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スライムのしんせいかつ  作者: 蒼和考雪
二章 魔物と人の二人組
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065 一時的完全防御

『まあとりあえず<回避>と<受け流し>に関してはアノーゼの説明でいくらか分かった。もしかしたらそういう系統のスキルは他にもあるかもしれないけど、とりあえず思いつかないし……ひとまず<遮断>と<防御>について聞いてみたいんだが』


 アノーゼは確かにスキルについて話しているが、かなり限定的だ。

 これはアノーゼがスキルについて詳しく知らないためか、それとも何かの意図があってのものか。

 それか単純にアノーゼがそこまで考えを広げられるほど広い視野を持たないか。

 理由はともかくとしてアズラットはアノーゼの挙げたスキルについて訊ねた。


『そうですね……まず<遮断>ですが、これはそのままあらゆるすべての影響力を遮断するスキルです。当然ながら物理攻撃や魔法攻撃すらも遮断できるわけですが……このスキルはそのまま<遮断>で取得するのはお勧めしません』

『<遮断>で取得する?』

『はい。スキルと言っても、同じ系統のスキルでも複数の種類があります。例えば<魔法耐性>のスキルですが、これは全ての魔法に対する耐性スキルですが全部に分散するためにスキルの効果が控えめになります。<火魔法耐性>だと火魔法にしか耐性は得られませんが<魔法耐性>よりも高い効果を持ちます。それと同じで、<遮断>はあらゆるすべての遮断を行うスキル。このスキルを使うと物理攻撃はもちろん魔法攻撃も、毒や病などの異常を発生させるスキルすらも遮断できます。しかし、同時に光や音すらも遮断してしまいます。一種のこの世界から隔離された状態に近い状態になるわけですね』

『それはかなり厄介な状態だな……』


 <遮断>のスキルは確かに全ての影響を遮断する。

 しかし、それは決して都合のいい効果を起こすものではない。

 あらゆる全てを遮断すると言うことは悪い影響を遮断するだけではなく良い影響も遮断する。


『<危機感知>や<振動感知>のスキルも<遮断>のスキルを使い外部の影響から遮断されている場合は使っても効果を得られません。<危機感知>で感知できる危機は自身を襲う危機が存在しなければいけませんし、<振動感知>はその名の通り振動を感知しているスキル。音も光も遮断すると言うことは当然ながら空気を伝う振動を感知することができないと言うことです。<遮断>のスキルはあらゆる全てを遮断するので防御手段としては極めて有効ですがそれ以外の問題も多いので結構扱いにくいのでお勧めしないと言うことです』


 スキルはどのスキルも使い方によっては有用である。

 しかし、スキル同士がうまくかみ合うとは限らない。

 ネーデで考えればわかるが、<跳躍>や<身体強化>などがいい例だろう。

 そもそも<身体強化>は身体能力に関わるスキルには相性がいい。

 極める形になるなら<剣>、<剣術>、<剣技>、<剣気>、<魔剣>などのスキルを覚えるなど。

 基本的に同じ性質や同じ系統のスキルは相性がいいということになる。

 アノーゼがお勧めしなかった<回避>と<受け流し>も二つとも覚えればそれなりにいい組み合わせだ。

 しかし<遮断>は基本的に相性がいいスキルというのは少ないように思える。

 <遮断>のスキルはこの世界におけるあらゆる影響からの遮断。

 言うなれば別世界にいるようなものだ。

 その状態でこの世界に影響を与えるスキルや影響を感知するスキル、そういったものを使えるはずもない。


『だから私のお勧めは<防御>ですね。やはりあれです、実績があるのはいいですよ』

『……実績?』

『ああ、こちらの話です。私は実際に<防御>のスキルが使われた例を見たことがあるのでその有用性をよく知っているんです。なのでお勧めする、ということなんです。まあその実例を見ているから他のスキルがお勧めに思えないのかもしれませんが』


