36
一方、残った男は怯むことなく遊佐から来る攻撃に対処をしていた。
「さて。どうやって意識をかりとりましょうか。きちんと堕とすには成功しましたが自我を忘れ、暴走しているので呼び掛けには応じないでしょうし…殺すのは容易いんですけどね」
男は遊佐から次々くる攻撃を意図も簡単に捌きながら考える素振りを見せた。
「……主人はお取り込み中ですし、頼れません。なので仕方がありません。殴り合いましょう。時間の許す限り」
男は瞬時に遊佐の間合いへと入り、殴りかかった。遊佐は黒い手で防御態勢を取ったあと、すぐさま違う黒い手でおはようへと攻撃を仕掛ける。だが男はそれを意図も簡単に避け、攻撃の手を緩めなかった。遊佐はたまに男からの攻撃を受けるものの傍から見れば二人は舞っているとしか思えないような戦闘をしていて男はどことなく楽しそうだった。
「……もうそろそろ終わりにしましょう」
暫くの間、猛攻が続いたが癒えづらくなった遊佐の体を見て男は唐突に呟き、威圧的に遊佐を見た。暴走はしていたが弱っていた遊佐は蛇に睨まれたように動けなくなり、男はその隙を見て遊佐の意識を刈り取った。意識を失った遊佐はその場に倒れ、暴走は収まったのか影から出ていた無数の黒い手は影の中へと引っ込むように消えた。
「…さてと」
男は遊佐を脇に抱えるように持った。そして世愛たちがいる部屋へと足早に向かう。
「……失礼します。終わりましたよ。煉さん」
部屋の前についた男はノックをしたあと、声をかけながら扉を開けて中へと足を踏み入れた。
「もう平気?」
世愛がいるベッドの近くに椅子を持ってきて座っていた煉は男の声に反応して立ち上がりつつ男ねと目を向け、心配そうに見つめる。
「大丈夫ですよ」
男は世愛がいるベッドへと遊佐を寝かせながら答え、その返事を聞いた煉はほっと安易する。
「あ、あの!説明を求めます!」
返事をしたあと、ベッドから離れようとする男の服を世愛は控えめに掴み、声をかける。
「おや。煉さん。説明していなかったのですか?」
服を掴まれたことで男は動きを止め、煉へと目を向ける。
「遊佐が大変っていうのはわかったんだけど難しい話だったから…」
煉は当たり前のように答えた。
「……結論から申し上げますと私たちに敵対の意思はありません。先程蹴ったりしたのは彼の為だったのです」
男は世愛へと目を向け、口を開いた。
「遊佐さんのため…?さっき煉くんも言ってました。なんで蹴ったりすることがためになるんですか?」
世愛は男と目があった瞬間、掴んでいた手を離す。
「…人が生きたまま魔界に堕ちることは非常に稀…レアなケースなんです」
男は何処から説明をするべきか少し考える素振りを見せたあと、答えた。
「稀…?レア…?」
それだけではいまいち理解できないのか世愛は不思議そうな顔をして首を傾げた。
「人は魔界に堕ちる程の大罪を犯す前に処刑などで死に至ります。その後、地獄に堕ちるか記憶のない状態で悪魔として転生するんです。ですが彼は先程言った通り生きたまま堕ちてきた非常に稀なレアケースでそのまま堕ちてくれれば悪魔としての肉体強化、異能が身につく予定でした」
男は遊佐へと目を向け、世愛は首を傾げるのを止めて真剣に話を聞いている。
「…彼はそれを神との契約によって中断してしまい、結果として肉体の強化は少しされたものの異能の発言がされている気配はなくただ煉さんたちが帰還する為に魔界へと堕ちてきただけとなってしまいました。そしてそれは魔界では死活問題なんです」
男は話を続け、世愛へと目を向ける。
「死活問題?」
真面目に話を聞いていた世愛は不思議そうな顔をする。
