Sixth.相棒同士
第七都市制圧作戦は怪我人こそは出たが、犠牲者は出ることなく順調に終わった。
現在、第七都市はすでにリリースの管理下に置かれており、そこにいた住民にもリリースの様々な支援が送られている。これで、第七都市は活気溢れる都市に成長していくはずだ。
そして、本作戦の先鋒を務めた炎熱分隊のピナと、見習い戦闘員であるラファルは作戦の成功を祝い、同居人のシエルと共に自室で打ち上げをしていた。
「今回は全然僕の出番がなかったね。まあ、君が隊で動く時はいつもそうだけど」
「拗ねてるの?別にいいじゃん、好きな本たくさん読めたんでしょ?」
「まぁね、あれは充実した時間だったよ。うるさい邪魔も入らずに集中出来たのはいつぶりか...」
ピナとシエルのやり取りから、二人の仲の良さが見て取れる。最近リリースに入ってきたばかりのラファルは、そんな二人を少し羨ましく思う。
今回の作戦で、ラファルはリリースという組織の覚悟をその身で感じ取った。いつか、自分も自然とこの輪に混ざれるようになりたいと、そう彼女は願った。
「あの、これから私はどうすればいいんでしょうか?手続きとかしないといけませんよね?」
「ああ、それはね...」
ラファルがそう聞くとシエルが説明を始めようとしたが、それをピナが手で止める。
ピナは何やら真剣そうな顔で、ラファルに話しかけた。
「あのね、ラファル。まだラファルはここに来てほんとに日が浅いでしょ?だから、まだ決めるのは早いと思うんだ」
「でも、私はリリースの為に戦いたいんです!私を助けてくれた、その恩返しをしたい」
「リリースの役に立つ事は戦うことだけじゃない。物作りや、クリエイティブな仕事、営業とかのサービス業だって、立派な仕事だ。皆好きなやり方でリリースの為に頑張ってくれてる。だから、色んなものを見てからでも遅くないんじゃないかな?」
ラファルを心配しての事だろう。ピナは、頑なにラファルを戦場から遠ざけようとしている。
だが、彼女の言い分も正しい。ラファルはまだこのリリースの事をほとんど分かっていない。もしかしたら、別の好きな仕事が見つかるかもしれない。
ここリリースは人々の生活を第一優先に考えている。だから、戦いしか知らない彼女に、他の何も知らないままそれをさせる訳にもいかないのだ。
「分かりました。じゃあ、明日一緒に街を回りましょう!それでもし、私の考えが変わらなかったらピナさんも諦めてくださいね?」
「そ、それはもちろん!って、私は別に戦う事が駄目と言ってる訳じゃ...」
「分かりやす過ぎだよピナ。心配そうにしてるのが顔に出てる」
「あははっ、バレてたか...」
ラファルの意志は硬い。ピナが言葉だけで説得しようとしても決してその意志が折れることはないだろう。
だからと言って、明日が楽しみじゃない訳ではない。憧れの存在であるピナとの、初めてのお出掛け。それだけで胸が高なって止まない。
「明日はたくさん遊びましょうね!ピナさん!」
「ねぇ、さっきから僕の事は蚊帳の外かい?君達だけで遊びに行くだなんて、少しはルームメイトである僕の事も考えたらどうかな?」
シエルがそう言うと、ラファルとピナは目を丸くして彼を見詰める。
元々長い付き合いであるピナは分かるが、まだ知り合って間もないラファルですら彼の発言には驚いた。
シエルは絶対に行きたがらないタイプだと思っていたからだ。
「なんだ、行きたいならそう言えばいいのに。私が誘ってもいっつも行かないじゃん。あっ、もしかしてラファルに気が...」
「違う、たまには僕も羽目を外したいだけだよ。それに、新しい本も買いに行きたいしね」
「絶対にそれが目的ですよね」
案外寂しがり屋なのかと思ったら、そうでもない。
活発で明るい性格のピナに、いつも冷静でネチネチしてるシエル。そんな二人に囲まれて、今ラファルは生きている。
明日は初めての二人との外出。これからは、今まででは想像出来なかった色鮮やかな日常が待っているのだ。
◇◇◇
翌日、三人は予定通りに外出し、早々にシエルは別行動をしてラファルとピナは街の観光を楽しんだ。
至る所にある色鮮やかな服屋に、様々な香りのする飲食店。その他にも家具屋や日用品店、マニアックな趣味の為の専門店など、ラファルが住んでいた都市には無かったものがたくさんあった。
「ねぇ、二人とも。早く帰らない?もう僕用は済んだんだけど」
「あと5分だけ待って!これで最後だから!」
多種多様な施設の中で、現在三人はゲームセンターにいる。ラファルとピナがゲームに入り浸っているのだ。
「喰らえラファル!はめ殺しだ!」
「ちょっ、ズルいですピナさん!あっ、HPが削れて...!」
二人がやっているのは隣の人と対戦出来る格ゲー。いくつかあるロボットを操作して戦うゲームだ。
リリースに来た者は最初はゲームにハマる傾向があり、ラファルももれなくその内の一人。そして、ピナはリリースに来てからずっとゲームをプレイしている上級者だ。
「あのさ、二人とも。そのゲーム始めてもう二時間だよ?飽きないわけ?」
「飽きる訳ないじゃん!だって、ゲームは...」
「人生、だもんね。ピナ」
三人の背後から声がして、一人の少女が姿を現す。
紫色の髪をポニーテールにした背の低い彼女は、リリースの司令官の一人である"感電"リキッド。
その身なりはいかにもゲームをしてそうなサイバー女子って感じだ。
「リキッドさん!どうしたんですか、こんな所で?