 既に実際に結果を出しているスキルの存在を知っているため他のスキルが有用とは考えられない。

 実績がある以上確かに有用なのかもしれないが、その分視野が狭くなる。

 もしかしたら他に良いスキルがあるのかもしれない。もっと有効的なスキルがあるかもしれない。

 しかしその検証にも手間がかかるしスキルは一度覚えたらずっとそのままだ。

 ならば実績のあるスキルを覚えて使うのは悪い選択肢ではないだろう。


『まあ、詳しくは聞かないけど……<防御>はどんなスキルなんだ?』

『その名前の通り、あらゆる攻撃を防御するスキルです。なんといえばいいんでしょうか……自分の体に防壁を張るような感じのスキル、でしょうか? スキルを使い、それが使われている間は防壁が耐えられる攻撃であればどんな攻撃も一度は確実に防ぎます。ただ、その防壁を一撃で破壊できるような強力な攻撃は緩和はされますが防げずその影響を受けることになると思います。それでも攻撃を防ぐ性能は高いです。それに、物理攻撃や魔法攻撃、異常を起こすような攻撃も基本的にすべて防いでくれます。その攻撃の干渉能力、威力次第ですが確実に防げるので有用性は高いですよ?』

『ふむ……』


 確かにアノーゼの言うとおりであればかなり有用性は高いのかもしれない。

 だがアノーゼの言う言葉だけではどうにも信用しきれない所はあるだろう。

 とはいえ、彼女のおすすめという点においては<身体強化>の例もあるので一概に悪いとは言い切れない。

 もっともアノーゼのおすすめスキルが劇的に活躍したかと言われるともそれは違うわけなのだが。


『…………他に何かあったりは?』

『むう……他にですか……えーっと…………駄目です。防御力を上げるスキルは思いつきますよ? <硬化>とか。でも完全な防御を行うスキルとなると……<防御>以外だと<防壁>とかになるでしょうか? でも自身を守る性質が高いのはやはり<防御>ですし……<防護>でもいいと言えばいいですが、大差はないですし……』

(意外とアノーゼもあてにはならないな……)


 アノーゼは神としての立場があり、そちらの知識で物を言ったりその能力での干渉ができる。

 しかし、本人自体はそこまで能力が高いと言うわけでもない。神は神でも万能でも全能でもない。

 単なるスキルに関わるスキル神の一柱でしかないわけである。

 スキル神なのにスキルに詳しくないのはどうして、と突っ込まれそうな気もするところであるが。


『ま、それならとりあえず<防御>にしておくよ』

『むう……それで妥協しておきますみたいな雰囲気なのはこちらとしては遺憾です。その、役に立たなくてごめんなさい……』

『いや、十分頼りになってるからさ』


 本心である。色々と拗ねられたりお勧めが微妙な感じじゃないかと思ったりもするが、十分頼りになっている。


『それならいいんです……一応言っておきます』

『ん?』

『気を付けてください。もう一度言います。気を付けてください。大事なことですから二度言っておきました』

『……おい』


 ネタではない。本当にこれはアノーゼにとって大事な忠告だから二回言ったのである。

 なぜならこの階層においてアズラットが死ぬ危険があるとアノーゼは知っているから。

 それは別に先に出てきた魔物ではない、もっと上の脅威。それゆえの忠告である。


『……ん、まあ気を付けておく』

『本当に気を付けてくださいね! もう一度言います! 気を付けて下さい!』


 しつこいくらいにアノーゼはアズラットに気を付けろと言って<アナウンス>は終了する。


(……何かあるのか?)


 アズラットはそう思うものの、今はネーデに……ネーデと自分で<防御>スキルを覚えることを優先する。

 九階層におけるカブトとクワガタと巨人の脅威は何もネーデだけのものではない。

 アズラットにとってもあの攻撃力は脅威である。ゆえに、スキル取得を優先した。

 それゆえにアズラットはアノーゼの忠告は覚えてはいるものの、心の奥の方にしまうこととなった。

 それがどのような影響をもたらすか。すぐに身を持って知ることになるのである。

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