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番外編「食料問題と家の本」②

森の中にそびえ立つ大きな古城の前に現れた世愛は圧巻したように古城を見つめていた。自分達が現れたからかわからないが妙なざわつき方を森がしていて世愛はそれに怯えて遊佐の服を掴んで辺りを見渡した。


「……このざわつきは問題ない。城への来訪者を森に住む動物たちが城の住人に知らせているんだ…ほら。話をしていたら来たぞ」


遊佐が後ろを見る為に振り向くとそこにはクリーム色の長い髪を緩く一つに束ねていて黒だが赤にも見える瞳を持つ長身の男がたっていた。


「妙なざわつき方をしていると思って警戒していたんですが君でしたか」


男は遊佐の姿を見てどこかほっとしたような顔をする。


「それは多分…」


遊佐は今の自分の立場を説明したあと、ついでに世愛のことを紹介する。


「…そうでしたか。それなら妙なざわつき方をしたのも納得です」


男は話を聞いたあと、遊佐の後ろに隠れるようにたっていた世愛へと近づいていく。


「初めまして。私はルシュフ。善良な吸血鬼でこの古城の住民の一人です。契約者という訳ではありませんがどうぞよろしく」


そして男…ルシュフは世愛の目線に合わせるように屈んだあと、世愛を子供扱いするように接してにっこりと微笑んだ。


「世愛です。こちらこそよろしくお願いします」


遊佐の後ろに隠れるのを止めた世愛は深々と頭を下げた。


「……外で立ち話もなんですから中に入りましょう」


そんな世愛を見てルシュフはにっこりと微笑んだ後直ぐに笑みを解いて遊佐へと一度目を向けた。そして立ち上がったルシュフは古城へと瞬時に近寄って扉を開ける。


「は、はやい…」


瞬時に動いたルシュフを見て世愛は思わず手で目を擦った。


「…吸血鬼の速さは古代種が生み出した種族の中でも一、二を争うからな」


遊佐はそんな世愛に向かって説明をすると古城の中に入ろうと動き出し、世愛はその説明に納得しながら遊佐のあとを追った。


「とりあえず応接室で用件をお聞きしますか?」


二人が古城の中に入ったことで扉を閉めたルシュフは遊佐に向かって問いかける。


「いや。本を片付けにきただけだからこのまま図書室に向かう。世愛はどうする?ここは神隠しにあった奴らの保護施設でもあるから他の種族とも会えるが…」


遊佐はルシュフの問いかけに答えたあと、世愛へと目を向ける。


「えっと…」


他の種族に興味はあったが見知らぬ場所で遊佐と離れるのは少し怖いのか世愛は戸惑ってしまう。


「外に出ない限りは安全なので自由に動き回っても大丈夫ですよ。不安でしたら私がつきますし」


ルシュフはそんな世愛に向かってにっこりと微笑んだ。


「行ってこい。気になるのなら」


ルシュフの申し出に世愛は心惹かれた。そんな世愛の後押しを遊佐はする。


「な、ならお言葉に甘えて…」


世愛は控えめにルシュフを見つめている。


「では行こうか。遊佐、待ち合わせはどこにしますか?」


世愛の返事を聞いたルシュフは笑みをといて遊佐へと目を向ける。


「……終わったら気配を辿る」


遊佐は少しだけ考える素振りを見せたあと、答えた。


「わかった」


ルシュフは小さく頷いた。


「全種族いる訳では無いけどどの種族に会ってみたい?」


そしてその後すぐにルシュフは世愛へと目を向けた。


「えーっと…人間以外だったらなんでも!」


世愛はどの種族にも興味があり考える素振りを見せたがそもそもこの古城に何の種族がいるかわからないのでアバウトに答えた。


「わかった。なら近場から」


ついてきてくださいとルシュフは言葉を続け、歩き出した。世愛は遊佐の姿をちらちらと見ながらそんなルシュフのあとを追い、遊佐は世愛たちを見送ったあとで図書室へと向かった。


「…あ、あの…保護施設なんですか?」


ルシュフの後ろをついて歩いていた世愛は控えめに声をかける。


「そうだね。この世界は危険だから神隠しにあって来てしまった人がいたら直ぐに保護に動いているね」


ルシュフは答えながら歩く速度を落とし、世愛の隣に並んだ。


「危険なんですか…?」


世愛は不安そうにルシュフを見つめる。


「この世界は吸血鬼と人間、二種族がいる世界なんだけどこの二つの種族は争っていてね。古城の外はとても危険なんだ。故にこの世界に来てしまった人は直ぐに保護するようにしているんだよ」


ちなみに私も神隠しの被害者で善良な吸血鬼だから安心してね、とルシュフは安心させるように言葉を続け、にっこりと微笑んだ。


「遊佐さんのお知り合いですから信用します」


世愛はそんなルシュフを見て安心する。


「……素直な子だね」


ルシュフはにこにこと微笑んだまま前を向き、歩く。


「…さて。ついたよ。今の時間帯はこの先にいるはず」


そして二人は少しの間、歩いていると一つの扉の前に辿り着いた。いつの間にか微笑むのを止め、立ち止まったルシュフは世愛に声をかけながら扉を開けるとそこにはまるで外にいるかのような空間が広がっていて床には芝生が敷き詰められ、手が加えられた草花や木があってとても自然豊かな場所だった。


