28話 オドロの谷~リルル視点
私は日常と戦闘態勢にはいったときとは全く違う。
副隊長、戦闘になると表情変わるよね、日頃はおどおどとしているというか。頼りない?
以前パーティーメンバーにいわれた言葉だ。
「開口せよ、人食い花」
地面から大きくとげとげしいツルがはえてきた。ツルの先端は丸く大きくなり、二枚貝のような口になった。口のまわりには無数の棘がならんでいる。
人食い花は口を2,3度パクパクさせたかと思うと、勢いよく女のいる方向に向かっていた。
「この人食い花に飲み込まれたら最後。口の中の強烈な酸で人体を溶かす。
骨も残ると思わない方がいいわよ」
人食い花はぐわっと口をひらいたまま、地面ごと飲み込んでしまった。
やった。少しかわいそうだけど、リエちゃんを脅かすやつは排除しないと。
しばらく地面にかじりついたままの人食い花だったが様子がおかしい。
ジュジュジュジュジュジュ……
人食い花が音をたてて溶けていくのが見えた。
「まったく、ひどいことするじゃない」
溶けた人食い花の中からでてきた。また傷ひとつついていない。
「くっ化け物め」
「精神毒」そういうと今度は両手を前にだした。
その瞬間、さきほどの攻撃とは比べものにならない広範囲に毒が迫ってきた。
避けられるか。
私は左に回避しようと身を投げだした。
敵の能力を甘く見ていた。なんとかよけられた。
ふと左足に違和感を覚えた。
「なっ、毒がかかっている。」
その瞬間、目の前が暗くなった。
私は東地区のはずれにある小さな村の生まれだ。幼いころの私は決して裕福な家庭ではなかったけれど、両親と仲良く暮らしていた。
私には年の離れた姉のメルルもいたけれど、私と違い早期にスキルが発現した。数年前に王宮の直属部隊の試験を一発で通って以来、王宮で生活している。それから東地区へは戻ってきていない。
ある日、私はいつものように森のほうで同じ年くらいの子たちと遊んでいた。
かくれんぼをしたり、おままごとをしたりと日によってさまざまだった。
今日はみんなでかくれんぼ。最初は私が見つける側にまわり、隠れている他の子たちを探すといった具合だ。
「みんなどこに隠れているのかな」
しばらく探しながら歩くと木陰に人影がみえた。
あの髪型はララちゃんだ。私には気づいていないみたい。うしろからこっそり近づこう。
私は親友であるララちゃんに悟られまいと距離をつめた。
「ララちゃんみっけ」なんのきなしにララちゃんを指さした。
その瞬間、私の指先から幹がするするっと伸びたかと思うと、ララちゃんの肩を突き刺していた。
「どうして」ぐったりとするララちゃんを抱きかかえた。肩からは血が流れている。
「早く大人の人を呼ばないと。このままじゃララちゃんが」
大人の人を呼びに行くと、数人がこぞって、森へ行き、ララちゃんを抱えて戻ってきた。
「ララちゃん、大丈夫。私が私が」目から涙があふれてきた。
「大丈夫。しばらく時間はかかるけど、命に別状はない」
そのまま抱えて去っていった。医者のところへいくのだろう。
それからさきほどあったことについてその場にいる大人たちに話した。
「そうか。リルルにもスキルが発現したか」
「姉もスキルもちだったわね」
「制御ができてないから危険だわ。自分の子供とは一緒に遊ばせられない」
周りのおとなたちからひそひそと話声が聞こえる。
「リルル」
すぐさまパパとママも駆けつけてくれて私を抱きかかえた。
「いいかい?もうスキルを使おうとするな。お前のスキルは使おうとするたびに周りを危険にする。お願いだから」
「うん」
スキルなんてなくなればいいのに…
その日を境に私は遊ぶ友達はいなくなり、ひとりであそぶようになった。きっと大人たちは私に近づくなと子供たちに言い聞かせたのだろう。
ある日森へひとりで遊びに行った帰り道。あたりはもう暗くなりはじめていた。
「今日の晩御飯はなにかなー」
ガサッ
少し先で物音がした。「なにか小さな動物がいるのかな?」
恐る恐る近づいてみると、そこには10体くらいの緑色の体をしたトロールが棍棒をもって歩いていた。
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