「ここは力こそが全ての弱肉強食の世界なんです。勝者は敗者の魂を手に入れて自分の力とし、敗者は捕われの身となって転生すらできません。堕ちた人の場合、敗北しても悪魔として生まれ変わり魂を奪われることはないので一度の猶予はありますが、人だった時の記憶は完全に失います。煉さんが貴方の記憶を失った彼は嫌だと訴えてきたので比較的に顔や雰囲気が怖くない私が力を貸したまでです」
男は真剣な顔つきで説明を続ける。
「弱肉強食…」
世愛は説明を聞いて遊佐が危うい立場にいたと知り、遊佐へと目を向けて心配そうに見つめる。
「…私なりに考えました。暴行をすれば防衛本能で目覚める可能性はありましたが絶対ではないので…そんな時です。邪神から貴方を送り込んでもいいかと連絡があったのは…」
男はそんな世愛をじっと見つめる。
「あれ…?もしかしてお兄さんの主人って最古の魔王で私を供物にするって話は本心ではなく遊佐さんの力を引き出すための…?」
男の話を聞いてハッと何かを思いついた世愛は男へと目を向ける。
「ええ。そうですよ。邪神は面白がって主人に声をかけてきたようなのですが主人は私がダシに使いたいと進言しなければ拒否していたでしょう。現在争いを好んではいませんし、神との契約者であるなら尚更です。契約の証を所持してきていなくとも何かあれば宣戦布告と見なされ、争いに発展してしまいますから」
男はにっこりと微笑んで世愛を見つめ、世愛は男に指摘されて証である腕輪をしていないことを思い出し、顔を青ざめる。
「あー大丈夫ですよ?この古城に住む者たちは魅了に耐性があります…というよはら魔界で魅了耐性を持たない者の方が少ないのではないですかね?戦いでは不利になりますし」
邪神から世愛の情報を事前に聞いていた男は安心させるように微笑んだまま説明をした。その説明を聞いて世愛は顔色の悪さは治るものの微かな震えは止まらない。
「……知らない顔がいれば不安でしょう。私はこれで失礼します。いつでも帰還は可能ですが積もる話もあるでしょうから帰りたくなったら私をお呼びください。その際、今回の件についての説明もお願いします」
男は世愛の震えを見て笑みを解き、そういうと部屋から出て行こうと動き出す。
「……あ、そうそう。此処では簡単に承諾してはいけません。承諾すれば契約とみなされ、完遂時に魂を持っていかれてしまいます。先程は私が相手だからよかったですが今後、悪魔との会話には気をつけてください。それと…外よりはましではありますがこの古城にも少量ではありますが瘴気が漂っていて貴方には毒です。この部屋は古城の中で一番浄化されていて瘴気がなく安全ですのでなるべく部屋からお出にならないように願います」
そして男は部屋から出る直前で思い出したかのように立ち止まり、世愛へと目を向け口を開いたあとで部屋から出て行ってしまう。
「……あ」
呼び止めようとほんの少しだけ手を伸ばした世愛だったが男は早々に立ち去ったあとだった為、世愛は伸ばした手を引っ込めた。
「どーしたの?」
煉はそんな世愛を不思議そうに見つめている。
「名前を…名前を聞きそびれちゃったなって…煉くん。名前を教えてくれませんか?」
世愛は煉へと目を向ける。
「知らない」
煉は大袈裟に首を横に振る。
「え、知らないんですか?」
世愛ら驚きの声を上げ、煉を見つめる。
「うん。僕が地上にいる時にここに入ったみたいだから…ここに戻ってきた時に聞いたんだよ?でも内緒だから好きに呼んでいいって言われた。なんて呼べばいいかわからないんだよね」
煉は大きく頷いたあと、世愛を見つめて答えた。
「……みかんさん」
世愛は少しだけ考えたあと、小さく呟いた。
「みかんさん?」
煉はみかんがなんなのか分からず、不思議そうな顔をして復唱する。
「髪色がみかんっていう食べ物にそっくりなんです」
世愛はにっこりと微笑んで答えた。
「食べ物!それって美味しい?」
れは食べ物という言葉に目を輝かせ、期待の眼差しで世愛を見つめる。
「甘酸っぱくて美味しいですよ。でも魔界にあるかどうか…」
