第2話「あくまさんの言うことにゃ……鬼ください」
2X26年。世界の国々は互いに尊重し、交流して互いを高め合っていた。しかし、共存共栄よりも、自国ファーストを掲げている間に、立場の強いものが政治を、ひいては世界を支配する図式へと変化した。重い関税、国際的に発信される恐喝のような声明。終いには、正義の名の下に他国へ攻め入る国が続出した。
日本は政治家の発言に難癖をつけられ、海上封鎖が行われ、国民の生命を脅かす状態になった。日本政府は、法律上武力行使が行えず、大国の発案通り吸収されることとなった。
しかしそれは日本に限った話ではない。あちこちの小国が、ありとあらゆる手で吸収されていく。どの小国をどの大国が吸収するか、舌なめずりし手ぐすね引いて争い合う始末だ。
しかし、異変がおきた。世界中の人間が欲望と恐怖で満ち溢れた結果、人間の脳内にもともと備わっていた悪魔性ホルモンが活性化し続け、とある事態を皮切りに、人間たちの多くは、魔界から訪れる悪魔たちの依代となってしまう。
そして、世界は悪魔たちの住む時代へと変貌したのであった。
――魔導士は語る。
2X26年。世界の国々は互いに尊重し、交流して互いを高め合っていた。しかし、共存共栄よりも、自国ファーストを掲げている間に、立場の強いものが政治を、ひいては世界を支配する図式へと変化した。重い関税、国際的に発信される恐喝のような声明。終いには、正義の名の下に他国へ攻め入る国が続出した。
日本は政治家の発言に難癖をつけられ、海上封鎖が行われ、国民の生命を脅かす状態になった。日本政府は、法律上武力行使が行えず、大国の発案通り吸収されることとなった。
しかしそれは日本に限った話ではない。あちこちの小国が、ありとあらゆる手で吸収されていく。どの小国をどの大国が吸収するか、舌なめずりし手ぐすね引いて争い合う始末だ。
しかし、異変がおきた。世界中の人間が欲望と恐怖で満ち溢れた結果、人間の脳内にもともと備わっていた悪魔性ホルモンが活性化し続け、とある事態を皮切りに、人間たちの多くは、魔界から訪れる悪魔たちの依代となってしまう。
そして、世界は悪魔たちの住む時代へと変貌したのであった。
「爺さん、誰に向かって説明してるんだ」
「この事件を後に……」
「この事件を、じゃない! 今ここで起こっている事件を解決するのが先だ!」
「ではこの続きはまた今度。(ウインク) はい! はじめて下さい」
「ねぇ、一緒に大統領……ぼくの父をぶっ殺そうよ」
白皙の貴公子の発言に、異空間から現れた追手の護衛たちともども、全員がたじろいだ。
「そういえば自己紹介が遅れたね。僕の名前はベリエル。魔界の7人の王の1人、ベリアルの息子さ。君のような男を探していたんだ」
どこからか黒猫がぬるりと現れ、彼の背中を軽やかに登ったかと思うと肩に落ち着いた。王子・ベリエルの細い指先に喉を撫でられて目を細めている。
「王子! 何を言っておられるのですか?」
「気は確かですか? こいつは大統領暗殺未遂で、発見しだい即死刑ですよ!」
「黙らんかいアホども。君らうるさいで。死刑なんて誰が決めたんや? ベルエル王子の話は黙って聞かんかい。一応教えといたるけど、今日来てたあの大統領、影武者で本物やないで。……にゃ。」
(く、黒猫がしゃべった? 可愛いのに喋り方コワっ。あと最後の何?)
「数年前、人間を依り代に僕たち悪魔たちは降臨した。人間たちは、最初僕たちを恐れ、戦おうとしたが、それが無謀だと知ると魔と融合し、悪魔側の人間として地上に生きることが許された。後の人間は悪魔の食料として家畜にし、『養人所』に収容されている」
「…………」
「…………」
「そこで君だ」
俺、鬼童丸は思わず息を呑んだ。王子の目がまたも怪しく光ってこちらを見つめる。
「良い体をしている」
「え……!?」
「君、鬼と人間の間に生まれた半妖なんだって?」
(あ、なんかちょっと、勘違いしちまった……)
「半妖、特に鬼の血が流れている者は、魔力の抵抗力が高い。僕の父親、七大魔王・ベリアルをぶっ殺すのに、君の協力が必要なんだ」
「!???? お前何言ってるん……」
「そう、君との子が欲しいんだ」
王子が涼し気にさらっと告げた言葉に耳を疑った次の瞬間。
「駄目だ!王子は御乱心だ! もう殺すしかない!」
「この猫もだ! やっちまえ! なんかこわいし!」
王子の発言に割り込むように、護衛たちが凶悪な形状の斧や戦鎚を振り上げ、襲いかかって来る。
「ベリエル! 危ない!!」
「ありがとう鬼童丸! 僕の名を呼んでくれてうれしいよ」
王子は悪魔たちの武器を、楽しげに、大げさに、優雅に交わしながらウインクを送って来る。そして両腕を広げた瞬間、悪魔たちは糸の切れた操り人形のように、バラバラになって地面に崩れた。
地面に溶け崩れる悪魔を尻目に、王子は流麗な動作で顎に手を添えた。
「そうだな、まず仲間が欲しい」
「ちょ、ちょっと待てよ、勝手に話を進めるな! 子がどうのとか理由がわからない! 挙句の果てに大統領、七大魔王の1人ベリアルを倒す!? 何寝ぼけているんだ! 勝てるわけないだろ! 大統領にして大魔王だぞ!」
「ああ、それだけど、勝てちゃうかもね」
「爺さん?」
「まずは人間を見つけなさい。さすれば、お前たちに良い『本』を授けよう」
つづく




