27話 オドロの谷~リルル視点
「じゃあ私行ってくる」パーティーメンバーをみた。
「リルル副隊長、気を付けていってください」
私は独り地表から大きな木を生やして、木の幹につかまった。その幹を下へスルスルと伸ばし谷底へ降りて行った。
ここに魔石があると聞いてきたが、幹部もいるとのうわさだし、パーティーメンバーを危険にさらしたくない。
なによりあまり大人数で木の幹につかまって降下すると折れそうで怖い。ひとりでも怖いのに…下を見ないようにしよう。
ものの数秒で谷底まで到達した。
「もう日暮れか。怖いよ。リエちゃん。やっぱり朝になるのを待ったほうがよかったかな」人の気配はないが怖さを紛らわすために意識して独り言を言った。
お化けは怖いし、虫も怖い。王宮にいるときはリエちゃんがいたのでどうにかなったけど、やっぱりひとりだと心細い。
お姉ちゃんが出発前にこの谷にはラミエル族が住み着いているとの話をしていたけど…やけに静かだ。
もしかして私降りる場所間違えた????
あたりを見渡した。だれかもうひとり連れてこればよかったよ。
とりあえず、私は西のほうへと歩き出した。
しばらくすると向こうから男が2人走ってくるのがみえた。
人???ラミエル族かな? こんな夕暮れの谷にひとがいるなんて怖い。とりあえずそのまま軽く会釈して通りすぎよう。
「ちょっと君」二人のうちの恰幅の良い男に話しかけられた。
やっぱり話しかけられた。嫌だな。うかつに魔石の話題することもできないし。
「なんでしょう?」私はおそるおそる返した。
「このくらいの髪の長さの茶髪の子がそちらに走ってこなかったか?」恰幅の良い男は自分の肩のあたりを手で指し示した。
「う~ん。見なかったですね」ここまで人の気配はその男たち2人分だ。私が見逃すはずはない。
「この子はどうする?一応今は儀式だし、一応ダリヤ様のほうへ連れていくか」
ぼそぼそと恰幅の良い男が隣の細長い男に耳打ちしている。
丸聞こえなんですが。連れて行くって怖い。逃げよう。
私は足早に男たちの横を通り向けようとした。しかし、腕にがしっとした感触が伝わってきた。つかまれた。
あーやっぱり放っておいてはくれませんか。
「おい、待て。君も一緒に村までついてくるんだ」
スキルを使って追い返すのはやぶさかでないが、ここはおとなしくしておこう。
「どこへ行けばよいのですか?」「こっちだついてこい」
私は男たちの指示にしたがい、後をついていった。
しばらくすると村が見えてきた。
ラミエル族の集落といったところでしょうか。
村に入ると、ひときわ明るいところが目についた。
「あれは?」恰幅の良い男に話しかけた。
「あれは儀式の真っ最中だ。今日来た冒険者がダリヤ様に歯向かったらしい。リエトとかいう名前だったかな…」
「おい。しゃべりすぎだ」隣の細長いほうが口止めをする。
リエちゃん、ここまで来ていたの。私をうらんでいるかな。王宮で見殺しにしかけた私を……でも会いたいな。会って謝って、謝っても許してもらえるかわからないけど、
また昔みたいにいっぱいおしゃべりがしたい。私は無意識のうちにかけだした。
「おい、まて」うしろから声が聞こえた。
ひとごみをかき分けると、懐かしい顔がみえた。
「リエちゃんっ」
しかし、リエちゃんの体は縄でしばられていた。まわりの女性たちまで縄でしばられていた。
半数は見知っている。たしかディックのパーティーメンバーの子だ。
私は少し視線を左に向けた。そこには地面にふせてボロボロなディックの姿だった。
「そういうことね…」
「スキル解放」
周りの地面から植物がはえはじめ、周りの村人を一瞬にしてつるで捕獲した。
「リエちゃん、助けにきたよ」
リエちゃんはこちらをみて少し驚いたように見えた。
ああ、そのリエちゃんの前にいる女が敵ね。リエちゃんを苦しめる敵。私が排除しないと。今度こそリエちゃんを助ける。
「誰だい。私は今からお楽しみなんだよ。邪魔をしないでくれると助かるんだが…といってもそんな顔してたらいやでもわかる」
向こうも敵意をむきだしにしてきた。
私は、右手に持ったつるでできた鞭を女に向かって振った。
鞭の長さの5倍以上の距離が離れている。普通は届かないとみんな思う。
鞭は振り下ろしたあと、するすると伸び始め、女の顔をめがけて飛んで行った。
女は顔を守るように鞭に手を伸ばした。
かかった。私が今出した鞭は切れ味が抜群なほうだ。鞭のまわりにはバラのように棘が無数についている。私は通常は捕縛用と攻撃用に2種類使い分けている。
この女に容赦しない。腕もろともそぎ落とす。
鞭にふれたかと思うと、鞭がジュっと音を立てて溶けていった。もちろん、傷ひとつない。
「おどろいたよ、まだスキル持ちがいるなんて」
やはりこの女もスキル持ちだったか。多分毒もしくはモノを溶かす系統のスキルかな?
「精神毒」再び女が叫ぶと、左腕を私のほうへ突き出した。腕から矢のように液体が飛んできた。さっと身をひるがえし、なんなくよけた。
「その攻撃にふれるな。精神をたもてなくなる」リエトの叫び声が聞こえた。
うれしい。王宮であなたを見捨てた私にアドバイスをくれるのね、やっぱりリエちゃんだわ。
「なにがおかしい」
「いえいえ、泥棒猫にはいまからお仕置きしなきゃ」
鞭をギュッと握りなおした。
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