世愛は微笑むのを止め、そんな煉に向かって気まずそうに答えた。
「待って!遊佐から持っていっていいって言われた物の中にあるかも!僕、見てくる!」
煉は足早に部屋から飛び出して行ってしまった。そして直ぐに煉は両手いっぱいにみかんや柿、柚子など見た目が似ている物を持って戻ってくる。
「せーあ!ここにせーあが言ってたみかんある?」
にこにこしながら世愛へと近づいた煉は持ってきた物全て見せる。
「えーっとですね。これです」
世愛はみかんを指差した。
「そっか。じゃ」
煉は持ってきた物を全て近くにあったテーブルの上へと置いたあと、みかんを手にした。そして大きな口を開けてそのまま食べようとした。
「れ、煉くん!そのままじゃ駄目です!」
それを見た世愛は慌てたようにベッドから飛び降り、煉へと近づいた。
「ふえ?ダメなの?」
食べるのを中断した煉は不思議そうな顔を世愛へと向ける。
「みかんは皮を剥いて食べるんです」
煉が持っているみかんを取った世愛は近くにあったソファーへと腰掛け、皮を剥き始める。煉はそれを興味津々に見つめている。
「はい。どうぞ」
皮を剥き終えた世愛は煉に向かって一粒差し出した。煉はそれを受け取ったあと直ぐに大きな口を開けて放り込んだ。
「っ…美味しいね」
煉は幸せそうな顔をし、報告をする。
「それはよかった」
世愛はそんな煉を見てにっこりと微笑み、残りのみかん全てを煉へと差し出した。
「ありがとう!」
煉は満面の笑みを浮かべてそれを受け取り、一粒ずつ味わうように食べ始める。世愛はそんな煉を微笑ましく見つめた。
「……他のはどうやって食べるの?」
最後の一粒を飲み込んだ煉は世愛へと目を向ける。
「えーっと…」
世愛は一番近くにあった果物を手に取った。そして食べ方を教えるついでに名前も煉に教えてあげた。煉は世愛の話を真剣に聞いて覚え、その後世愛に教わった通りに自分の力で食べ始める。
「……ご馳走様」
全てを食べ尽くした煉は満足そうにお腹を摩った。
「満足しました?」
世愛は出たゴミを片付けながらそんな煉へと声をかける。
「うん!…でももう食べられないんだよね…」
煉は元気よく返事をしたあと、もう食べれないことに気がついてもう少しゆっくり食べれば良かったと後悔し、悲しげな表情をして俯いてしまう。
「……期待させるかもしれませんが煉くんがいない間にもしかしたらあるようになったかも知れません。みかんさんに聞いてみるのはどうでしょう?」
世愛はそんな煉を見て慌てて提案をする。
「ちょっと探して聞いてみる!」
煉はぱぁっと表情を明るくさせ、飛び出すように部屋から出ていってしまった。世愛はそんな煉を微笑ましく見送ったあと、遊佐へと目を向けて心配そうに見つめた。意識はないが遊佐はとても穏やかな表情をしている。
「…ん」
遊佐へと近づいて暫くの間、世愛がそんな遊佐の頭を撫でているとゆっくりと目を開ける形で遊佐は目を覚ました。
「っ…遊佐さん…?」
世愛は遊佐が目を開けたことに気がついて頭から手を離し、声をかけた。
「チビ…連れていかれたんじゃ…てか怪我は?何もされてないか?」
視線を動かし世愛と目があった瞬間、遊佐は勢いよく上体を起こして世愛へと詰め寄った。
「だ、大丈夫です。何処も怪我はしてません!」
世愛は至近距離まできた遊佐に頬を赤く染め、動揺をした。
「そうか…よかった…」
遊佐は安易して世愛から少し離れた。
「……いや。よくない。あいつ?」
遊佐は先程の男…みかんがいないか慌てて周囲を確認する。
「えーっと実は…」
世愛はそんな遊佐に向かってみかんから聞いたことを伝えた。
「……なるほど。だからさっきより体が軽いのか」
遊佐はそれを聞いて素直に納得をする。
「納得してくれるんですね」
世愛は意外そうな顔でそんな遊佐を見つめた。
