20話 ミランダ⑦
ロレッタの話とこれまでの経緯からだいたいスキルの予想はついている。
あとはいかに早く触ってコピーし、相手の能力を使うか。
今の俺のスキルのストックは…カリストの風、デルピムロの分身、ディックの氷結か。十分すぎるほど強力だ。負ける気がしない。
あとはルナのほうが片付き次第、分身を解除し、ヘルマンのスキルを取り込めば…
「ルナ。魔獣どもが片付き終わったら、何か合図をくれ。なんでもいいぞ」
「そんな遠くの人に伝わる合図とかあります?」
「うーんとそうだな。なにか空に打ち上げるとかでいい。そしたら、俺は分身の能力を解除して、相手のスキルを使う」
「オーケーです。手短に終わらせちゃいますね。」ルナはじゃらじゃと袋にはいった銅貨をまさぐった」
「では健闘を」
そういうとルナと分身2人と別れて領主の屋敷へと向かった。
俺は門をくぐり、広い庭園の中心あたりまできた。
このくらいの広さだと、風と氷結のスキルを遠慮なく使える。
「アリア、ロレッタ。すぐ終わらせるから、そこで見といて」
俺は黒色の手袋を外した。
「うん」二人とも同時にうなずく。
「ヘルマン。魔王軍幹部ヘルマン、でてこい。さもないと街中へ君のやったこと言いふらすぞ。俺が相手になってやる」
屋敷の中に聞こえるくらいに大声で叫んだ。
「調子に乗るなよ」
急にヘルマンが目の前に現れて、俺の腹にナイフをつきたてた。
キィィィィィン!!!
ビンゴ。俺の予想どおりに動いてくれたね。ロレッタの言ったとおりだった。
俺はヘルマンの腕を素手で触れた。
「う、、、動けなっ」
言い終わらぬうちにヘルマンの顔をこぶしで殴った。
動きが止まっているうちにもう一発!!!
2発目を顔にいれようとしたが、ぎりぎりのところでヘルマンは消え、後方へ退いた。
「アイスフィールド。逃がさないよ」
俺はすかさず地面に手をつけると一瞬にして地面を氷がつたっていった。
「なっっ」
予想もしないスキルにヘルマンはふいをつかれたのが見えた。逃げ遅れたヘルマンの膝下までが氷づけになった。
「くっっ、、、足が動かせない。なぜナイフが刺さらない?」
ヘルマンは口から出た血をぬぐいながらつぶやいた。
「ああ、それはね」
服の下から氷でできた薄い鎧を取り出した。
「装備を付けていないと、腹部をねらってくるとおもってね」
ロレッタの話から行動パターンは簡単に読めたよね。
「お前は二人に分かれるスキルじゃなかったのか?」
「いや、持っているのはそのスキルだけではないさ」
「そんなことが…」
ヘルマンは面食らっている。
「そうだねぇ。君のスキルは瞬間移動だね。移動距離はせいぜい100mか200mかってところかな?」
最初からおかしいと思ったんだ。魔石をとりに侵入するときも、誰にも感知されなかった。
それと、ヘルマンが魔石を奪った張本人なら、この街への移動時間を考えても数日はかかる。それを気づかずに行えるスキルといったら絞られてくる。
「俺は200m圏内を瞬間移動できる。行ったところ、見たところを脳内でイメージして移動するのさ。スキルが分かったところで俺には勝てない。所詮氷結系のたぐいの能力者だろう。スキルの差は圧倒的だ」
「それはどうかな」
ゴォォォォォォォンッ
門の方角をみると空に向かって大きな鐘が打ちあがっていた。
よりにもよって、ルナのやつトリプの鐘を打ち上げるとは…
「向こうは終わったみたいだぜ」
ヘルマンへにっこりと笑って見せた。
「バカな。向こうは魔獣300体に、魔王軍の武闘派大男クラネルまでいるんだぞ」
「ああ、いまごろ地面に顔うずめて、くたばっているだろうよ」
両手の三本指の先を胸の前で合わせた。
瞬間移動イン。分身アウト
「いくぞ。蓮風かまいたち」
俺は腕を振り下ろした。
ヘルマンは瞬間移動を使ってかまいたちを避けた。なりふりかまっていられなかったのか。無理やり氷づけから逃れたため、足は血まみれになっていた。
「ななあああああ」
ヘルマンは痛みに声をあげながらもまた瞬間移動をし、俺から距離を取ろうとした。
「瞬間移動」
俺はコピーした能力を使い、ヘルマンの背後に現れた。
「このスキル便利だね」
俺の方を振り返ったヘルマンの顔は恐怖に満ちていた。
そうだろう。得体の知れないスキル持ちと戦っていればそうなるかもな。
王国最強のスキルと気づいてももう遅い!!!
「助けてくれ…お前をこの国の領主にしよう。金もたくさんやる。見逃してくれ」
「アイス・ジャベリン」
俺の手から伸びた氷の槍がヘルマンの体をつら抜いた。
ヘルマンはそのまま仰向けに倒れた。
「英雄。英雄。英雄。英雄。俺はこの街の英雄だぞ。こんな仕打ちをしてすまされると思うか。この俺が負けるなんて…」
「君の敗因は俺に触られたことさ」
「俺の三年間の計画が…魔王様」
そういうと息絶えた。
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