10 「教育終わります!」
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「──どうしましょうフォグさん!? 前も後ろも右も左もモンスターだらけですー!!」
「とりあえず落ち着け! くそっ、なんでポイズンウルフがこんな浅い所に出てくんだ! もうオワタ! 最後におっぱい揉ましてくれキョウカ!!」
「フォグさんこそ落ち着け! 逃げるんですか? 戦うんですか? どっち!?」
どっちと言われても! 逃げるにしても四方を囲まれてんだぞ! 足の一本置いてけってか!?
戦うのは……無理だろ……だって軽く100体はいるんだもん!
「キョウカ。短い付き合いだったが、お前の事忘れないぜ。最後のお願いだ……囮になって俺を逃がしてくれ」
「はぁ!? フォグさん最低!! ろくでなし! クズ! 童貞!」
「じょ、冗談だろ! なにもそこまで……」
「こんな時に冗談なんて言わないで下さい!」
「悪かった! だが、囮になるのは本当だ」
「ま、まだ言ってるんですか!?」
「俺がな!!」
「フォグさん……行っちゃダメー!!」
俺は覚悟を決め、前方のポイズンウルフへと突進した。
そんな悲しそうな顔するなよキョウカ……。
出会って2日の短い付き合いだったけど、お前に会えて良かった。お前、俺を仲間だって言ってくれたよな?
その言葉──嬉しかったぜ……。
「「ガルルッ!! ガッ!!」」
俺が突進すると同時に、ポイズンウルフ達も唸りを上げ突進してきた。前の俺だったら、間違いなく噛まれてお陀仏だ。
「だがな! 今の俺は、速いんだよ!!」
「ガルルッ!!」
群の内の一体のポイズンウルフが俺に噛みつこうと飛び込んでくる。
それを横っ飛びで避け、背中の剣を抜きながら振り下ろす!
「ガッ! ルッ……」
「よし……倒せた!」
正直危なかったが、俊敏スキルのお陰でなんとか避けながら倒す事が出来た。
それにしても、胴体を一刀両断とは……鋼の剣の切れ味は凄まじいな。何より、鉄の剣と比べて軽い。
重い鉄の剣を長年振ってきたせいか、鋼の剣は片手で振った位に軽く感じる。
これだったらいける! そう思ったが、今のは100体以上いる内のたかが一体。同時に襲われ続けたら……いずれ体力尽きて死ぬ。
「「ガルルッ!!」」
案の定同時に襲ってきやがった。
クソッ……嫌な予感てのは的中しちまうもんだな。
「キョウカ!! 今の内に逃げろ! 逃げてギルドに知らせてくれ! ポイズンウルフが溢れたってな。後……おっさんに世話になったって伝えてくれ」
「そんなの嫌です!! フォグさんを置いて逃げるなんて出来ない! やだ! やだやだ!」
その間にも、飛び掛かって来るポイズンウルフの猛攻を必死で避ける。同時に来られたら、避けるので精一杯で攻撃なんて出来やしねえ。
「きりがねえな……キョウカ! 子供みてえに駄々こねてねえで、さっさと逃げろ!! ……おい! 聞いてんのか!?」
「嫌です! 私戦います!! 戦ってフォグさんと死ぬ!!」
まったく……言う事聞かねえ女だぜ。
いくらキョウカが化け物スキラーだからって、この数相手に何が出来る。そう思っていた時期が僕にもありました。
「私の弓を喰らえ!!」
キョウカの言葉と共に放たれる弓矢。
息つく暇もなく連射された弓矢は、風を切りながら俺の周りにいたポイズンウルフ達の頭に命中した。
バタバタと脳天を撃ち抜かれ倒れていくポイズンウルフ達。1分もしない内に俺の周りに居たポイズンウルフは、全て地に伏せていた。
「出来た……出来ましたよフォグさん!」
「…………」
射撃の達人スキルを持っているだけあって、一本の矢も無駄にする事なく全て命中させたキョウカ。
あまりの出来事に、俺は感想さえ漏らす事が出来ずにいた。
「「ガルルッ!!」」
喜んでいる暇もなく左右後方のポイズンウルフ達がキョウカへ駆ける。
仲間を殺られたのが火を着けたのか、ポイズンウルフ達の雄叫びは一際大きかった。
「キョウカ此方に来い!!」
「は── ええっ!?」
俺の叫びは間に合わず、残ったポイズンウルフ達はキョウカを囲んでしまう。
「キョウカー!!」
「キャッー!!」
「「ガルルッ! ガルッッ!!」」
ポイズンウルフ達はキョウカへ一斉に飛び掛かる。
俺はただ、その場に立ち尽くす事しか出来なかった……。
「"円光斬"!!」
飛び掛かったポイズンウルフ達で見えなくなってしまったキョウカの叫びが聞こえる。
すると──
「「キャインッ!!」」
光の円盤? がポイズンウルフ達をぶった斬っていく。
次々と切り離される胴体。上がる血しぶき。
最後の一体を無慈悲に真っ二つにした光の円盤は、役目を終えたようにブウンッと、消えた。
「お、終わった~。ドラゴンタマタマ見てて良かった……」
謎の言葉を吐き、その場にへたりこむキョウカ。
おそらく円盤を操ったスキルで、精神力を使い果たしてしまったのだろう。
「大丈夫かキョウカ!?」
キョウカの元に駆け寄り、怪我は無いか確認する言葉をかけると、キョウカは力なく笑って答えた。
「だ、大丈夫ですフォグさん。私、やりました……」
俺はその力無い笑顔が──
「殺り終えた死神みたいでめっちゃ怖ええぇ」
「あ?」
「──いやー、凄いよキョウカ! 化け物スキラーだとは思ったけど、まさか100体以上のポイズンウルフを一人で倒しちまうとはね。おめでとう! これでルーキー卒業だよ。それに、危険度Dランク以上のモンスターを累計100体以上倒したからDランクに昇格だよ!」
「ありがとうございます! やりましたよフォグさん!」
赤く光るDランクのカードをおっさんから受け取るキョウカ。
昇格して良かったですね……。
「しかしフォグ。お前1日で……」
「分かってる! みなまで言うなおっさん……」
そうだよ! 俺は1日でキョウカにランクを抜かれました!
何不思議そうな顔して見てんだよ!
「犯すぞこら? 揉むぞ? 揉んじゃうぞ!!」
「ど、どうしたんですかフォグさん!?」
「察してやれキョウカ。そいつは10年もFランクで地面を這ってたんだ。それが昨日やっと底辺から抜け出せかと思ったら、次の日には教育する筈のルーキーに追い抜かれた……色々悲しい奴なんだよ」
「……じゃ、じゃあ! シェリーさんの酒場に行きましょうフォグさん! 綺麗な人を見ながらお酒でも飲みましょうよ!」
「気をつけろキョウカ。今日のソイツは野獣だぜ」
「ガルルッ! ガウッ!」
夕焼けが石畳を照す中、キョウカは野獣と化した俺の背中を押してシェリーさんの酒場へと向かう。
今日は自棄だ! 死ぬまで飲んだくれてやる!
一方その頃──
「来ないわね……今日入所してくる筈なんだけど……」
ルーキー専用下宿所では、管理人のおばちゃんが絶対に来ないキョウカを出迎える為、乾いた風の中待っていた。
キョウカは今日、ポイズンウルフを倒してルーキーを卒業してしまったので下宿所に入る権利が失われた。
だから絶対に来ない。
俺を追い出した罰だ!
精々、来ない相手を待って立ってろババア!!
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