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Dawn

朝だ。

開けっ放しのカーテンにより日差しが部屋を照らしている。


─────────「Dawn」─────────────


二人はまだ寝ているのだろうか、

とりあえずリビングに向かおう。


、、やはりドアに鍵は掛かっていない。


ドアを開けて廊下を歩く。

廊下にも1つ2つと観葉植物が置いてある。


定期的に大きな窓が見える。

プライバシーはどうなのかとも思ったがこの家には大きな中庭があるようだ。


リビングに着くが二人の姿は無い。

テーブルには数枚レーズンのクッキーが置いてある。

相変わらずコーヒーの香りが漂っていた。


どうせなら家の探検でもしようか、

そんなこと出来るほどの状況ではないが少し家の造りも気になる。

Lozxの時のように閉じ込められたことを想定しても家の構造は把握したい


歩いているとフローリングの床が微かに軋む。

少し進むと書斎のような部屋があった。

本棚が壁一面に並んでいて、机の上には紙が積み上がっている。

乱雑に見えるが何か規則性があるような気もした。Beeらしい。


家はモノトーンなモダン調で辺りを見渡すと相当広い。

こんなに広い家に一人で住んでいるのだろうか。


窓から見える中庭も家一つ程度の広さはある。

少し小川のようになっているのも見える、何か生物を飼育していたりするのか。

まるで平安貴族が暮らす住宅のようだ。


リビングに戻る。

キッチンと繋がっていてコーヒーメーカーが二台置いてある。

二台。なぜ二台も必要なんだ。


「シューッ」


何かの鳴き声と共に足音も聞こえる。

「ああ、もう起きていたのか」

Beeの声だ。


そういえばこの家にサーバーやPCなどは全く見当たらない。

Beeの職は知らないがTFAやOrcaの開発をしたということはある程度開発をする環境が必要だろう。


「あいつがいないし話でもしよう」


「あいつとは?」


「昨日の運転手の奴だよ、年のせいか頭が固くて面倒くさいんだよ」


なんと言えば良いのか分からない。

私もそうは思うが同情して良いのだろうか


「あ、そうだ。突然で申し訳ないが一時君にはアメリカへ引っ越してもらう」



何を言いだした、バカなのか?

いやバカと言うか、、意味が分からない。


「え?」

思わず口に出てしまった。


「アメリカというのは曖昧だな、正確にはマンハッタンだ。あいつの息子がいるから面倒くさいがまあ仕方が無い。日本に居たところでだ。」


「私の家はどうなるんだ」


「もうあの家は使えないだろ、そもそも四畳あるかないかという部屋でよく生活できたな。

まああっちの部屋も広いわけではないが前よりは全然広いだろう」


「私に対する保護の観点から行けばルームシェアはあまり良くないんじゃ?」


「勿論一室買ってあるよ。一戸建てでも良かったが手続きが面倒くさいんだよね、希望なら今から変更するけれど?」


もう家を買ったのか?そもそもそんなに金があるのか?

人に許可を取らず勝手に家を決定しないでほしいが、今はBeeの財力に驚きだ。


「あっちに行ってからは君の自由だ。ただそれまでは前と同じように私の監視下で生活してくれ」


ようやく自由になれるのだろうか?

私の監視下というのが気になるがまあこの1~3日間のことだろう。


言い終えるとBeeはもどかしそうにこちらを見つめる。

「渡して置きたい物があるんだ」


そう言うとBeeは机にある箱から慎重に何かを取り出し、私に差し出した。


「このUSBには1000rlの入ったウォレットファイルが入れられている。現在1rlの価値は13000$、日本円にして約200万。この件に巻き込んでしまったことに対する少しながらのお詫びだ。」

「あいつが起きればもう君は行くことになる、それから私たちに会うことは二度と無いだろう。」


200、1000、、単純計算で20。

私はBeeからそのUSBを受け取った。

驚くべき金額だし、私自身も驚いてはいるが何も感じない。

短い期間の出来事であったが、このすべては1つのUSBで始まりUSBで終わるのだろうか?