「納得するさ。チビが連れていかれそうになるのを見たあとから記憶はない。だけど体が軽くなって感覚が戻ったことやチビが今ここにいること、簡単に俺を始末できそうなあいつが始末せずにここに運んだこと…それに何より供物にするっていうならこの部屋で休ませるなんてしないだろ。俺のこともチビのことも…」
まぁ手のひらで踊らされたことが気に食わないけど…と言葉を続けた遊佐は不満そうな顔をする。
「……それでどうする?」
遊佐は世愛へと目を向け、唐突に問いかける。
「どうするとは?」
世愛はその問いの意図がわからず、首を傾げる。
「ここにきた目的は果たした。帰りたいのならいつでも帰れる。俺としては飯の問題や瘴気の心配があるから早めに帰って欲しいって気持ちがある」
遊佐はほそんな世愛を真剣な表情で見つめた。
「あ…」
世愛は目的を果たしたことを思い出し、遊佐と離れがたい気持ちがあるのか小さく声を漏らしたあと、俯いて黙り込んでしまう。
「……帰ります」
世愛は思い悩んだあと、顔を上げて涙で潤んだ目を遊佐へと向けた。そんな世愛を見て遊佐は少しだけ動揺する。
「ただ…ただ…最後に名前を呼んでくれませんか?」
世愛は涙目だが真剣な眼差しで遊佐を見つめた。遊佐が今まで世愛の名前を呼ばず、チビと呼んでいたのは理由があった。近々、魔界に堕ちる自分と親しくならないようにする為だ。親しくなってしまえば懐かれてしまうので遊佐はあえて名前を呼ばずに壁を作っていたのだ。だが一緒に行動をするうちに世話をやいてしまい、情が移ってしまった。だけど今更、名前で呼ぶなんて…と遊佐は思い、呼ばなかったのだ。
「……世愛」
なので遊佐は親しみを込めて初めて世愛の名前を口にした。
「っ!」
世愛は初めて遊佐に名前を呼ばれたことで歓喜し、目から大粒の涙を流し始める。
「せ、世愛?」
そんな世愛を見て遊佐は動揺をする。
「すみません…大丈夫です。ありがとうございますっ…呼んでくれて…これだけで充分。もう…帰ります」
世愛は服の袖で乱暴に頬を伝う涙を拭ったあと、遊佐と離れたくないという本当の気持ちを押し殺してぎこちなく微笑んだ。
「せ…」
「お帰りですか?」
そんな世愛を見て遊佐は声をかけようとした。だがその前に気配なく世愛の背後に現れたみかんが世愛の耳元で声をかける。
「……驚かけるな」
そんなみかんに世愛は驚いて体を大きくビクつかせ、遊佐はそんな世愛の腕を掴んで自分へと抱き寄せつつ鋭く尖った形にした自分の影をみかんの首元へと瞬時に突きつける。
「私はただお帰りになるという決心が鈍らないうちに来ただけ…驚かせるつもりはありませんよ」
みかんは遊佐の影を特に気にすることなく微笑んだ。遊佐はそんなみかんを睨みつけるように見つめている。
「戻ったよ!せーあ!魔界にも似たような食べ物があるって…ってせーあ。どうしたの?お顔が真っ赤だよ?」
そんな部屋の雰囲気を壊すかのように煉が部屋の中へとご機嫌な様子で入ってきた。煉は嬉しさのあまり世愛に報告をしようとしたが遊佐の腕の中にいる世愛の顔が茹で蛸のように真っ赤になっていた為、心配そうな顔をしながら近づいていく。
「へっ…あ…え?な、なんでもないですっ!」
遊佐に抱きしめられたことで固まっていた世愛な煉に声をかけられたことで我に返り、動揺し始めた。それを見た遊佐は影を元に戻しながら世愛を離し、離された世愛は赤く染まった頬を両手で挟み、恥ずかしさのあまり俯いてしまった。そんな世愛を煉は心配そうに見つめた。
「……異能はちゃんと使えているようですね」
みかんだけは微笑んだまま平常運転で遊佐たちを見つめた。
「っ!」
世愛は恥ずかしさに耐えきれなくなって部屋から出ていってはいけないということを忘れ、部屋から飛び出した。
「え?せーあ?」
煉は驚いてそんな世愛のあとを追った。
「…貴方は自重してください」