「忘れた?ここは私の庭だってこの前教えたよね。てか、君が噂のA判定の子?確か名前は...ラファエル?」
「ラファルです!リキッドさんって、確か司令官の方でしたよ、ね...?」
リキッドは超至近距離でラファルの顔を覗き込む。単に興味津々なだけだろうが、やけに真剣な顔だ。
「えっと、どうかされました?」
「いや、何歳かなって思ってさ。私とピナは17歳で同い歳なんだけど、あなたはもう少し歳下?」
「はい、15です。もしかして、このゲームセンターに年齢制限とかありました?」
「いや、ただもし戦闘員になるのなら最年少になるなって。最年少にしてA判定の天才...うん、いい響き」
子供心のある人なのだろう、純粋な楽しさで溢れた表情をしている。
ラファルが最初に会った司令官は冷静沈着なフラムだったからこそ、少し司令官への印象が変わってくる。
「で、結局なりたいものは決まったの?どうせその為に三人で動いてんでしょ?私、こう見えて勘はいいの」
「流石、司令官殿は鋭いね。その為に来たっていうのにこの二人は...」
「あなたには話し掛けてないし、帰りたいならとっとと帰れば?まっ、そこの新人ちゃんが心配なだけだろうけど」
「なっ!?僕はそんな事...!」
リキッドは真剣な瞳でラファルを詰める。
彼女の瞳は、一人の司令官として相手を見極める瞳だ。司令官としての経験は浅い彼女だが、その実力は確か。
もしラファルが戦闘員として生きるというなら、決して生温い試練は用意しないだろう。
「私は、やっぱり戦闘員として皆さんと一緒に戦いたいです!私はリリースに、そしてピナさんにこの命を救われました。私に戦いの才能があるというなら、救ってもらったこの命を捧げたい」
「ふ〜ん、確かにこの目は嘘をついてないみたいだね。良いよ、私は認める。ただ、これからは命を捧げるなんて言葉は使わない事だね。じゃ、お邪魔したね三人とも。ゲームを楽しむんだよ〜!」
リキッドはそう告げて、好きなゲームもせずにその場を去る。
ラファルは自身の決意を告げた。だが、その後ろでは不安で胸を締め付けられている少女がいた。
命を捧げる。その言葉の重さをラファルは理解している。それを分かっているからこそ、ピナもラファルを気にかけるのだ。
それでも、ピナに人の未来を左右させる権利は無い。だからこそ、ピナは最後にラファルに問う。
「ラファル、本当にそれでいいんだね?」
「はい、ピナさんに助けてもらった時から決めてた事ですから」
「なら、私ももう何も言わないよ。その代わり、しばらくは私と一緒に行動してもらうよ?」
「もちろん!なんならずっとその方がいいです!」
ラファルが戦闘員になる事を反対していたピナだが、こうなってしまった以上はもう何も言えない。
ラファルが戦闘員になるのなら、ピナは傍で彼女を守ろう。ピナと一緒に戦うのなら、ラファルは彼女を支えようと、二人は心の中で誓った。
もちろん、ピナの補助員であるシエルもそんな二人の支えになる。それが、相棒というものなのだから。




