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少年は央都を目指す

夜明けの荒野に雄々しく立ち上がるモビル・スピリット=アルガント・ソード!

だが少年よ!本当にいいのか?敵が自分より弱いとは限らない!

敵モビル・スピリットの猛攻に窮地に追いやられるエン・ソルシオンの運命は如何に!

機動霊装アルガント・ソード 第二話 少年は央都を目指す!

コクピットシートに体を押し込みキーソードをエントリー・レーンに添える。


「キーソード・インサート‼エン・ソルシオン‼」


キーソードを奥まで押し込み搭乗者としての名乗りを上げる。


機体に理力が通い嵐の様なうねりが起こった。


「フェンサーモード!」


機体が立ち上がると同時にマントを関節負荷軽減用のリミッター・アーマーが振り落とされる。


フェンサーモード起動確認。


機体が完全に戦闘モードになったのを確認して大きく大地を踏みしめ腰だめに両手剣を構える。


「アルガント・ソード‼」






「昨夜は部下が世話になったな。」


外部用の拡声器から男の声がする。


「黙って通してもらう訳には行きませんか?例え僕を倒せてもそっちの修理費だって馬鹿にならないはずです。」


下手をすれば治せない可能性だってある。


機動霊装に関わる技術はほぼ失われているんだ。


「そうも行かない事情があるんでなぁ…。」


足元の岩を蹴る爆発の様な衝撃とともに向こうの機動霊装が突進して来る。


向こうから来るとか…三流のやる事じゃないか。


軽く剣を受けそれを右方向へ流し距離を取る…そのつもりが…


流したはずの剣が正確にこちらの頭部を捉える!


‼どうして?


慌てて距離を取り、足元を確認して戦慄する。


あの突進の最後の一歩が浅い…


つまりあれは見せ技…僕が剣を流す所まで想定して切り返しで首を撥ねるのが本命だった…


「ほう…避けたか?」


あの切り返しにしても僕を追撃する事は容易だったはず…。


遊ばれてる?


冷汗が止まらない…。


「もう良いだろう。改めて名乗らせて貰う。」


言いながら向こうの機動霊装が剣を下した。


「私はこの区画を管轄する北部方面軍第一大隊司令、バレント・ドラグニアである。」


何ですと?


「無許可での機動霊装の所有、移動は法により禁じられている。直ちに司令部まで同行を願いたい!」


これは…素直に言う事を聞いた方がいいのかな?


司令を名乗る男が剣を鞘に納めたのを確認したけどこちらは迂闊に離れ過ぎた。


「安心したまえ。こちらの言う事を聞いてくれれば剣も機動霊装も没収しない。」


ここから打ち込んでも相手の抜刀が間に合うくらいの距離はある。


抵抗したら今度は手加減してくれないだろうな?