「外…?」


世愛はその光景を見たあと、ルシュフへと目を向ける。


「いや。外ではない。外は危険だから外のような空間の部屋を作ったらしいですよ。それでここに来たのはこの時間、遊んでいる子がいて…ほら、いた」


ルシュフは部屋の中にいた三人の人影を手でしめした。世愛がルシュフの手の先を追うように目を向けるとそこには月下美人の蕾が頭にある幼女と杜若の花が頭にある少年、耳が尖っている少女の姿があって少年と少女は幼女の遊び相手になるようにボールを使って遊んでいた。


「少年は空、幼女は月華でこの二人は花族です。そして少女の方はエルフのリースだよ」


ルシュフは世愛が三人へと目を向けたことで手を下ろし、紹介をする。


「エルフに…花族…」


世愛は目を輝かせて三人を見つめていた。


「お兄ちゃーん!」


そんな世愛を少しだけ微笑ましく見ていたルシュフに気がついた月華が駆け足で近づいていき、そのあとをリースと空が追うような形でこちらへと来た。


「……お姉ちゃん誰?新入りさん?」


ルシュフの傍にいる世愛に気がついた月華は立ち止まり、不思議そうな顔をして世愛のことを見つめている。そんな月華にルシュフは世愛のことを月華にもわかりやすく説明をした。それに合わせて世愛はよろしくお願いしますの意味を込めて一礼をする。


「そーなんだ!遊んで遊んでっ!」


月華は遊んでもらおうと期待して世愛の手を掴んだ。世愛は戸惑った。その申し出にではない。他者に触れられればいつも体をビクつかせていたのに今回はそれがなかったからだ。


「この子には他の種族を見せてあげると約束しているんだよ」


だからごめんな、とルシュフは世愛の代わりに申し訳なさそうに断った。それを聞いて月華は残念そうにしながらも世愛の手を素直に離した。


「あら?でも他の人たち、忙しいって言っていたから行ったとしても会ってはくれないかもよ?」


リースは少しだけ考える素振りを見せたあと、口を開いた。


「そうなのかい?案内役をかっていた私としては実に残念だ…すまないね」


ルシュフは申し訳なさそうに世愛へと謝った。


「い、いえ…いえ。お相手さんにも都合というものがありますし、花族さんやエルフさんを生で見れたので大丈夫です!月華ちゃんの遊び相手になります!」


世愛はそんなルシュフを見て慌て全力で首を横に振ったあと、月華へと目を向けた。


「本当!やった!それじゃあっちで一緒に遊ぼう!」


月華はぱぁっと表情を明るくし、世愛の手を掴んで先程まで遊んでいた場所まで引っ張った。世愛はそんな月華に対し抵抗は見せずについていき、遊び相手になってあげた。


「……さて。月華。お昼寝の時間だから遊ぶのはここまでだよ」


時間を忘れ、月華と世愛は楽しそうに遊んだ。空やリース、ルシュフはそんな二人を微笑ましく見つめていたがお昼寝の時間がきたのか空が遊びを中断させようと声をかけた。


「いや!まだ遊ぶ!」


お昼寝の時間が近いこともあってウトウトしていた月華だったがまだ遊んでいたいのか嫌だと全力で首を横に振り、それを見た空は困り顔をする。


「また遊びに来ますから今日はもう寝ましょう?」


世愛は月華と空を交互に見たあと、月華の説得を試みる。


「…本当?また月華と遊んでくれる?」


月華は潤んだ目で世愛を見つめた。


「はい!約束します!」


世愛は大きく頷いたあと、控えめに小指を差し出した。


「わーい!約束!」


月華は嬉しそうに笑って世愛の小指に自分の小指を絡ませた。


「指切りげんまんですね」


世愛は月華に向かって微笑み返しながら軽く手を振り、そのあとで小指を離した。


「では月華。行こうか」


ルシュフは月華を抱き上げ、動き出した。


「世愛ちゃん!ばいばーい!」


月華は部屋から出ていく際に大きく手を振り、世愛はそんな月華に対して手を振りかえして見送った。


「ありがとう。遊び相手がいつも同じ人とばかりだったから初めましての人だと新鮮で月華、嬉しいんだと思う。よかったらだけどたまにでいいから手があいた時にでも遊び相手になってあげて?」


空はそんな世愛へと声をかけた。


「はい!それは勿論です!」


手を振るのを止めた世愛は空へと目を向け、大きく頷いた。


「遊佐くん、迎えに来てるよ」


空はそんな世愛に向かってにっこりと微笑んだあと、腕を組んで壁に寄りかかり目を閉じている遊佐がいることに気がつき、微笑むのを止めて手でしめした。


「え、あ!本当だ!教えてくれてありがとうございます!」


世愛は空の手を目で追い、遊佐の姿を確認すると慌てたように声を上げながら立ち上がり、空に向かって深々と頭を下げた。


「おまたせしました!」


そしてその後直ぐに世愛は顔を上げて声をかけながら遊佐へと近づいていく。


「楽しかったか?」


目を開けた遊佐は世愛を見る。


「はい!楽しかったです!」


世愛は大きく頷き、元気よく返事をした。


「それならいい。それじゃ行くか。世愛は俺と同じ場所に行きたいって強く思ってくれるだけでいい」


そんな世愛を見てふっと笑ったあと、遊佐はそう言うと目を閉じた。それを見た世愛が慌てて目を閉じ、強く願うと世愛は眩い光に…遊佐は黒いもやに包まれる形で姿を消し、リースと空はそれを見送ったのだった。


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