何か切なくも感じるように思えるがもうよく分からないとしか言いようがない。


「それと、、」


Beeが言いかけた時だった。

「起きていたのかGr3nja君」


階段を下りる音がした。

昨日の男だ。

小声でBeeに隠せと囁かれたような気がしたから、USBは付属していたケースにしまい胸ポケットに入れた。


「悪いが私達には時間が無いんだ、Beeから説明は受けているだろうしそろそろ家を出よう」

男が明るく話す。その言葉には何か裏があるようにも感じた。


「この鞄にはパスポート、航空券、クレカなんかが全て入っている。まあ行きはAlphasが案内してくれるだろうからそこら辺は彼に聞いてくれ」


彼は腕時計を確認した。

何か急いでいるのか、先ほどから私を急かすように話しているのはその所為か?


さっきのBeeの発言、「それから私たちに会うことは二度とないだろう」というのが本当なのであれば

私は何も知らされないまま、何も解決していないままこの件から手を引くことになる。

「この件」というのが何かすらまだ分かり切ってはいないのに。


私は玄関へと向かわされた。

「詳しいことは全てAlphasが教えてくれるだろう」

男はまたそんな事を言った。


外へ出そうとする。

何も準備は出来ていない。

いつだってそうだ。


ドアが開くと鞄を持った男が立っていた。

茶色のレザーコートを羽織っていて、非常に品を感じる立ち姿だ。


「さあ出発しようか」


そう言われてから二人の足音はアスファルトに溶け込んだ。


「Alphasと呼んで欲しい。私の事はBeeから聞いているかな、」


「明確なことは分からないが、『プロジェクト仲間』としか言っていなかった」

そう答えると、Alphasは少し寂しそうに笑った。


少しの間無言が続く。

詳しい事はAlphasが教えてくれる。聞きたいこと考えたが頭に浮かばない。

BeeやTFAについては今私の隣にいる人間のその顔が、すべてを物語っているように思える。


「OrcaとBeeについて、貴方の知っていることを教えてください」

そう言うと、Alphasがこちらを向く。


「分からないよ。私には何も」


答えは単純だった。


「ただ一つ言えることとすれば私にとってOrcaは敵で、Beeは親友だった」


風の色が変わるように感じる。


「彼は変わってしまったんだ。平和主義で誰よりも自然を愛していた、そんな彼は今『空っぽ』の人間だ」


彼の声が少しかすれている。

少しして私に一つの封筒を差し出した


「Beeにはきっと『これ以上この件に関わるな』なんてことを言われているだろう。

ただそれでも何か疑問が残るのであれば、もしくはまたこの件に手を染めようと思うのなら

その時はこの封筒を開けてくれ」


「そんな、わざわざもう関わりませんよ」


「それなら好きに捨ててもらっても構わないよ。」


彼は笑顔でそう言った。

ここまでの数日間、実際の時間は短くとも私にはとても長く感じた。

ようやく終わるというのに自由をドブに捨てまた関わるなんて相当な馬鹿でない限りしない。


一度も見たことのない建物が私とすれ違う。

知らないはずなのに歩き馴れた道のように足は進む。


何か悩もうかとも思ったが「解放される」ということを考えると何か無気力になる。


駅の改札を抜け、電車に乗る。

電車は各駅で止まるが駅から駅へと移り変わる速さはまるで数秒のように感じる。


空港に着く。

保安検査場を通過する。


空港のアナウンスがぼやけて聞こえる。

飛行機に乗り込む。席に座る。


Alphasが隣で腰を下ろした。

話すことも無いが一つ気になった点がある。

「先程私にBeeが『空っぽの人間』だと言いましたよね、少なくとも私にはそう見えませんでした、どういう意味でしょうか?」


彼はすぐに外を見つめながら言った。


「私とBeeは大学の付き合いで、今から3年と半年前Beeは『TFA』というアプリの開発プロジェクトを立てた。その時の彼は開発に対し非常に意欲的で輝いていた。」

「そして2年前。開発メンバーの一人が突然死亡した、いや殺害された。」

「当時BeeはTFAオーナーとして世間から憎まれていたことのストレスなのか開発から手を引いていた。そこで友人の死という現実を知り、彼は壊れてしまった」

「今や彼には膨大な資産と時間がある。ただ欲を失くしてしまったのか、あんな広い家に一人で引きこもって、稀に人から無償で依頼を受けるくらいを生きがいにしている。良いように使われているだけだ」


