117_ボインのお姉さんとの約束なら忘れない自信がある
「では、今日はこの辺にしましょう。それからくれぐれもこの能力については内密にですからね!!」
「…勿論ですよ、ゴーグ…ラビリさん。」
ラビリさんが真・ゴーグレ先生に目覚めてからの事だけど、スキル強化切れまでの1時間、みっちりPCの使い方を説明して、それから解散となった。
今後ラビリさんにはPCの使い方に慣れてもらう為に必ず1日1時間練習をしてもらう事となった。マニュアルはゴーグレ検索でプリントアウト済み。
ちなみに『スキル強化芋』については毎日朝の店長室に『生成場所指定』で送りつける事にした。なお、ラビリさんは『絹甘スイート』をご所望だ。
僕らの用事は済んだし、商業ギルドに寄ってから孤児院に戻ろうとした時に、ラビリさんがこんな会話を切り出してきた。
「コンヨウさん、次の紫の日なのですけど、こちらにエレフさんを連れて来て頂くことはできますか?」
「エレフさんですか?多分できますけど…どうしてですか?」
僕の質問にラビリさんは少し呆れた様子で答える。
「この前、あなたが言い出した事ですわよ。スイートポテトを『ラビアンローズ』で作るって。」
アッ!そう言えばそんな事言ってたね。最近、あのビッチ司教とかインパクトが強い出来事が多かったから忘れてた。そんな僕の反応を察したのか呆れた様子を更に深めながらラビリさんが言葉を続ける。
「忘れてたって顔ですわね。まったくレディとの約束を忘れるなんていい度胸ですわ。」
「すみません、ボインのお姉さんとの約束なら忘れない自信があるんですけど。」
「このガキ、一回絞めた方が良さそうですわね。」
「同感です…その時はわたしも協力しますよ。」
ヤバい、ぺったん娘二人の逆鱗に触れてしまったようだ。男がおっぱい好きで何が悪い!エッ?そういう問題じゃないって。すみません、土下座しますから、ガスだけは~~~!!
こうして僕は女性二人からの冷たい視線を一身に浴びながら『ラビアンローズ』を後にする。商業ギルドへの道でパフィさんが一言も喋ってくれなかったのが結構きつかった。
さて、商業ギルドには何をしに行ったのかと言うと、
「いらっしゃいませ、コンヨウさん。本日はどのようなご用件でしょうか?」
「こんにちは、アズラさん。預金の引き落としと振込をお願いします。それからマイトさんがいたら取り次いで頂けますか?」
僕がアズラさんに用件を伝えるとアズラさんが笑顔で対応してくれる。
今回はクズミ様に『大豆製品加工』スキルを使ってもらうのでその為の謝礼として40万フルールを引き落とし、ゼブラ運輸へ輸送費10万フルールを振り込まないといけない。
合計で50万の出費、結構痛いけど醤油に味噌にお豆腐の為だと思えばむしろ笑顔で支払える金額だ。おかげで今の僕って素寒貧なんだけどね。
まぁ、それでも不労所得があるからすぐに元通りになるとは思うけど、どうも散財する癖が付きかけているみたいだ。こりゃ戒めの為にも暫くは節約だね。
「やぁ、コンヨウ君。久しぶりだね。」
さて、お金の遣り取りを無事に終えたところでマイトさんの登場だ。
「こんにちは、ベッドの上では狼のマイトさん。」
「ぶふぅ~~!!誰がそんな事を!!」
「今日、『ラビアンローズ』に面接に来たミミーさんに聞きました。」
「…そうか、君は『ラビアンローズ』の関係者だったね。」
僕のアメリカンジョークに盛大に吹き出しながら狼狽するマイトさん。
冷静沈着で清濁噛分ける強者のマイトさんがこんな反応をするのは珍しい。
僕がニヤニヤしていると、途端にマイトさんの目つきが変化する。
「君は『ラビアンローズ』ではそれなりの地位にあるのだったね。」
