルの反応から使用するもの。

 <危機感知>は攻撃を感知するのでそれに応じて<回避>や<防御>を使えれば攻撃に対しての対処が可能。

 スキルにはそういう繋がりや複合の使い方ができるものもある。

 そのあたりは試してみないと分からない。


「っと!」


 棘を飛ばしてくる仙人掌の攻撃を跳躍しながら走り回避し、一気に近づき斬り飛ばす。

 びしゃり、と多大な液体を漏らしながら仙人掌は切り倒れる。


「水!」

『(水分豊富なようだな……この十二階層の水源か。ちょうどいい感じだ。水もそうだが食べることもできるか? まあ、棘の処理が必要になるかもだが……)』


 仙人掌はかなりの水分を含んでいるようだ。これで失われた水分を補給できることだろう。

 巨大なワームに追われたが、代わりに良い物を見つけられた。

 不幸中の幸いと言ったところかもしれない。

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