遊佐も世愛を追おうとベッドから降りようとした。だがその前に真顔になったみかんが制止の声をあげる。遊佐は何故駄目なのかとみかんに視線を送った。
「……彼女を地上に帰すのでしょう?これ以上、かまってしまったら別れが辛くなります。なのでここにいて下さい」
みかんはそれだけ言うと二人のあとを追うように姿を消してしまった。そして一人残された遊佐は苦い顔をして俯いてしまったのだった。
全力疾走しても直ぐに捕まってしまった世愛は真っ赤な顔を見られたくないのか煉に背を向けたまま俯いていた。
「どうしたの?部屋の外は危ないよ?戻ろう?」
煉はそんな世愛を心配そうに見つめた。
「その必要はありません。彼女はこのまま地上に送ります」
みかんはそんな煉たちに声をかけながら気配なく姿を現した。
「え…帰っちゃうの…?」
煉らみかんへと視線を向け、首を傾げる。
「このままここにいてはあの部屋に軟禁状態ですからね。かといって部屋の外は瘴気があって危険です。帰るというのなら地上に送らないと…」
みかんは煉を見つめ、答えた。
「そっか…帰っちゃうのか…」
煉は世愛の手をゆっくりと離し、残念そうな顔をした。
「…ついさっき思い出も作れましたしね」
よかったですね。抱きしめてもらえて…とみかんは言葉を続けて世愛に向かってにっこりと微笑んだ。
「なっ…」
さっきの驚かせてきたあれはわざとやったのかと世愛は真っ赤な顔をしたまま絶句する。
「…では決意が鈍らないうちに帰りますか…貴方が帰りたがっている場合は帰してあげようにと主人から一任されているので帰る気持ちがあるのであれば私の手をとっていただけますか?」
みかんはそんな世愛を見てくすくす笑ったあと、世愛に向かって手を差し出した。世愛は遊佐と離れがたい気持ちをグッと堪えて恐る恐るみかんの手に自分の手を乗せてみた。すると黒いモヤが床から吹き出し、世愛へと纏わり付き始めた。
「え、な、何?」
世愛はいきなり現れた黒いモヤに驚き、困惑の声をあげながら逃れようとした。
「落ちついてくれて大丈夫です。地上に送り返すだけですので」
みかんへそんな世愛の手をぎゅっと握り、あまり動けないようにした。黒いモヤは世愛の全身を包み込んでいく。
「世愛!」
黒いモヤに怯えながらも大人しくしていた世愛の耳に遊佐の声が聞こえてきた。
「遊佐さん…?」
世愛は声のした方へと目を向けたが既に顔まで黒いモヤがきていた為、遊佐の姿を視界に捉えることは出来なかった。
「さようならは言わないから!」
遊佐は世愛に聞こえるよう珍しく大きな声を出した。
「え…」
お別れの言葉を言ってくれないのかと世愛は小さな声をもらす。
「……地上に行く方法を考えてまた地上に…世愛に会いにいく!だから待っていて欲しい!」
遊佐は世愛の姿は見えないが黒いモヤをじっと見つめ、叫んだ。
「待って…」
それに対し、世愛は待っていると答えようとした。だがその前に世愛は黒いモヤと共に消えてしまう。
「酷なことです。悪魔を召喚するための書は生粋な悪魔のものしか存在しませんし、存在していたとしても神との契約者である彼女は貴方を召喚するのは不可能なんですよ」
世愛を見送ったみかんは遊佐へと目を向ける。
「酷なことを言っているのはわかってる。でも言わずにはいられなかった。俺が行けるようになるまで待ってろって言うのは神とずっと契約してろってのと同義だし…だから死ぬ気で色々試してみるさ」
遊佐は決意にみちた表情をする。
「そうですか…ではお手並み拝見と行きましょうか」
みかんはそんな遊佐を意味ありげに見つめ、にっこりと微笑んだのだった。
続きが気になるという方は下の評価ボタンで評価、ブックマークなどしていただけると励みになります
また感想や誤字脱字の報告も随時受け付けていますので、よろしくお願いします