「分かりました…」


僕は剣を下ろし相手に従う事を決めた。






立ち寄る予定だった町は思っていたより近くにあった…。


地形の関係で町明かりが見えなかっただけで森を出て少し歩けば明るいうちに到着出来ていたのだ。


そして町役場に連れて行かれた僕はそこで取り調べを受ける事になった…。


「まずは昨夜の無礼を詫びさせてもらいたい。本当に済まなかった。」


正面の事務机からバレント司令が頭を下げる。


一方軍服に着替えたルルフィは司令の横で頬を膨らませている。


「だって、あんな山賊が出る所でドラグニアの兵だって名乗っても信じて貰えないでしょ?」


でも色仕掛けで制圧した後に襲い掛かって来るのもどうかと思う…


そこに昨夜僕に武器を捨てろと命令した男が入って来た。


「照会が終わりました。ソラニア村の戸籍簿に石工のミネラ・ソルシオンとその子エン・ソルシオンの名前があります。」


彼は数枚の紙を司令の前に提出した。


「行商人から閉山した斜方石の鉱山を買い取って残りの石で工芸品を商っていたと言うのも確認しました。全て彼の証言通りです。」


バレント司令は資料に目を通し「ふむ」と顎髭を撫でた。


「と、言う事は鉱山所有者…一応は貴族だな…。」


「は?」


資料を持って来た部下が怪訝な顔をする。


「そういう事にしておこう。根無し草が機動霊装を持ってうろついてたなんて本国にばれてみろ?我々の責任問題になるぞ。」


「!…なるほど…小官も査定に響く事案は避けたい所です。」


司令が僕の方を向き真面目な顔になる。


「さて、ソルシオン卿。」


卿?いや、僕は貴族なんかじゃ…。


戸惑う僕に司令は笑いかける。


「そういう事にしておいてくれ。その方がお互いのためだ。」




結局のところ


『僕と義父さんは鉱山周辺の土地を所有し先祖伝来の機動霊装で防衛を受け持っていた。』


『また防衛任務を受け持つ事で納税義務を免除されていた。』


と言う事にされた。


これからも防衛任務を継続する限りソルシオン家はドラグニア公家の庇護の下存続を許されるのだそうだ。




「申し訳ありません…何から何まで…。」


深々と司令に頭を下げる。


「いや、構わんよ。こうしてくれた方が面倒が無いんだ。ところで聞いておきたいんだが……。」


司令は顔の前で手を組み低い声で僕に問う…。


「あのアルガント・ソード……何処で手に入れた?」


「分かりません…義父からは何も…物心ついた時には既に鉱山にありました。」


「では次に、何故外に出ようと思った?」


「義父の遺言です…旅をして自分の生きる場所を探せ…何処にも無かったら帰って来いと…。」


「剣も義父上から?」


「はい…。」


「なるほど分かった。では君に任務を授ける。」


明るい表情になった司令は立ち上がり、僕の方へ歩いて来る。


「まず央都へ赴き、正式に任官を受けてくれ。その後この国を一周してその様子を私に報告して欲しい。」


央都?国を一周?


「返事は?」


「はいっ‼」


思わず背筋を伸ばし大きな声で返答する。


「書類の準備に一週間かかる。それまで剣の稽古だ!機動霊装の戦い方をみっちり仕込んでやろう!」


言うや否や司令は僕の腕を掴み引きずって行く


「あきらめなさい♪お父様は言い出したら聞かないんだから♪」


その隣でルルフィさんが笑っている。


仕方ない…ここは有難く稽古を付けて貰おう。




一週間後


「今日までありがとうございました。行って来ます。」


司令の手から命令書と連邦銀行の手形を含めた旅のために必要な書類を受け取りコックピットに乗り込んだ。


「道中気を付けてな。ちゃんと帰って来て諸国の様子を教えてくれ。」


そう、これは僕が初めて受けた任務なのだ。


「軍服、似合ってるわよ。」


ルルフィさんの計らいで仕立てて貰った軍服にも身が引き締まる。


そしてコクピットハッチにドラグニアの識別章を受け


アルガント・ソードも新たな装いだ。


「ではお父様、行って参ります。」


え?と思う間もなくアルガント・ソードの横に一回り小さな機体が並ぶ。


ルルフィーさんのラボールだ。


「特使として同行させて貰うわ♪あんた一人じゃ何も出来ないでしょ?」


確かにその通りだけど…これ?大丈夫なの?


司令の方を見ると苦笑いをしながら手を振っている。


「それからこれ、密封命令書よ。」


コクピットを開けルルフィーさんの手から封書を受け取る。


「私には見る権限が無いから私に見えない所で開けてちょうだい。」


そういう事なら…とコクピットハッチを閉じ封書の中身を確認する


「……………………」


その中にはこう記されていた。


『ルルフィに会わせて貰いたい人物がいる。』


『詳細は彼から央都で聞いてくれ。』


『それと絶対にルルフィには知らせないように』


後は人の名前…とにかくこの人に会えばいいんだな?


僕はアルガント・ソードを立ち上がらせ央都に向かい最初の一歩を踏み出した。


初任務、無事達成して見せる!

用語説明

ラボール 製造の困難なモビル・スピリットの穴を埋めるべく作られた二足歩行ロボット。

オープンコクピットの作業用:ローラボールから密閉式コクピットの戦闘用:ハイラボールまで機種・用途は多岐に渡る。

また修理不能なモビル・スピリットの機体から再建された一点物もありノーブルラボールと呼ばれる。


続きを書くに当たり二話に分割し、ラストを変更しました。

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