話を聞くと、「空っぽ」だと言った意味が少し分かったかもしれない。

過去の姿とのギャップ、落ちぶれてしまった友人を見て彼はそう思ったのだろう。



窓の外はずっと雲だった。

雲の形が変わっていく以外何も変わらない。

眠ったのか眠っていないのかすら、もう分からない。



気づけば機体が止まっていた。

窓の外の景色が変わっていた。雲ではなく、滑走路だ。


飛行機にアナウンスが流れる。

席を立つ。


「家までは私が案内するよ」

Alphasが言った。


入国審査は彼の後についていくだけだった。

列に並ぶ。前の人間が進むたびに一歩ずつ足を動かす。

審査官に何か英語で聞かれたが、Alphasが代わりに答えてくれた。私も話せる為わざわざ答えなくても良いのだが。


パスポートを返され、前へ進む。

税関を抜けると急に人が増えた。

様々な言語が飛び交っている。日本語は聞こえない。

自動ドアが開くと外の空気が流れ込んできた。

東京とは違う匂いがした。


空港を抜けると私達はタクシーに乗り込んだ。

乗り込んですぐに動き出す。

昨日の運転手がいかに丁寧だったかを思い知らされる。


窓の外は見たことも無い景色だ。日本でも馴染みのない道を歩いたが、それとは違う感覚だ。

少し見惚れている内にもう家のすぐそばに着いたようだった。


「部屋は『#201』だ。最低限PCや食料は買ってある」

「私はこれから会わないといけない人がいる。それではさようなら」


それだけ言って彼はまたタクシーに乗り込んだ。


201、、。

エレベーターへと進む。

2のボタンを押してすぐにまた扉が開く。


白い木のドアに201と書かれている。

多分ここだろう。

鍵が無いと思った為、服や鞄を探ると奥に入っていた。


ガチャと音を立て鍵が開く。

部屋は広く温もりを感じる。


厚い服を脱ぎそこら辺に投げる。

洗濯は後でいいだろう。

そしてこれでようやく全てが終わったのか?



引きこもる場所が日本からアメリカへと変わっただけの問題だ。

金もあるし時間もある、、よく考えれば私は何がしたいんだ。


ベットで横になる。

もしもあの日、スマホに来たメールを開かなければ今どうなっていたんだろう

BeeやOrca、Lozxなんて存在は知らなくて、、

あの日の停電で何を感じたんだろう。

「ハッカーの襲撃」「発電所の事故」そんなことが原因だと仮定でもするのだろうか?


そう言えば未だに知らない事ばかりだ。

今少しでも接触してしまった以上、私には真実を知る権利、義務があるのでは?


ふと封筒を開ける。


電話番号と大きなQRコード、そして右上に何かのロゴが書かれている。

そして下には、、スポンサー?


QRコードを読み取ると一件の画像がダウンロードされる。

「CuteCat.png」

黒猫の画像。左上にさっきのロゴ。

ステガノグラフィだろう


わざわざ分かりづらくするのか。

私がそこら辺に捨てる可能性を考慮してか、

ソフトで解析するとリンクが書かれている。

すかさずコピーしアクセスすると次はPDFファイルのダウンロードが始まった。


ファイルの内容はざっくり以下の通り。


「もしも封筒をAlphas、Convallaria以外の人間から得たのならこのファイルは消去してください。」

「この文章にはO3(Organization of Orcavist)へのアクセス方法が記述されている」

「OrcaDBにアクセスし、ディスカバリーに『Orcavist/main」と入力してください」


聞いたことのない固有名詞が多く正直良く分からない。

まずConvallaria。

Alphasと並べているから恐らく人物名だ。


次にO3。

「Organization of Orcavist」の略だとは書かれているがそもそもそれが何か分からない。

Orcavist組織、、Orcaと言っている事からそこらに関係しているとは思うが。


ひとまず説明の通りにやってみることにした。

OrcaDBへアクセス。これは127アカウントにログインすれば良い。

次にディスカバリーでの入力。

打ち終えEnterキーを押すと、確かに存在した。


日本語や英語、あと何語かは分からないが複数の言語でチャットが行われている。

私の入室に気が付いたのか一人のユーザーが私に向かって発言した。


「私がAlphasです」

「色々と急で申し訳ありませんがConvallariaが出所したということで、彼にあなたを合わせておいて方が良いと思いまして、指定した場所に来て頂きたいのでマップを送信します」


少ししてDMにマップが送信される。

現在地から2km。調べる限り随分高そうなレストランだ。


忙しい毎日が終わるのはまだまだ先かもしれない。

それでは支度をしよう。

この先や過去については続編やスピンオフを出すかもしれません。

力尽きました。作文の勉強します。

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