「いえ、ちょっと経営者と知り合いなだけです。」
「そうか…いいかね!もし君がその立場を利用して妻にいかがわしい事をしようなどと考えたら…殺すからね。」
「はい~~~~ぃ!!勿論、そんな事微塵も考えておりませんのでご心配なく~~~~~!!!」
「……大丈夫ですよ。コンヨウさんは巨乳好きのおっぱい星人ですから。」
そうですよ~。僕はEカップ以上が大好きのおっぱい星人です。だからAAAのミミーさんには一切興味はございませんよ。
アッ!マイトさんの殺気は消えたけど今度はパフィさんから殺気が…僕どうしたらいいの!ここは必殺話題のすり替えだ。
「マイトさん。この前のゲッスとズンダダの件のお礼をと思いまして、ささやかではありますがお納めください。」
そう言いながら僕は一つの木箱をマイトさんに差し出す。
「これは…あぁ、わざわざすまないね。」
ご存じ『スイートポテト』だ。前来た時にマイトさんが奥さん、つまりミミーさんと一緒に食べたいって言ってたもんね。
僕が用意したのはお土産用の4つ入りのやつで2人で食べるにはちょうどいい量だ。
マイトさんはやや強面(に僕は見える)の表情を緩ませながらそれを眺める。
さて、そろそろお暇するかな、と思っていたんだけど。
「すまない、コンヨウ君、パフィさん。少し時間をくれるかな?」
ここでマイトさんが少し畏まった顔をしながら僕らを引き留める。
僕らは黙って頷き、席に掛け直す。
「実は、このナプール、それから首都リンガの方でもだが、君達の事が噂になっている。
具体的には『マードック・ザ・ワイズマン』が率いる一団がナプールの悪党を退治した上に珍しいお菓子を作って荒稼ぎしている、って感じだね。」
「『マードック・ザ・ワイズマン』??」
僕の疑問の表情にマイトさんはしくじったという様な表情を浮かべる。
「…そうだな。君は知っておくべきだろう。『マードック・ザ・ワイズマン』ドクさんの二つ名だ。
彼は様々な逸話を持つこの辺で一番の賢人なんだ。」
僕はマイトさんの説明に黙って頷く、まぁ逸話についてはきっと多すぎて話せないんだろうね。
あの人がただ者じゃないのは分かっていたからその事については余り驚かない。問題はその大物が悪党退治と何故かお菓子を作っているという噂が流れているって事だ。
「噂の出所については分からないが、少なくともギルドではないと思う。彼が『マードック・ザ・ワイズマン』だと知っているのは私だけだからね。」
「つまり、ギルドや僕らの知り合いから情報が流れたわけではないと。」
「そう考えるのが妥当だろうね。一番怪しいのは死んだ事になっているゲッスだろう。」
「その口ぶりだとマイトさんも僕と同じ考えなんですね。」
「えっと…この前話していたゲッスが生きているかもって奴ですか?」
おっ!パフィさんもこの前カジツ亭でドクさんと僕が話してた会話からその結論に達していたみたいだね。感心感心。
そう、ゲッスは生きている。しかも女神様の保証付きだ。そのゲッスが噂を流している。嫌な予感しかしないんだけど。
「おそらくゲッスの狙いは国を使って君達にちょっかいを掛ける事だろう。
ナプールを追われた事への腹いせなのか、それとも他に目的があるのかは分からないが気を付けた方がいい。」
「ご忠告、ありがとうございます。集落のみんなと話し合ってみます。それでは僕らはこれで。」
「あぁ、それじゃまたね。」
心配してくれるマイトさんにお礼を言いながら僕らはその場を後にする。
まったく、腐れビッチ司教だけでも大変なのに変態狐の事まで。そして挙句の果てに国からのちょっかいの可能性。
最強集落の準備。急ぐ必要がありそうだね。




