21話 「く……殺せ」メーロンの圧倒的戦闘力!
【前回までのあらすじ】
山に巣食う鷲馬、ヒポグリフ。主人公イセキンは魔物討伐クエストを引き受けた。と仲間に入りたいと声を掛けてきたのは、配信師ネコ子だった。聖騎士ツァラは二つ返事でOKをだす。理由はネコ子が木属性だからだった。属性にはなにか秘密があるのだろうか?
「ああ、魔法の習得には属性が絡む時があるんだ。木属性は回復魔法と攻撃魔法をバランスよく習得することが可能な属性だ。例えば私の職業聖騎士の場合、木もしくは水属性であれば回復魔法を使う事ができる。だが残念ながら私は火属性なので習得出来ていない。ま、代わりにステータスや状態を強化する魔法を唱える事ができるがな」
うーむ、なるほど。ツァラの言いたいことは伝わった。
俺とツァラだけのパーティでは 《ライブ》によるステータスアップは愚か、回復も出来ないと言いたいのだ。しかしいまいち信用が……
「それに、冒険者はそもそも素性がよくわからないものだ。あまり詮索しないのがこの世界の掟だな」
「ツァラちゃん!ありがとニャ!では今後とも末永くよろしくね!早速イセキン君とツァラちゃんのチャンネルを教えてくれるかニャン? 《ライブ》するときにチャンネルを合わせるよ」
んーネコ子。ノリが軽い。
「ああ、それは有難い。イセキンTVって名前です」
「私は、ツァラの動画って名前だ」
「オッケー」
そういうと、ネコ子はボード上で 《ライブ》するチャンネル設定を済ませる。
「あれ、ツァラもチャンネル持ってたのか、すごいシンプルな名前だな」
「ああ、配信魔法は使えなくてもチャンネルは開設しないとな。今日ギルドでやったように動画の売買には必須だし。それに……」
と、ツァラはネコ子に目を送る。そしてネコ子は何やらブツブツと唱え始めた。
「力なきものに、我同様の施しを分け与えん。偉大ニャる力の慈悲を。 《サイマル》」
配信魔法の詠唱が終わる。
「よしできた!これで2人のチャンネルにも僕の 《ライブ》が流れる様にニャったよ!そしてツァラちゃんの言う通り、冒険者は基本的に自分のチャンネルを持っているよね。放送されるチャンネルが多いほどたくさんの人に見てもらえるからね。それに配信魔法の力は、呪文 《サイマル》によって任意のチャンネルへ共有されるんニャ。チャンネルがなければステータス向上の共有も出来ニャいんだよ」
「でもネコ子さん。どうして僕らのパーティに?視聴者数15万であれば、ネコ子さんの力だけでクエストがこなせそうなものだけど」
「あー、それはね。多分本当に倒すべき相手は、ヒポグリフじゃない。って見積もっているからニャんだ。もし本当にヒポグリフが原因であれば、魔法集団でパーティを固めればホルドマン自警団でも倒せると思うニャ」
「……では、やはりエクスカリバーが魔物を強くしているというか?」
ツァラが横から割り込む。
「その可能性は十分あるニャンね〜。なんせエクスカリバーは持つものの力を5000兆倍にする力が宿ると言われているからね。ヒポグリフが聖剣を装備することは無いにしても、近くにあるだけでその力の恩寵には授かれるかもしれニャいよね。
でももしかしたら、そうじゃニャいかもしれない。はたまたひょっとしたら黒幕がいて裏からヒポグリフを操っているのかも?
どっちにしろ、ボクだけじゃこのクエストは達成できないと思ったんニャ。そこに消滅属性をもつ君が現れた」
とその時。
「聞いたぞイセキン。リュスタ山の山頂にエクスカリバーが有るそうだな」
「うわ~!びっくりした!……ってお前は!」
急に耳元で話しかけられて、びっくりしないやつが居るもんか。
そこにいたのはパレシア。
「はははは。者共!頭が高いぞ。魔王パレシア様のご降臨であるぞ!」
じじいもいつも通り横にいる。相変わらず 《ライブ》してやがる。その逆側に隻腕の男も一緒だ。
「良いかイセキン。余も山頂へ登る。そしてエクスカリバーを手に入れようぞ。その時こそ、このアナムネすべてが余のものになるに等しい時だ。人間界もそれで終わる」
「貴様!」
ツァラが斬りかかる。
「ぬん!」
隻腕の男が刀を抜く。刃は正確にツァラの喉を狙う。ツァラはたまらず踏みとどまる。
「女、ここでやるか?我が刃、貴様の鎧ごと斬り倒してみせても良いのだぞ?」
「うおおお!突然のできごとぉ!それを魔界の剣王メーロンが止める!圧倒的実力の差が女を襲う!さあメーロン、殺ってしまえ!」
「ニャーっと!ツァラちゃんが斬りかかったのはまさかの魔王!その猛攻を止めたのは隻腕の男メーロンだニャア!ツァラちゃんもここはたまらず動きを止める!いや、むしろよく我慢したニャ!」
じじいの実況に合わせて、ネコ子が実況を始める!だが相手は200万ビューの実力だ。とてもじゃないが勝負にすらなっていない。
「く……殺せ」
「ツァラ!やめるんだ!今は、俺たちへの殺意があるわけではなさそうだ」
ツァラは剣をおろし、彼女の意に反しつつも鞘に収める。
「女。戦士であれば勝算を考えて行動しろ。無計画に行動してそれでどうにかなることなどない。成し遂げるべき目標をたて、逆算し、今何をすべきか優先順位を持って判断するのが肝要だ」
隻腕の男、勝ってなおも圧倒的正論で攻め立てる。台詞の1つ1つにツァラはダメージを累積して受けているようだった。
「メーロン、余興はそこまでだ。では、イセキン。山頂にて待っているぞ。余は貴様がエクスカリバーを抜く姿を見たくなった。だがあまり待つ気はないぞ?」
「ああ、山頂で待ってろ、必ずそこに行ってやるよ!」
あ、だめだパレシアが可愛い過ぎてちょっとにやけてしまった。
【次回予告】
聖騎士ツァラは新しい武器を持ってきた。聞くとちょっと訳ありの武器だという。しかしこの武器は武器商ホルドマンが提供してくれたという。どんな者であれ、新しいモノはワクワクするものだ!
次回、第22話:ディスり厳禁!ついにイセキンTVにスポンサーがつく!




