21話 ミランダ⑧
最後までお付き合いしてくださりありがとうございます。
「勝ったのね」
アリアがロレッタとともに歩み寄ってきた。
「あのね、ヘルマンが屋敷で胸ポケットから紫色の石をとりだすのを見たの」
ロレッタがそういった。
俺がヘルマンの胸ポケットをさぐると、紫色の魔石が現れた。王国で強奪された魔石だった。
長かった。目的は果たされた。これもアリア、ルナ、ロレッタ。俺の仲間がいてこそだった。
「まだ、父と母がお屋敷で縛られているわ」
俺たちは急いで領主様の部屋へと向かった。
「ああ、ロレッタ。よくやった。怖かっただろうに。私を助けにきてくれた。もう立派な大人なんだな」
縄がほどかれると、領主はロレッタを抱きしめて言った。
奥の方を見るとカリストが血を流して倒れているのが見える。
アリアも気づいたのか倒れているカリストのほうへ歩いて行った。
「そいつは街を転覆させようとしたヘルマンの仲間だぞ」
領主様はすかさず忠告した。
「わかっている。リエト様に無実の罪を着せて殺そうとしたのも。全部わかっている。でも助けたいの、いいでしょ?リエト様」
「ああ」俺はうなずいた。
カリストは許せないが、これから俺の無実の証明に必要だ。そのあときっちり罪は償ってもらう。
「超回復」
アリアが唱えると、カリストの体が光につつまれた。
「けっこう、重症ね。ほとんど息してないわ」
数分間にわたりアリアはスキルを使い続けた。アリアのスキルのおかげかカリストは一命をとりとめた。
数日ののち、俺たちは領主様の屋敷に招かれた。
「今回の件なんとお礼をいったらよいか。できる範囲で願いがあったらいってくれ」
「では、領主様。ロレッタの言うことをきいてあげてほしい」
領主様はロレッタのほうへ視線をうつした。
「なにか言いたいことがあるのか、ロレッタ」
ロレッタはもじもじして話すのをためらっているように見える。
あの戦いにあとにロレッタが俺に相談してきたことだ。
やっぱり緊張するよね。頑張れロレッタ。
「わ、わたしね、旅をしたいの、リエトさんたちと。今まで知らなかったことたくさん知ってね、それでね。それでね。もっと立派な大人になる。将来この街を背負ってたてるくらいの立派な大人に」
「うーん。だが危険もいっぱいある」
やはり領主様は少し反対するか。
「少しの間だけでも行かせてあげましょう。もう私たちが思っているよりロレッタはずっと大人よ」
隣にいるロレッタの母が言った。
「わかった。しばらくの間、ロレッタを任せるよ。魔王軍幹部を一撃で倒したリエトさんなら安心して任せられる」
魔王軍の幹部か。あんなものなのかな。みんな20年も幹部を倒せないでいる理由がわからない。
「私がいれば安全ですよ」
「わかった。では任せよう」
領主様から了承を得たロレッタの嬉しそうな表情が見える。
「そして、私はこいつらをつれて国王に会いに行く。私もリエトさんの無実を訴える」
領主様は縄でしばられたカリストとパーティーメンバーをみた。
カリストのパーティーメンバーは門の近くで魔獣の先導をしていたところをルナに一撃で仕留められたのだった。
うなだれるカリストには俺に対する敵意はなく、目はうつろだった。
せいぜい自分がやった罪を償うんだな。
「報酬もたくさんもらえたよ、やったね、リエト様」
アリアが嬉しそうな声を上げる。
「ああ、これで裕福に旅を続けられる」
「続ける?奪われた魔石も回収できたし、王国へは戻らないの?」
アリアは首をかしげる。
「ここから少し離れたところにオドロの谷がある。もう1つ魔石がそこにあるとのうわさだ。もともと王国にあった魔石を取り返しただけでは、今までと変わりない。この機会にもう1つ魔石を魔王軍から奪い返したい」
「僕はどこだろうとご主人様についていくだけです」
ルナがこっちをみる。
「私もです」
ロレッタはにっこり笑ってみせた。
屋敷に招かれた翌朝、ミランダの街を旅立つことにした。
ロレッタが冒険の旅に出ると聞いた街の人たちが大勢門の前へ見送りにきた。
「ロレッタちゃん、体に気をつけるのよ」
「いってらっしゃい」
「いつでも帰っておいで」
「ロレッタちゃん可愛いよ」
みんなから暖かい声援を送られている。
いや。最後のは違うか。
これがロレッタの守りたかったものなのだろう。
「旅の幸運を祈る鐘を鳴らさないとね」
ロレッタがルナをみて冗談めかして言った。
「僕は知りませんよー」とルナは口笛を吹いている。
ちなみにルナにふっとばされたトリプの鐘は修復不可能らしい…
「これからさき不幸なことが起きないといいけど」アリアは言った。
あっこれは不幸なことがおきるパターンだ。俺もいるし大丈夫か。
そんな俺の心配をよそに、ロレッタとルナは次の目的へ向けて競走をはじめた。
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